電子辞書は授業に不可欠、沖縄のアミークス国際学園

 沖縄本島のほぼ中央、うるま市にあり、幼稚園児から中学1年生までの520名が学ぶ「アミークス国際学園」は、国語や社会、英語などの授業に電子辞書をフル活用する珍しい取組みを実践している。

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授業では電子辞書をフル活用
授業では電子辞書をフル活用 全 14 枚 拡大写真
 沖縄本島のほぼ中央、うるま市にある「アミークス国際学園」は、キャンプ場の跡地を利用した自然に恵まれた丘陵地帯にあるインターナショナルスクールだ。同学園に通うのは幼稚園児から中学1年生までの520名ほど。幼稚園から中学校までの一貫校だが、創立4年目で、最上級生は中学1年生(7年生)となっている。

 小中学校にはイマージョンクラスとインターナショナルクラスの2種類があり、イマージョンクラスは国語と社会を日本語で行うが、それ以外の授業は原則英語で行われる。インターナショナルスクールだが、児童・生徒の80%ほどは沖縄在住の日本人の子どもたちだ。

◆授業で電子辞書をフル活用

 開放的な図書館やオープンスペース、リゾートホテルのような中庭などがあり、クラブ活動は陶芸、乗馬、ゴルフからジャズのビッグバンドやロボティクスまで多岐にわたり、児童・生徒たちは放課後の時間を楽しんでいる。非常にユニークな学校だが、特徴はそれだけではない。国語や社会、英語などの授業に電子辞書をフル活用している珍しい取組みを実践している。

 近年、学校教育でのタブレット活用が話題で、グループに1台や1人1台導入による取組みが始まっている。そんな中、スタンドアローンで動作する電子辞書を大量導入し、国語だけでなくさまざまな授業に活用しているという。台風一過の7月11日、アミークス国際学園を取材した。そのようすを2回にわたってレポートする。

 なお、同学園が導入している電子辞書はカシオ エクスワードの小学生モデル XD-N2800だ。収録語や解説文が小学生向けにチューンされた辞書コンテンツが特徴の製品だが、クラスや授業内容によっては、私物の持込みを許可し、さらに好みの辞書・コンテンツを追加して使っている。実際、高学年の英語の授業では、小学生モデルの辞書では不足することもあるという。

◆考える力・調べる力をつける電子辞書

 今回は、5年生の社会と4年生の英語の時間を見学することができた。担任の上江洲ジョアナかおる先生は、普段から新聞記事を授業に活用しているといい、記事に出てくる単語や言葉の意味を電子辞書で調べさせている。単に調べるだけでなく、内蔵されている複数の辞書や百科事典を駆使して「自分でわかる言葉で説明してください」と、単に調べて読み上げるだけでなく、その先を考えさせている。

 この日は、高度な内容に挑戦するため、電子辞書に入っていない言語を調べるという授業が組まれた。杉田玄白が、解体新書のもととなった、オランダ語のターヘルアナトミアの翻訳をどのように行ったかを動画教材で説明したあと、子どもたちはオランダ語で書かれた人体の内臓について、日本語に翻訳するという作業を行う。

 ヒントは、英語に綴りが似ている語や百科事典の図解となり、子どもたちは電子辞書と自分の知識を駆使しながら「心臓」「胃」「肺」「肋骨」などを調べていた。普段とは違う電子辞書の使い方となるため、難儀する子どもが多かったが、上江洲先生はグループで話し合うようにさせ、項目を分担させるなど工夫を凝らしていた。

 子どもたちの感想も「難しかった」「知らない言葉がたくさんあり世界は広いと思った」「昔の人は辞書がないのにすごいと思った」「図解を見つけられてよかった」などさまざまだが、普段より難しい課題が大きな刺激になっていたようだ。

◆電子辞書は授業に不可欠

 4年生の英語の授業は、キャリー・ナパ先生とボルトンあゆみ先生のクラスだった。アミークス国際学園では、1クラス30名が定員だが教師は2名体制が基本となっている。この日は英語で物語を書くという課題が出された。テーマは「Friendship」に設定されたが、相手はペットなど動物でもよいとしていた。物語はフィクションでもノンフィクションでもよく、6つの場面で完成させよというものだ。子どもたちは配布されたプリントにテキストとイラストを書き込んで、それぞれのストーリーを考える。

 サッカー選手をめざす友達の話、巣から落ちたヒナの話、病気の友達をお見舞いする話など、子どもならではの物語がつくられていく。文章を作る際の単語を調べるために電子辞書は不可欠だ。自分にとって使いやすいものを選んでいるため、児童によって使う辞書はさまざまだ。電子辞書には、英和辞典、和英辞典、そして小学生向けや中学生まで使えるものなど複数の辞書が収録されている。中にはカタカナで引ける英語辞書を使っている児童もいた。

 授業は当然オールイングリッシュだが、日本人の多いアミークスでは、子ども同士の会話は英語と日本語が混ざっている。この学校で始めて英語を学ぶという児童が多いが、英語での授業が成立しているのには電子辞書の存在が大きい。先生も細かい単語をいちいち説明する必要はなく、わからない単語は自分で調べる。

●電子辞書の効果と狙い

 このように、授業内容は比較的オーソドックスなものといえるが、うまく電子辞書の機能を取り入れ、内容に深みを与え、授業効率を上げている。子どもたちも、電子辞書をノートや教科書と同じレベルで普通に使いこなしている。アミークスでは、iPadやパソコンなども導入しているが、電子辞書ほど授業での活用はしていないそうだ。

 アミークスでは、なぜ電子辞書なのか。先生たちはどのように考えているのだろうか。また児童はどのように捉えているのだろうか。次回は先生や子どもたちへのインタビュー内容からその理由、導入の効果について迫りたい。

《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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