東京オリンピック2020の「夜行新幹線」国鉄時代にも例

6月30日、JR東日本から東京オリンピック会期中における臨時列車の運行計画が発表されたが、この中でアナウンスされていた深夜運行の東北新幹線がSNSなどで大きな話題となっている。

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遅延によるものを除けば、新幹線最初の深夜運行は国鉄時代の1971年7月に東海道新幹線で運行されたもの。1964年10月の開業以来初のケースだったという。写真は東海道新幹線の開業式。
遅延によるものを除けば、新幹線最初の深夜運行は国鉄時代の1971年7月に東海道新幹線で運行されたもの。1964年10月の開業以来初のケースだったという。写真は東海道新幹線の開業式。 全 4 枚 拡大写真
6月30日、JR東日本から東京オリンピック会期中における臨時列車の運行計画が発表されたが、この中でアナウンスされていた深夜運行の東北新幹線がSNSなどで大きな話題となっている。

これは宮城スタジアム(宮城県利府町)で開催されるサッカー競技に合わせたもので、7月21・24・27日には女子一次ラウンド、7月28日には男子一次ラウンド、7月30日には女子準々決勝、7月31日には男子準々決勝がそれぞれ行なわれることになっている。

これに伴ない、JR東日本では東北本線仙台・岩切~利府間に新利府通過の臨時普通列車を運行。仙石線では7月28・31日に多賀城駅(宮城県多賀城市)からのシャトルバスに連絡する臨時普通列車も運行される。また、試合終了後の足として、7月30日を除いて仙台から各方面へ深夜運行が行なわれる。

東北新幹線では、仙台から深夜列車が上下運行されることになっているが、驚くべき列車は、競技開催日基準で7月21・24・27・28日に運行される0時45分発の『やまびこ422号』で、東京に4時20分に到着する、いわゆる「夜行列車」となっている。

並行する東北本線でも臨時を含めた一般営業の夜行列車は、2016年3月改正で『カシオペア』が廃止されて以来運行されていないので、新幹線夜行は異例中の異例と言える。仙台始発の夜行列車としても近年では異例で、国鉄時代を知る人なら、1982年11月改正で廃止された仙台~上野間の寝台急行『新星』を思い浮かべるだろう。

新幹線では保守作業のため0時を過ぎての運行を行なわないことが原則だが、過去に例がなかったわけではない。列車の遅れにより必然的に夜行になったものを除くと、その最初は東海道新幹線だった。

1971年7月25~26日に広島県下を襲った集中豪雨のため山陽本線が運行を見合わせ、線内各所で列車が立ち往生。7月26日17時までに再開したものの、運休や遅れが相次いだため、国鉄本社は7月27日新大阪発0時10分、0時40分の臨時『こだま』を急遽設定し、山陽本線からの乗継ぎ客に対処した。

また、記憶に新しいところでは、2002年に日韓共催で開催された「2002FIFAワールドカップ」での運行だろう。

この時は、6月15日に新潟市中央区の新潟スタジアムビックスワン(現在のデンカビッグスワンスタジアム)で行なわれた決勝トーナメント1回戦終了後の足として運行され、上越新幹線では試合終了後から1時40分まで15本を設定。東海道新幹線でも6月11日に静岡県袋井市のエコパスタジアムで行なわれたカメルーン対ドイツ戦に合わせて6本の上り深夜列車が設定された。

さて、今回運行される予定の『やまびこ422号』は、東京までの到達時間が3時間35分となっている。通常、仙台~東京間の到達時間は『はやぶさ』で1時間30分程度なので、その倍以上の時間をかけて運行されることになる。停車時間を含めた全区間の表定速度は約98km/hだ(日中の『はやぶさ』は約225km/h)。

この列車の前には、東京着2時10分の『やまびこ412号』も設定されているため、100km/h以下のスロー走行は、少しでも運行間隔を空けて保守作業の時間を確保するためなのだろう。騒音問題もあるため、日中のようにフルスピードの320km/hで走るわけにもいかない。

深夜運行の『やまびこ』は、『はやぶさ』と同じくE5系が充当されるが、グランクラスとグリーン車は営業されず、全車普通車自由席で運行される。その点でも近年の新幹線では異例だが、これはおそらく、コロナの感染状況次第では無観客になる可能性が残されていることによる措置だろう。無観客になれば当然、臨時列車の運行も必要なくなるわけで、2002年以来の新幹線深夜運行が幻となる可能性も残されている。

表定速度は100km/h以下、東京オリンピック2020の「夜行新幹線」…深夜新幹線は国鉄時代にも例

《佐藤正樹(キハユニ工房)@レスポンス》

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