激変する大学入試、今後求められる力とは…Z会メテウス開発マネージャー寺西隆行氏に聞く
センター試験の廃止や新テストの導入など、「高大接続システム改革」プランにより大学入試制度が2020年より大きく変わろうとしている。Z会エデュースでは大学入試改革に備え、主体的な学びを引き出す「東大進学教室 メテウス」を2016年3月より開校する。
教育・受験
中学生
--「高大接続システム改革」は教育業界だけで盛り上がっているものではありませんか。2019年に行われるセンター試験のあとはどうなるのか、不安になっている保護者の方も多いと思います。
首都圏では、高大接続システム改革に関して徐々に認知が拡がってきた時期にあわせ中学生の保護者会で大学入試改革の話をしたところ、大きな反響がありました。小学6年生の保護者も関心は高いようですね。関西でも、以前からさまざまな反応がありました。
最近では最難関と言われる中高一貫校でも、学校側が大学入試改革についてメッセージを出していますので、自然と保護者の方もこれからますます注目していくものと思われます。
◆採点方法の仕組みづくりが入試改革の課題
--2015年12月下旬に大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の記述式問題が公開されましたが、どうご覧になりましたか。
まず、論述式の問題ですから、採点については誰もが「採点しづらい」と答えると思います。しかし、それは解答のある知識問題の採点と比較するから、ですよね。採点しづらいと言いつつも、二次試験ではどの大学でも実際に論述式の採点が行われているわけですし、中学受験なら入試の当日に採点を行い、翌日に合格発表をしている学校もあるくらいです。だからこそ、採点はしづらいですが、そこまで難しくはないと思います。
--公平な採点については、時間も手間も費用もかかるという意見があります。
採点は主観であれば、つまり、語弊があるかもしれませんが、個人の好きなように行うなら簡単です。できるだけ公平・公正に行う必要があるため、手間も時間も掛かります。ただ、採点することは「できる」わけですから、“限られた時間の中でできる最善の方法”も存在するわけで、その方法を模索しているのが、高大接続システム改革会議だと思っています。
◆複数回実施見送りから見える確固不動の決意とは
--大学入学希望者学力評価テスト(仮称)は現在、複数回実施を見送る方向で議論が進められています。実施回数や日程に関し、どのようにお考えですか。
(現行のセンター試験の)「一発勝負を改める」のような、半ばスローガンのような目標のもとで、必ず議論にのぼる「(入試の)複数回実施」ですが、2012年に始まった高大接続特別部会のときから現実に導入するにはもっともハードルが高く、3年間の高校教育そのものの良さを奪いかねないとも思われていました。
2021年度から新大学入試を開始するという工程を守るには、試行過程をあわせて考えるともう、複数回にするか否かの結論を出さなければいけない時期で、締め切りまでに方法論がでなかった、ということになるかと捉えています。
一方で、複数回を見送った理由として「記述式とマークシート式の2段階で行う試験を複数回行うのは困難」という意見もあるようです。つまり、記述式を導入することを確実に遂行するために複数回を諦めた、という、優先順位の問題と見ることもでき、私は今回の見送りの方向性を受けて、記述式導入への確固不動の決意を感じました。
◆東大・難関大合格力に変化…早期から「主体的に学ぶ力」を身につけて
--大学入試改革により、難関大に合格する力にも変化が表れそうですね。いわゆる「東大合格力」にも変化はありますか。
すでにここ数年で、東大に合格する力の中身は変わってきています。Z会東大進学教室での業務を通じて東大入試傾向分析を毎年しているなかでその変化をはっきりと感じており、そのひとつに、英作文の問題で自らの考えを述べる出題があるように「ただひとつの正解のない問題」を解く力が合格するために必要になってきていると思います。
東大は、自分たちがメッセージを出すことが社会を変えていくことにつながるという自負を持っています。教育においても、東大入試が大学入試改革の指標としての役割を担っていくことでしょう。これからはもっと多くの大学が、正解のない問題に対応していくことを予想しています。
東大のほかにも、すでに大学入試改革に向けて動き始めている難関大もあります。今回の大学入試改革は「三位一体改革」で、大学入試だけでなく、大学改革でもあり、高校改革だからこそ、早くから主体的に学ぶ力を身につけておきたいですね。
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