【中学受験2024】学校づくりは究極の「探究」…注目の開智所沢、2024年4月開校

 「探究」を核とした学びを展開する開智学園が2024年4月、新たに「開智所沢小学校・中等教育学校」を開校する。開設準備担当の吉村昌輝先生に、開智学園所沢が目指すビジョンやカリキュラムの特徴について聞いた。

教育・受験 小学生
開智所沢中等教育学校校舎全景(イメージパース)
開智所沢中等教育学校校舎全景(イメージパース) 全 5 枚 拡大写真

 「世界の人々や文化を理解・尊敬し、平和で豊かな社会を創るために貢献できる人材の育成」を教育理念に掲げ、「探究」を核とした学びを展開する開智学園が、新たに「開智所沢小学校・中等教育学校」を開校する。

 開智学園グループは、埼玉岩槻キャンパスにおける「開智小学校(総合部)」「開智中学・高等学校(一貫部)」「開智高等学校(高等部)」「開智高等学校 通信制課程」を中心とし、埼玉加須キャンパスには「開智未来中学・高等学校」、茨城守谷キャンパスに「開智望小学校・中等教育学校」、東京日本橋キャンパスに「開智日本橋学園中学・高等学校」、千葉柏キャンパスに「開智国際大学」、東京八王子キャンパスに「開智国際日本語学校」を展開している。

2023年時点での開智学園キャンパス展開。2024年春からは所沢キャンパスが加わる

 来たる2024年4月、JR武蔵野線東所沢駅から徒歩12分の敷地に開校するのが、開智所沢小学校・中等教育学校だ。中等教育学校第一期生の入試を間近に控え、着々と準備を進めている開設準備担当の吉村昌輝先生に、開智学園所沢が目指すビジョンやカリキュラムの特徴について聞いた。

未来志向の新しい学びを実践する場

--新規開校に至った経緯を教えてください。

 開智学園では、名誉学園長、理事長をはじめとする教職員すべてが「常に未来志向の新しい学びを提供したい」という強い思いをもっています。私たちを取り巻く状況は今、地球規模での気候変動や環境問題に直面し、AIやロボットといった新しい技術がどんどん出てくる中にあり、日本の教育というものが大きく変わろうとしています。現状維持にとどまってはいけないという思いのもとに、未来の社会をイメージした新しい学びを取り入れ実践していく場として、中学校としては5校目となる開智学園所沢を新しく開校する運びとなりました。

 今まで開智学園が培ってきた教育を振り返り、それを基にバージョンアップした学びを取り入れていくと同時に、開智学園所沢で得た新しい学びを兄弟校に共有し循環させていく。学園全体が常に進化を遂げていくための手段として、開智学園所沢の創設は大きな意義を担うこととなります。

開智学園所沢開設準備担当の吉村昌輝先生

--所沢という地を選んだ理由について教えてください。

 開校地となる東所沢駅は、千葉から埼玉を通って東京都府中本町をつなぐJR武蔵野線をはじめ、東武東上線や西武新宿・池袋線といった首都圏の主要路線からの乗り継ぎも良いという利便性が、1つの理由として挙げられます。さらに緑も豊かで治安もよく、教育環境としても抜群の立地です。そういったエリアでありながら私立の中高一貫校がなく、自治体としても学びの場を誘致したいという思いがあったといいます。所沢市とともに学校を創る準備を進め、地元の方のバックアップを受けながら10年あまりの年月を経てこの春を迎えることとなりました。

 これまで浦和や大宮エリアを中心とした私学に関心が向きがちだった埼玉の中学受験において、今回所沢に新しい学校ができることをきっかけに、中学受験を考えてみようといった家庭が増えるなど、埼玉の西側の私学の活性化につながってくれたら大変うれしく思います。

開智学園の伝統を基盤に、新しい学びを取り入れる

--開智学園所沢の教育方針について教えてください。

 開智学園所沢では、授業や進路学習から学校行事まで、あらゆる場面で「探究型の学び」を展開していきます。

 探究型の学びとは、生徒が発見した身近な疑問や社会の課題、学問での未解決の問いなどを、それまでに培ったさまざまな「力」を使って、推測・予想し仮説を立て、観察・実験や、文献からの調査によって検証・考察し、その成果を発信するプロセスのこと。自らの興味・関心や好奇心に基づいたテーマについて探究する「個人探究」、共同してテーマ研究に取り組み、ディスカッションを通じて学びを深める「グループ探究」、また実践の場としてのフィールドワークにも力を入れていきます。それらの学びを先生が先導するのではなく、生徒自らが「自分で考え、決め、自分の責任で行動する」のが行動指針となっています。

 そういった探究型の学びや、生徒の主体性の尊重、フィールドワークといった学びの本質部分については、今までの開智学園の延長線上にあると思ってください。校舎もまだ公開されておりませんし、第1期生の入試もこれからではありますが、他のグループ校の説明会に足を運んでいただければ開智学園所沢の教育についてもご理解いただけるのではないかと思います。開智学園の教育にさらなる「未来志向の新たな学び」を取り入れていくのが私ども開智学園所沢の目指す姿です。

校舎イメージ

AIと共生する未来を創る

--開智学園所沢が展開する、“未来志向の新たな学び”について教えてください。どのようなカリキュラムが待っているのでしょうか。

 先ほど探究の学びを徹底していきたいと述べましたが、兄弟校にない新たな取り組みとして、AIとの共生を掲げています。AIやChatGPTといったものを避けるのではなく、自身の可能性を広げるためのツールとして積極的に取り入れていく中で、人間しかできないことは何だろうかという問いの答えを、我々も生徒たちも教育の場で自ら発見していきたいのです。

 具体的には、1人1台のiPad端末を日常的に活用できる環境を整え、Google MeetやZOOMなどを使った兄弟校との双方向授業のほか、生成型AIの活用や3Dプリンターの導入、PythonによるオリジナルAIの開発、レゴエデュケーション SPIKEプライムを使ったプログラミング的思考の育成といったカリキュラムを考えています。

--グローバル教育にも注力されていくと伺っています。

 現在、文科省の学習指導要領に沿う形で、バカロレアの認定を目指し着々と準備を進めています。「バカロレア=国際学級」といったイメージをもたれると思いますが、本校が考えるグローバル教育というのは、英語教育に注力しよう、国際的な視野をもとうといったものに留まりません。

 私どもは「生徒主体の学び」を最重視しており、授業は当然のことフィールドワークや体育祭、文化祭なども生徒主体で取り組んでいます。こういった生徒主体の学びを通して「自分で学び方を考え工夫する」ことこそが、国際バカロレアの探究的な教育と通じているのです。

 英語については、6年間で2,500時間を超える英語学習を行います。週7時間の英語の授業、AI搭載型アプリを活用したeラーニング、ネイティブあるいは日本人でも英語に堪能な教員が付いて行う英語でのホームルームの実施や、英語で他教科の授業を行うといった環境を整えていくと同時に、海外での英語研修や海外でのフィールドワークも全員が参加するものとしてカリキュラムに組み込まれています。

 中1、中2では留学生と交流する英語サマーセミナーやイングリッシュキャンプ、中3ではアメリカやニュージーランドへの語学研修、5年生(高校2年)の秋には、これまでの探究の集大成として海外フィールドワークに赴きます。イギリスのケンブリッジ大学に宿泊し、現地の大学生相手にプレゼンテーションをし、そのテーマに関するディスカッションを行うなど、6年間を通して世界にはばたく英語の学びを実践してまいります。

「開智学園の教育に『未来志向の新たな学び』を取り入れていくのが開智学園所沢の目指す姿」と語る吉村先生

“1から学校を創る”という唯一無二の経験を

--開智学園のグループ校との違いを教えてください。

 大きな特徴は「学校を1から創っていく」ところだと思います。というのは、この学校にはマニュアルもなければ、先例もありません。生徒会活動や学校行事、部活動についても、もともとある何かを参考にしながら良くさせていこうという流れが一切ありません。要するに、模範解答がない学校なのです。

 そういう中で、たとえば「この行事をするにはこうしたら良いんじゃないか」という仮説を立てて、実際にやってみて、振り返って軌道修正をして来年度につなげていくというプロセスが、活動のすべてにおいて必要になります。そのプロセス自体が「探究」であり、国際バカロレアのグローバル教育とも重なってくる部分ではないかと思うのです。

 国際バカロレアの教育を取り入れながら、新しい学校のいろいろな側面でそういった体験ができることは開智学園所沢だけの最大の強みです。6年間かけて新しい学校づくりに携わっていく経験こそが、生徒たちが大学生や社会人になったとき、大きな糧となるのではないでしょうか。

--新しい学校を創る経験を通した「探究型の学び」が、進路にも生きてくるとおっしゃいます。

 生徒たちには、中学1年生から探究型の授業、個人探究、フィールドワーク、学校行事や委員会活動などを体験していく中で培った汎用的学習スキルや自分の適性というものを進路選択につなげ、最終的には自分の意思でいろいろな大学を選んでほしいと思っています。偏差値による学校選びの視点ではなく、自分自身の強みやスキルを活かすことで、一般入試だけではなく総合型選抜も選択肢に入ってくるというのは、これからの大学入試を見据えたうえでの大きなメリットだと思います。

 また「オールインスクール」といって、塾などに通わずとも大学受験に向けたすべての学習を学校内で完結させることができるのも特徴です。日々の授業で大学入試に対応した演習などを行うことはもちろん、基礎力や応用力を養うスキルアップ合宿、大学入試問題演習を行う放課後特別講座、大学入学共通テスト対策講座、国公立二次・私大対策講座など、一貫性のある学習で難関大学合格を目指せるカリキュラムを揃えています。

--コース設定について教えてください。

 1年生(中1)から4年(高1)までは、特待コースが3クラスとレギュラーコース5クラスに分かれ、さらに特待コースは理系、医系、英語が得意な生徒に向けた文系(国際)コースの3つに分かれています。

 入学手続き後、生徒の希望をもとに数学や理科、テクノロジーが得意な生徒に向けた理系、医療従事者を目指す医系といったクラス分けを行います。何か特別な授業や実習をするわけではありませんが、興味関心を同じくする者同士を集めることで、クラス全体の活動をより充実させたものにするという狙いです。そうやって自分の興味関心を追求したうえで、3年(中3)進級時には改めて本人の興味や習熟度によってコースとクラスを再編成します。

 大学の志望学部に合わせたコース振り分けは、5年(高校2年生)時に行います。「国公立大コース」「私立大コース」「医系コース」海外の大学を目指す「国際系コース」を編成しています。

 なお、入学試験の段階で特待クラスと一般合格型の方向けのレギュラーコースに分かれますが、特待入試に敗れて一般合格となった場合でも、入学前の3月に実施されるテストで基準を収めれば特待コースに繰り上がるチャンスもあります。

開智中学(一貫部)との同時出願・同時判定が可能

--入試について教えてください。

 定員は240名、2024年1月10日を皮切りにスタートする第1回入試、特待A入試、特待B入試、算数特待入試、第2回入試までの5回の入試はすべて岩槻にある開智中学(一貫部)との同時出願となります。受験料は一律2万円、追加受験料は不要ですべての回の受験が可能です。

2024年度 開智所沢中等教育学校 生徒募集要項(一部)

 また、第2回入試については、出願の際に希望することで、開智未来中学校、開智望中等教育学校の合否判定も同時に行います。要するに開智中学、所沢、未来、望の4校の判定が出ます。3段階の合否判定を行い、まずは第2回入試の得点で合否を判定。第2段階として、他試験回の難易度をふまえてもっとも高い成績を参考に合否を判定、第3段階として、第1回と第2回を両方受験している場合については30点を加点したうえでの判定を実施する予定です。

 帰国生入試(11月)、2月4日に行われる日本橋併願入試に関しては、開智日本橋と両方の合格を得ることができます。こちらに関しては開智日本橋への出願となり、日本橋の合否判定と同時に、希望する方に対して開智所沢の合否判定も行います。募集定員は5名ですが、私どもとしては実力がある子には積極的に合格者を出していきたいという思いでいます。

 1月入試の出願手続きは開智中学と所沢の共通ページで行いますが、合否照会はそれぞれ別のページになりますので、それぞれにログインして照会していただく形になります。日本橋併願入試、第2回入試についても同様で、結果については合否判定を希望したすべての学校のリンクページに1校1校アクセスしていただく必要があるので注意してください。

--出題傾向について教えてください。

 入試の難易度については、難しい順に特待A入試、算数特待入試、特待B入試、第1回入試、第2回入試となります。第1と第2回、各特待入試の過去問については、開智中学のものを使って対策をしていただければそれがそのまま所沢の対策になります。2月4日の日本橋併願入試については、日本橋の過去問対策が有効です。

 なお、1月校と2月校では、4科の配点や試験時間、内容も変わってきます。開智中学の入試は算数の配点が高いのが特徴です。算数特待入試については、その場で粘り強く試行錯誤させるような思考力を問う問題もあるので、塾やご家庭での対策を入念にしていただけたらと思います。

新しい学校を創る「仲間」として参加してほしい

--どんなお子さんに入学してほしいとお考えでしょうか。

 共学化やリニューアル、校名変更などはあっても文字通り1から新しい学校を作ることというのはそうあることではありません。ぜひ新しい学校を作る「仲間」として、お子様のご入学を待っています。

 小学生のお子様だけではなく、保護者、関係者も含めすべてのみなさまと学校を創り上げていきたい。いろいろな議論をしながら、知恵を借りながら最高の教育を目指す。それこそが本校の考える「探究の学び」であり「グローバル教育」であると思います。

 新しいことが好きな積極的なお子さんはもちろん、人前で話すことが苦手といったお子さんも大歓迎です。リーダーとして引っ張っていくのが得意な子もいれば、企画を考えるのが好きな子もいて、議論をまとめるのが得意な子もいる。それぞれの子が、それぞれの個性を生かして輝ける場所が必ずある学校です。また、高1まで給食があるというのも、親御さんにとっては助かるポイントかと思います。

 先輩が誰もいない中学1年生というのは、なかなか経験できるものではありません。生徒会や学校行事、組織や仕組みづくりそのものに生徒ひとりひとりが関わることになるというのは、もちろん大変なこともあると思いますが、そのぶん多くのことを学んで成長できることは間違いないでしょう。「それって面白そうだな」「興味あるな」という方にぜひ集まっていただけたら嬉しいです。きっと、毎日がワクワクするような面白い学校になると思います。

--ありがとうございました。


 「開智学園所沢の学びは“不易流行”という言葉に要約される」と吉村先生。「伝統に裏付けられた開智学園の学び=不易」に「所沢の新しい学び=流行」が加わり、ますますブラッシュアップしていく開智学園所沢のこれからに大いに期待したい。

《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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