お菓子×プログラミング、前原小・グリコ「GLICODE」の授業を見てきた

 江崎グリコは10月17日、小金井市立前原小学校において、プログラミング教育アプリ「GLICODE(グリコード)」放課後体験会を開催した。小学校低学年の子どもたちが、実際に「GLICODE」を使ってみて、そのようすを保護者や取材陣に公開するというものだ。

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みんな真剣な表情
みんな真剣な表情 全 27 枚 拡大写真
 江崎グリコは10月17日、小金井市立前原小学校において、プログラミング教育アプリ「GLICODE(グリコード)」放課後体験会を開催した。小学校低学年の子どもたちが、実際に「GLICODE」を使ってみて、そのようすを保護者や取材陣に公開するというものだ。

 「GLICODE」は、「ポッキー」「ビスコ」などのグリコ製お菓子を並べて撮影することで、プログラミングを体験できる教育アプリケーションだ。たとえば、普通に上向きに置いたポッキーを撮影すると「上に動く」というコマンドを、画面内のキャラクター「ハグハグ」に指示できる。そのほかにも「アーモンドピーク」なら「大きくなる/小さくなる」、「ビスコ」なら「のぼる/飛び越える」といった動作が割り当てられており、これらを組み合わせることで、ゴールに立つ女の子と出会えるようハグハグを誘導していくという仕組みだ。ポッキーの配置によってループさせることもできる。

 アプリは8月に公開され、すでに1万件以上がダウンロードされている。また、総務省が若年層に対するプログラミング教育を推進する「プログラミング教育実施モデル 実証事業」に選定されている。もともとは江崎グリコが前原小に働きかけ、採用が決定。両者が総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」の公募に提案し、正式に採用されたという。今後は実際の授業での本格活用が予定されており、今回の放課後体験会は、その活動の第一歩ともなるものだ。

 授業は45分の枠で、正規の授業に追加した“第6時限”という扱い。低学年(1~2年生)希望者、約30人の児童が参加し、教室は満席だ。すべての席に「GLICODE」を搭載したAndroidタブレットと、「ポッキー」「ビスコ」などのお菓子が用意されている。また出入口には、食品を扱う授業ということで、手のひら消毒が用意されていた。

 サポートするスタッフのほか、保護者も自由に補助できるという形でスタートし、まずは注意とアプリの起動から。タブレットに触るのがほとんど初めて、という児童も複数いたが、大人のサポートもあり、ほどなく全員が準備完了。続いてお菓子を開封し、授業の準備が進む。ここだけみたら、普通に“おやつタイム”だ。

 最初に説明したとおり、「GLICODE」は「ハグハグ」の操作をするプログラムを作成することがプログラミング教育としての中核をなす機能だが、ゲームのように「与えられた課題(お菓子の配置)」をクリアしてステージを進めていくモードも用意されている。今回はあくまで体験であり、経験値も不揃いであることから、放課後体験会では自分でプログラミングをする作業ではなく、後者のモードに沿って画面どおりにお菓子を並べ、それを撮影する学習をメインに行った。

 実際に「タブレットに触るのが初めて」「タブレットは触ったことがあるけど、写真撮影は初めて」という子どももいた。小学校低学年だと、まだまだスマートデバイス体験自体が少なく、致し方ないことだろう。ただ、こうなると「プログラミング教育」という部分では初歩の初歩すぎて、ほぼ「タブレット操作の体験」になってしまう。この点は、今後の正式な授業カリキュラムに期待したい。また、今回は生徒1人用の学習机でお菓子を並べたため、サイズが足りなくて苦労する一コマも。撮影も画面になかなか入りきらないため、立ちながら撮影している生徒が多かった。大きな机でグループ学習、といった形の方がよいのかもしれない。

 一方で、撮影が上手くいけば、画面のキャラクターが思い通りに動き、ステージクリアとなる。画面の中のキャラクターを動かした喜びで、思わずニッコリする子どもたち。この「画面の中を操作できる」というのは、プログラミングの楽しさの原点ともいえる。これを手軽に体験できる「GLICODE」は、実際のオブジェクトであるおやつを動かすことで、非常にわかりやすく親しみやすいだろう。

 そのため、お菓子の並べ方が正しいかチェックする子どもは、みんな真剣な表情。後半では、「ポッキー」だけでなく、「ビスコ」「アーモンドピーク」も組み合わせたステージへと進んでいく。ここまで来ると、かなり難しい並べ方を要求されるが、慣れてきた子どもは、どんどん課題をクリアしていく。さらに“あえて違うおやつを置いてみる”といった行動に出る子も。まさにプログラミングのトライアル&エラーの学習パターンそのままといえる。

 授業終了後は、お菓子は袋にまとめて持ち帰る。終了後にはおやつタイムが待っているのも、ちょっとした楽しみの付加価値だ。子どもに聞くと、やはり「楽しかった」「参加して良かった」という感想が圧倒的だった。

 前原小の松田孝校長は、「GLICODE」を使ったプログラミング教育の利点について「お菓子を使えば、その操作活動によってバーチャルな世界におけるプログラミング(命令)を具体的な量やベクトルとして実感させることができる」とコメント。「おやつ」というアイテムは、子どもにやる気を起こさせるのにちょうどいいきっかけにもなりそうだ。勘の良い子であれば、やがてそれぞれのおやつが、特定の機能を持っていることがわかり、それを組み合わせることで、ハグハグを自由に動かせるようになるだろう。前原小の今後の取組みに期待したい。

《冨岡晶》

冨岡晶

フリーの編集者/ライター/リサーチャー。芸能からセキュリティまで幅広く担当。

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