田園調布雙葉高校がデジタルぺンを導入…その利点とは
2015年6月、東京にある私立田園調布雙葉学園高等学校の情報社会学の授業において、大日本印刷(DNP)のデジタルペンを活用した公開授業が行われた。デジタルペンは、同社が日本の学校現場に合うよう開発した「OpenNOTE(オープンノート)」システム。
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この授業で使用されたデジタルペンは、スウェーデンのアノト社が開発した「アノト方式デジタルペン」の技術をもとに、大日本印刷(DNP)が日本の学校現場に合った専用ソフトと組み合わせて開発した「OpenNOTE(オープンノート)」システムだ。導入にあたっては、事前にさまざまな学校で2年間の実証実験を行い、先生や生徒からのフィードバックをもとに、現場のニーズに沿ったシステムに作り上げていった。
オープンノートはすでに50の自治体で全700校ほどに導入され、公立・私立のどちらも導入実績を有する。2015年にはさらに、累計1,000校が導入予定だという。
◆生徒の回答をリアルタイムに表示
今回授業が行われた田園調布雙葉学園では、2014年の9月から高等学校でオープンノートを導入し、高校生の情報社会学や宗教、数学などの授業で、デジタルペンを活用している。当日は高校3年生の情報社会学の授業で、数学をテーマに、「どうしたら数学が好きになるか」という課題でディスカッションが行われた。授業には、首都大学東京の准教授 福田公子氏など3名がゲスト講師として参加した。
まず授業のはじめに、アンケートなどが書かれた回答用紙が生徒に配られる。この用紙には、デジタルペンの情報を読み取る特殊な印刷が施されている。デジタルペンは、用紙に印刷されたドットパターンをペン内蔵の赤外線カメラで読み取り、手書きの文字や図形などを記録する。なお用紙への印刷は、学校のプリンターで行える。
生徒たちは、各々先生から質問された項目について、デジタルペンで回答を記入していく。すると、書いた回答がリアルタイムで先生のパソコンに転送され、教室正面の大型プロジェクターに全員の回答が一覧で表示されるという仕組みだ。
オープンノートの専用ソフト上では、特定の箇所を焦点化して全員分並べて表示したり、その中から気になった意見を選んで大きく表示するなど、授業の内容に応じた柔軟な表示ができる。生徒たちは自分の意見を書き終えて待っている間にも、ほかの生徒の回答をリアルタイムに見ることができるため、再び考え、違う意見を思いつくなど、「新しい気付き」が生まれる効果もあるという。
◆書かれた意見を見ながらディスカッション
デジタルペンが「大好き」という生徒たちは、鉛筆のようにデジタルペンを操り、自分の意見を書き込んでいた。書いていく軌跡もパソコン上で見られるため、じっくりと考えながら書き進めていくことができる。あるいは悩みながら綴ったようすを振り返ることもできるなど、結果だけではなくその過程が見られることも興味深い。
全員の回答がそろった後はディスッションが行われ、ここでもオープンノートのシステムが生かされていた。生徒が発言する際、同時にプロジェクター画面にその生徒が書いた回答を表示する。これまでの授業では、耳からしか意見を聞けなかったのが、視覚でも確認できるようになったため、聞き漏らしが少なくなっている。
◆デジタルとアナログの利点をもつデジタルペン
今回授業を行った情報科 小林潤一郎教諭によると、同校がデジタルペンを導入するきっかけは、ICT教育において生徒が自然に使用できる教材を探していたことだったという。当時を振り返り、同教諭は「もともと反転授業やICT教育を行うにあたって、さまざまなNPO団体や企業、他校をリサーチし、授業に合うものを検証していました」と語った。
タブレットは閲覧端末としての利用に適しているため、入力に適するデバイスを探していた際、デジタルペンを知ったという。従来の筆記用具のようにアナログ的に記入できる使い方ながら、書いたプロセスを認識したり、回答を一覧で表示したりできる点が授業に合うということで導入に至ったそうだ。
授業で行いたいことが簡潔にでき、他社のデジタルペンと比べて比較的安価であったことも大きな決め手という。全校でさまざまな教科の先生が使うためには、ソフトがわかりやすく、ハードの使い方も簡単であることは非常に重要だ。
「最初は10本導入し、まずグループワークで数人に1本という形で始めました。現在は20人ほどの授業で、ひとりにつき1本を使用しています。どういうプロセスで書いているかを見られるため、授業の組み立てもしやすくなり、生徒の意見を引き出しやすくなりました」と、デジタルペンの利点は多かったと同氏は語る。
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