◆ニンジャ譲りの精悍な顔つき
エッジの効いたシャープなスタイリングは、モトクロッサー『KX』シリーズにも通じるアグレッシブなデザイン。ツリ目のデュアルライトは『ニンジャZXシリーズ』のフロントマスクのように精悍で、鋭くスラントしたセンターカバーがブラックで引き締められている。
軽量な車体にパワフルなエンジンを積み、スロットルを大きく開ければグイグイ加速する。しっかりニーグリップしておかなければ、振り落とされそうになるほどダッシュは鋭い。さすがはカワサキ、走りが力強い!
車体はお馴染みのライムグリーンだが、今回乗っているのはバイクじゃない!! カワサキモータースジャパンが7月15日に新発売した四輪オフロードビークルだ。
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◆ATVはキホン座って走る
袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県袖ケ浦市)にて開かれたカワサキの新型『ニンジャZX-4RR』のメディア向け試乗会にて同時開催されたのが、このATV(オール・テレーン・ビークル)体験会。
サーキット走行用のレーシングツナギのまま、特設オフロードコースで走行させてもらったのは3機種あり、まず最初に乗ったのが『KFX50』だ。オフロードスポーツをはじめるキッズたちに最適なエントリーモデルで、対象年齢は6歳以上としている。
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跨ってみると、シートがスリムで前後移動がしやすいなど、本格的なオフロードをアグレッシブに攻められると直感させてくれる。クッションは柔らかく、シッティングで荷重をかけてトラクションを稼いで乗る方が効率が良い。フォームをスタンディングにするのは、ジャンプなどを飛び越える際だけだ。
フットレストはブーツのソールがグリップするようラバーが施され、踏ん張ったりステップ荷重もできる。キッズ用なので、身長175cmの大人が乗るとライディングポジションは少し窮屈だが、身長120cm程度のライダーが乗れば、しっくりとくる。
◆キッズ用と侮るなかれ!
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鋼管ダブルクレードルに搭載される空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒エンジンは、セルスターターですぐに目覚めた。バイクのようにアクセルグリップをひねるのではなく、右手親指でスロットルレバーを押し込むと進んでいく。
トランスミッションはCTV(コンティニュアス・ヴァリアブル・トランスミッション)で無段変速。ブレーキは左右レバーでコントロールする。
バイクのように車体は傾かないので、旋回時はハンドルを切ってコントロールする。『KFX50』のエンジンは充分に力強いが、大人が乗るとフルスロットルのままコーナーを曲がることもでき、四輪オフロードビークルの楽しさを知るにはお手軽でうってつけ。ビギナーも臆せず遊べる。
◆90はもっとスポーティ!
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次に乗った『KFX90』は、対象年齢10歳以上。車体を共通としたまま、排気量をアップしているから、加速力やスロットレスポンスはかなり鋭い。
足回りも充実していて、フロントサスペンションはAアームとショックアブソーバーを組み合わせた独立懸架で、路面追従性に優れるとともに軽快なハンドリングを実現している。
リヤサスペンションはシングルショックアブソーバーにスイングアームを組み合わせた本格的なもの。後輪車軸上に油圧ディスクが配置され、コントロールしやすく確実な制動力を発揮する。前輪ブレーキは左右ホイール内に機械式ドラムブレーキが配され、パーキングブレーキ機能を持つ。
『KFX90』では走りがより過激になり、灼熱のなか革ツナギなどで乗るものではない。全身運動だから、言うまでもなくすぐに汗びっしょりで、かなりハードなスポーツであることがわかる。
威圧感たっぷりボスキャラ登場!!
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シフトチェンジなしの『KFX90』&『KFX50』で操作に慣れたら、サイズ感のまったく異なるラスボス『BRUTE FORCE 300』に挑戦だ!
ボディが大きく、見た目にも迫力が違う。車体中央に搭載されるエンジンは、排気量271ccの水冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒。堅牢なフレームは、鋼管パイプで構成されている。
トランスミッションは、ハイ、ロー、ニュートラル、リバースの4ポジション。自動遠心クラッチでベルトドライブトルクコンバーターにつながっていく。
フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン、リヤサスはシングルショックアブソーバー+スイングアームで、余裕のあるホイールトラベルを持つ。
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車体下部は155mmの最低地上高を確保し、ワイドなトレッドのタイヤもあいまって優れた悪路走破性を発揮している。車体前後に備わるキャリヤが、これまた頼もしい。フロントに20kg、リヤ30kgまでの荷物を積むことができ、荷かけフックもある。
液晶デジタルメーターや 12V/10AのDCソケットをコンパートメントボックスに装備するなど、働くチカラとして、自然に親しむ相棒としてのキャラ付けがされているのも『BRUTE FORCE 300』の特徴で、オフロードスポーツを純粋に楽しむ『KFXシリーズ』とはまた異なる魅力があることがわかった。
車体価格は『KFX50』が46万2000円、『KFX90』が50万6000円、『BRUTE FORCE 300』が88万円となっている。二輪ではないカワサキ、四輪オフロードビークルも面白いぞ!!
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青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。