【中学受験】グノーブルに聞く「過去問」活用術<理科・社会>教科により異なる対策

 受験生にとっては天王山と呼ばれる夏。半年後には入試本番を迎える中学受験生の保護者にとって、そろそろ気になり始めるのは「過去問」のこと。過去問題対策について、「中学受験グノーブル」に話を聞いた。

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中学受験グノーブル 理科 永井裕康先生
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 受験生にとっては天王山と呼ばれる夏。半年後には入試本番を迎える中学受験生の保護者にとって、そろそろ気になり始めるのは「過去問」のこと。過去問題対策について、「中学受験グノーブル」に話を聞いた。

◆理科 永井裕康先生

--理科担当のお立場から、開始時期についてアドバイスをお願いします。

永井先生:ほかの教科同様、一般的には9月から始めるのがよいでしょう。ただし、9月がベストだというわけではないケースもあります。

 特に中学入試における理科の特徴のひとつに、「単元数の多さ」があげられます。物理・化学・生物・地学の4分野からバランスよく出題する学校が多いですが、たとえば地学分野ひとつをとってみても、「太陽」「月」「星」「惑星」「流水のはたらき」「地層」「火山と岩石」「地震」「気象」などがあります。

 塾のカリキュラムによっては夏が終わった時点で未習のものもあるでしょうから、その単元の根本を学習してから取り組んだほうが効果的な場合もあります。もちろん、入試問題は知識を前提とした出題ばかりではなく、「読み取り題」「現場思考題」もたくさんあり、演習する時期を選ばない良問も数多くあります。

 したがって、一律に9月、と思い込む必要はなく、個々の状況や志望校によって講師と相談しながら始めることをお勧めします。事実、11月以降に取り組み始めた生徒でも、きちんとした学力があれば合格しています。過去問は「伝家の宝刀」ではなく、志望校の出題傾向を知ることや、それに慣れることが目的なので、先を見据えて9月や10月を過去問以外の学習に費やしてもよいわけです。

--過去問は何年分解けばよいですか。

永井先生:一般論としては、志望度が高い学校は5~10年分をお勧めしています。対していわゆる“おさえ”の学校でお子さまの学力的に合格の可能性がそれなりに高ければ、1~3年分で十分でしょう。

 ただし、試験傾向がやや特徴的であり、慣れるまでにそれなりの量が必要な場合や、お子さんが解いてみて戸惑いを感じた場合は多めに、一方で、普段の学習の延長線上にあるようなスタンダードな問題の場合は少なめに、適宜調整してください。

--計画を立てる際の注意点はありますか。

永井先生:年内にある程度の過去問演習が積めるような計画を立てましょう。お通いの塾のカリキュラム学習も当然のことながら大切ですので、「1週間に1年分」「授業の休講などがあり少し余裕のある週には2年分」などでスタートしてみるのが適切かと思います。

 ただし、タイトな計画を立てて実行できなかったときの精神衛生面を考えると、予定には変更の余地を持たせたいですね。つまり、年末までの大筋を組み立てつつ、まずは2か月程度、仮に9月に始めるのであれば9月分と10月分の計画を立ててみてやり始めてみるとよいでしょう。

 そして秋の中盤に、その時点での進捗や取り組んでみた印象を踏まえて講師に相談しながら調整し、後半戦にあたる11月と12月の計画を立てるのです。この時期であれば、併願パターンも確定しつつあると思われますので、計画を2段階に分けると進めやすいと思います。

--どのように復習すればよいですか。

永井先生:何度も解き直すことは、私は推奨していません。そもそも過去問とは「近い年度ですでに出題された問題」であり、その学校で同じテーマの問題が出題される可能性は低い、とも言えます。同じ学校の同じ問題を何度も繰り返して解くことに時間を費やすのであれば、ほかの中学校で出題された多くの問題に触れてさまざまな経験値を積み上げるほうが力がつき、合格への近道だと考えます。

 理科では、毎年、各中学校が工夫を凝らしてさまざまな出題をしていますが、「今年の○○中学校の問題は、△△年度の□□中学校の問題と同じテーマだ」とか「▲▲年度の■■中学校の問題を経験していた受験生なら得点しやすかったかも」などと思うことがありますね。

 また、時事として話題に上がったテーマなど、次年度はこんなテーマが出題されるのでは、といった場合、そのテーマやそれに近い問題を、近年の色々な中学校から探したほうが効果的かつ良問を見つけられる可能性が高いです。

 もちろん、中学校によって出題されやすい単元や内容は存在します。この場合は上記の限りではありませんので、講師と相談し、個々の状況に応じた的確なアドバイスを受けることも時には必要でしょう。

--本番まであと半年、親は塾とどう関わっていけばよいでしょうか。

永井先生:塾を最大限に利用してください。利用したいと思える講師が見つかっているのであれば、指名してアドバイスを求めればよいと思います。どの学校をどの程度取り組むかなど、計画上の取捨選択だけでなく、取り組んだあとの問題や解答用紙を提出し、解き直しや知識の再確認など、適切な指示を受けることで、学習の精度は格段に向上します。

 中学入試の学習では、視野を広げたり、さまざまな経験により学力の太い幹を形成することも大切です。過去問は、志望校に合格するために必要な経験値を高めるツールのひとつです。過去問の出来に盲信する必要性はありません。戸惑うことがあれば、保護者は塾の講師に遠慮せず相談し、お子さんが合格するための学習を日々積み上げられるよう、支えてあげてください。
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《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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