チャレンジングな経験、子供の能力に優位…9年間の追跡データ

 「チャレンジングな経験」は「粘りづよさ」や「社会への関心」などに優位に働き、また小学校4年生の時点で「チャレンジングな経験」が多い子供は、高校生になっても「勉強が好き」など肯定的な回答が多いことが、ベネッセ教育総合研究所の分析結果より明らかになった。

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チャレンジングな経験(経年比較、小4~高3生) 【2015~23年データ】(%)
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 「チャレンジングな経験」は「粘りづよさ」や「社会への関心」などに優位に働き、また小学校4年生の時点で「チャレンジングな経験」が多い子供は、高校生になっても「勉強が好き」など肯定的な回答が多いことが、ベネッセ教育総合研究所の分析結果より明らかになった。

 分析データは、小1~高3まで約2万組の親子の意識・行動の変化を、2015年から継続して追っている「子どもの生活と学びに関する親子調査」(東京大学社会科学研究所との共同プロジェクト)の結果を新たに分析したもの。アンケート回収率は年によって異なるが、平均約7割。

 今回は、子供が主体的・能動的に物事に関わり行動を起こしていくという意味で、「好奇心・探索の経験(疑問に思ったことを自分で深く調べる)」「果敢な挑戦の経験(無理だと思うようなことに挑戦する)」「夢中・没頭の経験(夢中になって時間がたつのを忘れる)」「達成・自信の経験(難しいことができて自信がつく)」「将来を考える経験(自分の進路について深く考える)」の5つの経験を「チャレンジングな経験」と定義。小4から高校生のうち、3つ以上の経験が「ある」と答えた「多群」は33.6%、0~2つの「少群」は66.5%だった。

 非認知能力、社会への関心・将来観、自己肯定感・幸せ実感について「チャレンジングな経験」との関連をみると、「粘りづよさ」「挑戦心」「社会への関心」「将来観」「自己肯定感」「今の幸せ実感」のすべての項目で、「チャレンジングな経験」が多い子供(多群)は、少ない子供(少群)に比べて肯定する割合が高かった。

 学習や認知能力、学業成績との関連についても「授業が楽しい」「勉強が好き」「暗記すること」や「論理的に考えること」のすべての項目で「チャレンジングな経験」が多い子供(多群)は、少ない子供(少群)に比べて肯定する割合が高く、学業成績も多群は少群よりも「上位層」が多く、「下位層」が少なかった。

 また、「勉強が好き」の項目について、小4から高3まで9年間を継続して調査。小4時点で「勉強が好き」と答えたのは「チャレンジングな経験」多群が79.0%に対して少群は61.6%。中1時には多群51.5%に対し少群43.1%、高1で多群44.0%、少群33.3%。高3時では、多群が45.5%、少群37.8%という結果となり、小4時点で「チャレンジングな経験」が多い子供は、高3時点まで一貫して「勉強が好き」とする傾向がみられた。

 データ分析の結果から、「チャレンジングな経験」は「勉強が好き」の意識、「自己肯定感」などのさまざまな要因に影響することがわかった。また直接的な効果だけでなく、「勉強が好き」を経由して「学業成績」や「幸せ実感」を高めるといった間接的な効果も考えられるという。

 調査の詳細はベネッセ教育総合研究所のWebサイトで確認できる。

《木村 薫》

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