新入学・進級シーズン到来…おおたとしまさ氏に聞く「親の心構え」

 桜の蕾も膨らみ始め、新入学・進級の季節が近づいてきた。子どもはもちろん、親にとっても環境ががらりと変わる節目のとき。期待と共に不安や心配もあるだろう。そんなお父さん、お母さんたちの「心構え」について、おおたとしまさ氏に聞いた。

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新入学・進級シーズン到来…おおたとしまさ氏に聞く「親の心構え」
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◆“何もやることがない時間=無駄な時間”と考えない

--この時期に新しい習い事を始めるお子さんも多いと思います。最近では特に、英語とプログラミングは早くから習わせた方がいいのではないかと迷われている方も多いようです。習い事選びなどで、アドバイスをいただけますでしょうか。

 英語とプログラミングは、確かにこれからの時代を生きていくために必要なスキルではあると思います。ただ、これは大人になってからでも十分間に合うと思うんです。一方で、幼少期にしかできないことがあるはずです。確かに、習い事の数だけ色々なスキルは身に付くかもしれないけれど、予測し得ない未来を予測して、これもあれも詰め込んで、その重たいリュックをもたせて歩かせることが、本当に我が子の「生きる力」になるのでしょうか。

 習い事は否定しません。ただ、“何もやることがない時間=無駄な時間”と考えてはいけないと思います。何もやることがない、自由な時間をどうやって過ごすかを自分で決められる。それって、人生どうやって生きていくかということの縮図だと思うんですよ。放課後から夕食までの数時間をどう過ごすかという毎日の訓練の先にあると思うんです。自分がどんなことをしているときに幸せを感じるか。そんなことに自分で感づくことで、その人なりの生き方っていうのが身に付いていくのではないでしょうか。大勢で盛り上がってリーダーとして仕切るのが好きなのか、家で静かに本を読んでいることが好きなのか。放課後に習い事をあれこれ入れてしまうと、子どもが自分自身に気づける時間を奪ってしまう。それはその子にとって大きな損失のような気がします。

◆習い事のやめどきを決めておく

--高学年になると塾に通い始め、習い事との両立が難しくなってくるケースもありますね。

 習い事についてのもう一つのアドバイスは、これは「習い事狂騒曲:正解のない時代の『習活』の心得」(ポプラ社)にも書いたのですが、「やめどきを決めておくこと」です。あらかじめ、「こうなったらやめようね」という節目をいくつか作っておくこと。ある節目まで、たとえば目標の級まで合格できたら、続けるかやめるか話し合う。

 いずれかの節目をクリアしてやめたら、たとえば中学受験でちょっとお休みするけど、終わったらまた再開しようか、と思えます。一方、惰性で続けてしまうと、限界までやってみたけど、どうにも首が回らないからという敗北感の中でやめるしかなくなってしまいます。その習い事は嫌な思い出になり、目の前のやるべきことにもネガティブな心境で向き合うことになります。もうちょっと続けたかったな、というくらいでやめるのが理想ですね。

◆中学受験の塾選びには親のポリシーが重要

--2月から中学受験のための塾に通い始める子が多いので、うちはどうしようかと焦る時期かもしれません。塾に入るかどうか、また塾選びに際して大事なことは何でしょうか。

 子どもが小さいうちは、まず親が自分のポリシーをしっかりもつことが大事です。塾に入る以前に、中学受験をなぜやるのか、やらないのかという、親が自分なりの価値観をしっかり確立しておかないと、周囲に翻弄されてしまうだけです。

 御三家にこだわらず、子どものペースで行けるところに進学しようと考えるなら中小規模の塾を選ぶという選択肢もあるわけで、なぜその塾を選んだのか、理由をはっきりさせておくこと。そうすれば、他の家庭がどんな塾を選ぼうとも「うちはうち」と切り分けられます。そこが曖昧で、右往左往したまま進んでしまうと、最後に一番不幸になるのは子どもですから。
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《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

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