埼玉教委・インテル・東大、3年で310名の教師を対象に21世紀型スキル育成研修を実施
ICT活用力、問題解決力、協働力、思考・判断力、コミュニケーション力……。急速に変化するグローバルな社会で生き抜くために求められている力=21世紀型スキルが、今、世界で注目されている。
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
埼玉県教育委員会は、インテル、東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)の協力を得て、21世紀型スキルの育成を目的とした教員研修「21世紀型スキル育成研修会」を7月10日にスタートする。
研修に先立ち7月9日午後、埼玉県民健康センターにて、三者による調印式と説明会が行われた。
◆埼玉教委、インテル、東京大学による連携プロジェクト
埼玉県教育委員会から教育長の前島富雄氏、インテルからは取締役副社長の宗像義恵氏、CoREFからは副機構長の三宅なほみ氏の三者が、協定書にサインをし無事調印式が完了。その後、今回の取組みについての説明が行われた。
前島教育長は、「21世紀型スキルは、今までの黒板とチョークによる一斉授業や個別学習だけでは身につけるのが難しい。今回スタートする研修では、教科を問わず普段の学習の中で、児童生徒がICTを無理なくツールとして活用し、コミュニケーションやコラボレーションなど21世紀型スキルが身につけられるような授業案を作成できる授業力を持った教員を育成する。3年間で小中高等学校・特別支援学校を合わせて310名の先生を対象に研修を行い、その先生方が核となって県内すべての先生に、伝え、普及させたい」と語った。
インテルの宗像氏は「インテルは社会貢献活動の一環として、1999年から、21世紀型スキルの育成支援を行ってきた。21世紀型スキルを習得するためには従来の、教員主体の授業から、児童・生徒中心の授業に変換する必要がある。ICTは児童・生徒中心の授業において不可欠のツールとなるだろう」と述べた。今回、インテルは、21世紀型スキルを育成する指導法を、効果的に学べる「Intel Teach」というプログラムを提供している。
CoREFは、今回の研修で「知識構成型ジグソー法」という手法を提供。この手法について三宅副機構長は「21世紀型スキルがなぜ世界で求められるのか。変化が速く、未来が予測できない時代にあって、自分で考え、判断し、自分で社会をよくする人材が求められているから。これから学校が育成しなければならないのは、変化に追随して対処法を考える人材ではなく、自分から変化を牽引できる人材。ジグソー法を授業に取り入れ、繰り返すことで21世紀型スキルが育成できる」と語った。
◆どのような研修が行われるのか
この研修会の主な特徴は、以下の2点だ。
(1)インテルが提供する、思考支援型の能力開発プログラム「Intel Teach」を用いる
(2)CoREFが推進している協調学習の手法「ジグソー法」を用いる
「Intel Teach」は、すでに世界70か国、1,000万人が受講しているもので、日本でも4万人以上の先生が受講している。
「Intel Teach」は、児童・生徒が自ら考える力をつけるためのプロジェクト型授業の指導法を学べるプログラム。5つのモジュールで構成されていて、プロジェクト型学習とはどういうものか、どのように設計し、どのような授業を行えばいいか、評価はどうするのか、などを学ぶ。これを学ぶことによって、従来、先生が一方的に生徒たちに向かって話すという授業から、生徒が主体となって自ら調べたり考えたりして問題解決をしていく「思考支援型」の授業へと変換していくことを目指している。
インテルは、このプログラムをオンライン化した「Intel Teach Elements」を提供し、先生方が自学自習することもできるようになっている。「Intel Teach Elements」の活用は、日本では埼玉県が初の事例となる。
「ジグソー法」とは、ある大きな課題について、グループで話し合って解決法を求めるのだが、A、B、Cという班があるとしたら、先生は、各班にまったく異なる資料を渡す。各班では、与えられた資料について詳しく調べるが、その資料だけでは問題は解決できない。そこで、別の班と意見を交換し、人の意見を取り入れ統合させることで、あたかもジグソーパズルのピースが合わさって一つの絵ができるように、答えを導き出すことができる。
このような手法で授業を行うことによって、コミュニケーション能力、イノベーション能力、コラボレーション能力といった21世紀型スキルを身につけることができる。
研修は、7月10日から、小中、高等学校、特別支援学校で3グループに分かれて6時間×3日間行われる。3年間で310名の県内の小中高等学校・特別支援学校の先生を対象に実施。研修を受けた先生方がリーダーとなって、県内の先生方に普及啓発していく考え。
先にオンライン研修「Intel Teach Elements」を試用した2人の先生に聞いた。
「Intel Teach Elementsではプロジェクト型学習とは何かというところから学び、最終的には授業案を作っていきます。どういう発問をしたらいいか、どのように評価したらいいかなど、ストーリーに沿って学びながら作っていくことで、考えが整理される。今までも授業案は作っていましたが、今回学んだ手法を使えば、目的意識がはっきりして、よりよい指導案を作れるようになると思います」(埼玉県 教育局 県立学校部 高等教育指導課 指導主事 山本哲也先生)
「現場の先生方は、21世紀型スキルというと、また新しいことをするのかと戸惑うかもしれない。が、今までやってきた『生きる力』や、総合的な学習に通じるものなのでさほど負担に思うことはないと思います。従来、ICTを使った授業といえば電子黒板を先生が使うのが精一杯だった。これからは、生徒たちが中心になって活用する場面を増やしたいと思います」(埼玉県立総合教育センター 情報教育推進担当 指導主事 清水励先生)
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