【高校受験2017】続く進学指導重点校人気、合格への道は学習量の維持…SAPIX中学部

 近年、都立人気が高まっている。特に、進学指導重点校(以下、重点校)である日比谷、西、戸山、青山、国立、八王子東、立川の7校は、大学進学実績の向上もあって、“復権”といった言葉も散見されるようになった。

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SAPIX中学部 教育情報センター部長の高橋淳氏(左)と課長の伊藤俊平氏(右)に話を聞いた
SAPIX中学部 教育情報センター部長の高橋淳氏(左)と課長の伊藤俊平氏(右)に話を聞いた 全 3 枚 拡大写真
 近年、都立人気が高まっている。特に、進学指導重点校(以下、重点校)である日比谷、西、戸山、青山、国立、八王子東、立川の7校は、大学進学実績の向上もあって、“復権”といった言葉も散見されるようになった。

 受験シーズンが残り2か月と近づくこの時期、重点校の入試傾向と考えるべき対策はどのようなものなのか。SAPIX(サピックス)中学部教育情報センター課長の伊藤俊平氏に、平成29(2017)年度における重点校の入試予想および重点校との併願が多い難関国立・私立校の入試予想を、同教育情報センター部長の高橋淳氏からは、ラストスパートにおける合格へのポイントや入試当日のアドバイスを聞いた。

◆難度の高い問題の対策は、過去の自校作成問題を参考

--東京都の「進学指導重点校」の公立高校入試の特徴を教えてください。

伊藤氏:東京都には数多くの難関校が存在しているため、優秀な生徒の奪い合いになっています。そのため重点校が採用している「グループ作成問題」は非常に難度の高いものとなっているのが特徴です。もちろん公立高校ですから、中学生の学習範囲から出題されますが、重点校はその中で難度をどのように高めていくかがポイントとなります。

 具体的には、英語や国語における読解問題・長文問題で文章量が多くなることや、英語の自由英作文、国語の200字を超える作文など、「記述」に重点が置かれるといった出題傾向があります。数学は、複雑な問題設定となり、解法を記述させることも一つの特徴といえるでしょう。理科・社会については、他の都立と同じ「共通問題」を使いますが、近年の都立人気もあって若干難度が上がってきています。

 重点校対策の演習量を確保するには、2014年の「グループ作成問題」導入以前に実施されていた、各校の自校作成問題の過去問を入手してやってみることも有効です。

※ なお平成30(2018)年度から、重点校の「グループ作成問題」は、従来の自校作成の形に戻る予定となっている。

◆実力を把握した適切な受験校選びが重要

--前年は内申点の比重やルールなどの変更がありましたが、影響はありましたか。また2017年入試への影響があれば教えてください。

伊藤氏:前年の変更点は、(1)共通問題でマークシートが導入された、(2)学力検査と調査書(内申点)の比率が全校で「学力検査:調査書=7:3」に統一された、(3)調査書の実技4教科(保健体育・音楽・美術・技術家庭)の評定が2.0倍換算に引き上げされた(従来は1.3倍)、(4)調査書を見ないで選考する「特別選考枠」が廃止された、この4点でした。

 このうち、1番目と2番目はあまり影響がないと考えています。重点校では主に理科・社会に共通問題が使われますが、マークシート形式で受験生が戸惑うことは少なかったように思います。また、学力検査と調査書の比率は、重点校は以前から7:3と学力重視でした。

 3番目の調査書の実技評定の変更と、4番目の特別選考枠の廃止については、受験者数の変動に影響があったと考えています。

 2015年と2016年の重点校の男子受験者数を比較してみると、もっとも減少したのは日比谷高校で▲82名でした。他の重点校も軒並み減っています。同じように女子受験者数を見てみると、減った人数は男子ほどではないですが、やはり多くの学校で減少しています。これは、内申点はあまりよくないものの、当日の学力検査でチャレンジしようとする層が、内申点の比重が高まったために受験を回避したものと考えられます。男女に減少幅の差があるのは、女子は従来から安定した結果を重視する傾向にあり、男子は学力検査当日にチャレンジする傾向が高いことが影響しています。そのため今回、内申点が重視されるようになり、男子の回避傾向がより強まったといえるでしょう。

 ただし、受験者数が減少し、倍率も下がったから合格しやすくなったかといえば、そうではないと考えています。純粋にレベルの高い人たちが受験したと考えてもよいでしょう。

 また、こうして受験者が減少したのは、入試制度変更の初年度だったために、過剰反応が出たという側面もあるのではないかと考えています。自分の実力をしっかりと把握し、あきらめずに志望校にチャレンジすることも大切だと思います。自分で考えることが難しければ、先生に相談しながら適切な受験校選びをしてください。

◆進学指導重点校の人気は継続

--2017年の入試予想を教えてください。

伊藤氏:重点校の人気は、これからも続くと思います。日比谷高校の場合、今年(2016年度)の東大合格者数は53名。都立高校の改革がはじまって15年余り、確実に成果が現れてきたといえるでしょう。今年は入試制度変更の初年度ということもあり受験者数は減りましたが、来年は戻してくると考えています。

 2017年の入試では変更点が一つあります。戸山高校が、来年度(2017年度)、学級数を1つ増やします。こうした学級数の増減は、人口分布や交通の便など立地からの調整が主な理由で、戸山高校は2014年にも学級数を1つ増やしています。このときの例を見ると、男子は募集人員も受験者数も増え、倍率はほぼ変わりませんでした。女子は、入りやすいと考えたせいか、倍率は若干上昇する結果となりました。学級数が増えたからといって、合格しやすくなるわけではありません。むしろ戸山高校の場合、医学部進学に注力していますので、さらに受験者数は増えるのではないかとも予想されます。

◆難関校と附属人気校が重なる受験日程

--進学指導重点校受験者は、難関の国立・私立を併願するケースが多いと思いますが、これら難関校の入試予想もお願いします。

伊藤氏:都立の人気は確かに高くはなっていますが、早稲田や慶應、あるいはMARCHの附属校人気も高くなってきています。この背景には、大学入試改革の影響が小さい附属校への注目が高まっているといえるでしょう。

 入試の日程もありますが、受験校を選ぶ際に、高大一貫の私立附属校を選ぶのか、進学校を選ぶのか、棲み分けがより進むのではないかとも予想しています。

 男子の難関校の受験日程を見ると、慶應義塾の受験日が2月10日に変更となりました。物理的に開成高校とは併願が不可能になります。慶應としては、合格者が開成に流れなくなり落ち着いた入試になるのではないかとも予想しています。ただし、慶應義塾は人気も実力も高いために、入りやすくなることはないと考えています。

 また、重点校を中心とした都立の人気や附属校の人気はあるものの、やはり開成などの難関校や国立(こくりつ)の高校は、入試の難易度や人気の面でも、依然として高いところにあるといえます。

 女子の難関校では、高校受験を行わない中高一貫校が多く、受験できる高校が少ないことが特徴です。例年、慶應女子、豊島岡女子、青山学院は別日程ですが、今年はミッションスクールの青山学院が日曜日に入試をしないため、豊島岡女子の受験日と重なります。青山学院は、女子に人気があり、スーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定されるなど人気が上昇傾向にあるので、この2月11日は、豊島岡女子と青山学院で人気が二分される格好です。

 女子の場合は、高校入試を行う難関校の数が少ないため、都立の受験も非常に重要な意味をもっています。前述したとおり、堅実な受験校を選ぶ傾向があるのも、こうした背景が影響しているといえるでしょう。

◆学習量を維持し、自分の受験に集中

--ラストスパートのアドバイスをお願いします。

高橋氏:もっとも大事なことは、やはり「学習量」を減らさないということだと思います。夏休みが終わって学校が始まり、行事等で一番忙しい時期に来ています。その時期と受験勉強が重なるわけですから、今まで以上に自分で工夫して時間を作ることで、学習量を確保していくことが大切です。

 次に、「自分の受験に集中する」ということが重要となります。特に都立は、日程的に最後の受験になります。受験日が早い生徒ですと、徐々に合格して受験を終えていきます。本当に早い場合は、年内で終わることもあります。その状況を見ながら、都立の受験日まで黙々と勉強をしていくことになるのです。そのため、一人ひとり事情が異なることを理解しながら、自分の受験にいかに集中できるかが、ラストスパートの時期としてはとても大事なことだと思います。

 具体的な話としては、「模試」に、今まで以上に真剣に向き合ってしっかりと取り組んでいるか。模試では、緊張する経験も味わうことができますから、この時期の模試に真剣に取り組んでいる生徒は、本番でも強いですね。なんとなく模試を受け、振り返りをしない場合は、活用できていないともいえます。今の時期だからこそ、本番と同じ気持ちで模試に臨んで欲しいと思います。

 また、過去問をどう活用するかが重要です。解いた結果だけを見て一喜一憂するのではなく、自分の弱点を把握することや、課題を発見するために利用するものと考えて、過去問を解くようにしてください。

--過去問を解いた結果、点数が悪い場合は、どのように捉えたらよいでしょう。

 まずは、その過去問の実施された年の平均点を見ることもひとつです。その年だけ平均点が非常に低い場合もあります。ただし、その逆も、もちろんあります。意外と点数が取れた場合でも、その年の平均点が高い場合もあります。やはり、点数だけを見るのではなく、自分の弱点や課題を発見して、どこがなぜ取れないのか、どうしたら取れるようになるのかを分析し、克服するためのツールと考えた方がよいと思います。

◆当日に力を発揮できるようにリズムを崩さない

--入試当日のアドバイスをお願いします。

高橋氏:自分の力以上のことはできないと思います。そのためには、できる限り100%に近づけるように考えることが大切です。

 具体的には、受験日の時間を想定して、早寝早起きの習慣付けをしておくとよいでしょう。また、試験会場には30分前に到着する、トイレには行っておくなど、よく言われていることはやっておくのが望ましいと思います。

◆高校受験は成長を見守る時期でもある

--受験生の保護者がやるべきこと、できることについて教えてください。

高橋氏:本人にまかせて、「見守るしかない」というのが大前提ですね。SAPIXでは毎年、受験後にアンケートを取っていますが、「(親から)何も言われなかったのがよかった」という生徒が多いです。

 首都圏の入試は日程や受験校選びも複雑で、受ける学校の数も多くなってきます。そのため、書類の整理や出願の手続きや、身の回りの管理のサポートなどを、保護者の方には心がけて欲しいと思います。

◆「思考力・分析力・表現力」を高めるための“こだわり”

--SAPIX中学部の特徴をお聞かせください。

高橋氏:SAPIXは「合格させること」にこだわり、それを“使命”としてきた塾だといえるでしょう。また、昨今の大学入試改革で叫ばれている「思考力・分析力・表現力」は、創業時から重視してきました。

 こだわりは、思考力・分析力を高めるオリジナルテキストや、表現力を高める双方向の授業にも現れていると思います。

 既成のものとは違って、実際にカリキュラムを受け持って教えている講師がオリジナルのテキストを作っています。オリジナルテキスト制作時の会議では、細部にこだわって掲載内容を徹底的に吟味しています。熱い議論になることも多々ありますね。

--ありがとうございました。

SAPIX中学部のイベント
 学芸大附高入試プレ、筑駒高入試プレ:11月23日(水・祝)
 都立進学指導重点校入試プレ:12月4日(日)
 開成高入試プレ/慶應女子高入試プレ/慶應志木高入試プレ/早大学院入試プレ:12月18日(日)

◆平成29年度 東京都立高等学校入学者選抜スケジュール
<一次および分割前期>
 願書期間:平成29年2月7日・8日
 学力検査:平成29年2月24日
 合格発表:平成29年3月2日
<分割後期>
 願書期間:平成29年3月7日
 学力検査:平成29年3月10日
 合格発表:平成29年3月16日

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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