浪人でつかむ「未来の自分」現役東大生・京大生が振り返る成長の1年

 現役志向が強まる昨今、憧れの第一志望校合格へあと一歩にも関わらず、不本意な大学への進学を決めてしまう学生も多くいる。そんな中で、駿台予備学校での浪人生活を選択し、東大・京大の合格を見事勝ち取った4人。浪人を選んだ理由や1週間のスケジュール、浪人をしたからこそ得られたものとは。

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 大学受験では、年々現役志向が高まっている。少子化に伴い、進学先を選ばなければ現役で合格できることに加え、総合型選抜や学校推薦型選抜が増えてきたこともこの傾向に拍車をかけているようだ。

 しかし一方で、東京大学(以下、東大)や京都大学(以下、京大)といった最難関国公立大学の入学者を見ると、依然約3割が浪人生だ。今回、インタビューした4人も、駿台予備学校(以下、駿台)で1年間の浪人生活を経て見事合格を勝ち取った。なぜ浪人を選んだのか、実際の浪人生活はどのようなものだったのか。4人の話から、高い学力を身に付けるだけでなく、人間的に成長できる1年間が見えてきた。

【話を聞いた人】(五十音順)
池上 晃太朗さん:埼玉県立浦和高等学校/東京大学理科一類合格(駿台・お茶の水校3号館)
越智 亮太さん:愛媛県立松山東高等学校/京都大学工学部物理工学科(同・京都校)
太田垣 駿さん:兵庫県西宮市立西宮東高等学校/京都大学文学部(同・大阪校)
白石 尚嗣さん:国立筑波大学附属坂戸高等学校/東京大学理科一類(同・お茶の水校3号館)

現役志向が高まる中でも浪人を選んだ理由

--大学受験では現役志向が高まっていると言われていますが、なぜ皆さんは浪人を選んだのでしょうか。

太田垣さん:実は現役時に受けたのは第一志望の京大だけでした。不合格だったものの、入試では手ごたえがあり、あと1年がんばったら合格できるのではないかと思ったことと、後悔のない選択をしたかったこともあって、浪人を選択しました。兄も浪人をしており、両親が浪人に寛大だったのも大きかったですね。

白石さん:僕は小学生のころから東大への憧れがあり、落ちたら浪人すると受験する前から決めていて、東大以外は受けませんでした。ところが2次試験が終わった瞬間「これは落ちたな」と思って、早速帰りに安田講堂の前から「浪人させてほしい」と父に電話しました。実は父も仮面浪人をしながら駿台に通っていたので特に反対はされず、むしろ協力的でした。

越智さん:僕の出身校は愛媛県の公立高校ですが、現役志向がそれほど強くなく、浪人が多かったこともあって、浪人という選択にはハードルを感じませんでした。それに僕は負けず嫌いな性格で、第一志望である京大に何としてでも合格したい、京大は浪人してでも入る価値がある大学だと考え、もう1年勉強することにしました。

池上さん:僕の場合は、勉強をやり切った感のないまま、中途半端に大学受験を終えたくないという気持ちが強かったです。併願していた私立大学には合格はしたのですが、不完全燃焼のまま進学しても十分に大学生活を楽しめないのではないかという思いがありました。また、越智さんと同様、僕の出身校も第一志望の合格にこだわる校風で浪人率が高く、同じ東大をめざして浪人する先輩や同級生が多かったことも理由のひとつです。

オンライン取材のようす(太田垣さん(上段左)、白石さん(上段右)、越智さん(下段左)、池上さん(下段右下))

--浪人時の通学先に駿台を選んだ理由を教えてください。

太田垣さん:合格発表日にWebサイトで結果を知った後、ポストを見たら駿台からDMが届いていて、(最難関国公立大学をめざす)EXコースの認定が取れていることがわかりました。

 実はこの日、同じ駿台大阪校で一浪を経て東大に進学した兄がたまたま帰省していて、兄は不合格で意気消沈している僕を自宅から引っ張り出し、駿台の申し込み手続きに連れて行ったんです(笑)。兄は自分が浪人の1年間で学力だけではなく人間的にも成長できたという実感があったようで、僕にも「絶対に良い経験になるから」と励ましてくれました。

白石さん:僕は高校3年生から駿台に通っていたので、2次試験が終了した時点で浪人時にはお茶の水校3号館のEX東大理系演習コースを受講しようと決めていました。

越智さん:僕は浪人が確定して初めて予備校について調べ始めたのですが、愛媛の自宅から通える範囲には大手予備校がまったくないことがわかりました。自分がめざすのは京大という最難関の大学だから、講師陣が充実していて、特に理系科目を伸ばしてくれる環境が整っているところを見つけようと情報を集めた結果、駿台に決めました。

池上さん:僕の場合は、東大に合格している先輩で駿台に通っていた人が多いこともあって、高校の同級生は駿台を選ぶ傾向があり、それがいちばんの決め手になりました。また、駿台は大手予備校だから情報が豊富で、講師陣も優れているのではないかという期待もありました。

成績アップの鍵は、指導力ある講師への信頼

--実際の浪人生活はどのように過ごしていましたか。

太田垣さん:1週間の勉強スケジュールをきちんと決めて過ごしていました。僕は朝型なので、平日は毎朝駿台のドアが開く時間に間に合うように電車に乗り、自習してから授業に出席。夜は早く寝たかったので19時には自習を切り上げて家に帰り22~23時には寝るというルーティンの繰り返しでした。

 週末は、授業がない土曜日は1週間分の予習・復習にあてていました。一方で日曜日は勉強をまったくせず、映画を観に行ったり1人でカラオケに行ったりして気分転換をするようにしました。平日のリズムが崩れないよう、朝はいつも通り起きるように心がけてはいましたが、週に1日は勉強をしない日を作った方がむしろ効率がよいと考え、入試までずっとこのペースを続けました。

白石さん:浪人生活が始まった当初は、何曜日のいつの時間にこの科目の予習をするというふうに、細かく計画を立ててこなしていたのですが、この勉強法が自分には合っていなかったのか、夏休み以降はガス欠状態のようになって、完全にリズムが崩れてしまいました。授業には出るものの、その後は自習室には向かわず、古本屋に行ってぶらぶらして喫茶店でコーヒーを飲んで…と、浪人生らしからぬ過ごし方をしていた時期もありました。ただ、机に向かわなかっただけで、散歩しながら暗唱するなど、勉強が継続できるよう僕なりに努力はしていたつもりです。

越智さん:僕は京都校から歩いて5分のところにある寮に住んでおり、平日は寮に帰ってからは勉強しないと決めて、21時30分まで駿台で勉強していました。現役時代は面倒で復習をちゃんとしなかったことが反省としてあったので、週末は平日の復習にあて、このサイクルを大きく崩すことはなかったです。

 日曜日は寮の食事がないので、同じ寮の友達と外食しに行くのがいちばんの息抜きでした。寮生活のため洗濯は自分でやっていましたが、寮が近く帰ってから時間にも余裕があったので、そこまで負担ではなかったです。

池上さん:僕は「授業を無駄にしない」という信念のもと、予習を丁寧にやってから授業にのぞみ、集中して聞くことを大事にしました。授業内容だけでなく、先生の雑談やためになる話まで何でもメモを取るようにしていました。そうやってメモがどんどん積み上がっていくことは自信にもつながりましたね。

 勉強場所は、おもに自宅のダイニングでした。家族の食事のタイミングで教材を片付けることで気持ちのリセットができ、勉強の効率アップにもつながったと思います。

--浪人生活を通じて印象に残っている思い出があれば教えてください。

太田垣さん:現代文の授業です。現代文を数学のように論理的に読み解くのが特徴で、先生直伝の明確な読解法に従って本文に線を引いていくだけで、回答の要素がピックアップされるんですよ。僕の壊滅的だった現代文に革命をもたらしてくれましたね。

白石さん:僕は英語の授業が印象に残っています。EX東大演習コースで教わる英語は教養につながる雑談が多く、息抜きにもなっていました。また、今東大で論語の授業を取っているのですが、これは駿台で受けた古文・漢文の授業で興味の幅が広がったおかげだと思います。

越智さん:僕も一番印象的だったのは授業で、特に物理と数学はいつも感動せずにはいられないほどでした。学問的な面白さにも触れられてモチベーションが刺激され、復習もきちんとやるようになって飛躍的に成績が伸びました。駿台の講師陣との出会いは人生の大きな転機だったと感じます。

池上さん:僕は授業中に語られた先生方の言葉です。本番が近づいてきた時期に、物理の先生が繰り返し言っていた「とにかく手を動かせ」という言葉。この言葉が本番での粘り強さの原動力となり、全力を出しきることができました。また、最後まで気を抜かずにがんばることができたのも、英語の先生の「受験の天王山は夏ではなく2月だ」「本番に頂上を合わせろ」という言葉のおかげです。

浪人生活で培った計画力と乗り越える力 視野も大きく広がる

--浪人時代、スランプだと感じたことはありましたか。そこからどのように立ち直りましたか。

太田垣さん:実は僕はスランプがなかったのですが、それは先ほども言ったように、日曜日は完全にオフにしていたこと、やるべきことをすべてリストアップして、それが終わればその日は終了と決めていたことが予防につながったのではないかと思います。

白石さん:先ほどお話ししたように、後半以降は勉強のリズムが崩れたこともですが、数学の偏差値が安定しなかったことも明確なスランプでした。ただし、これはまずいと思っていた時に、ある英語の先生から「数学はボロボロだったが駿台の前期のテキストをとにかくやり込んだ」と伺ったんです。駿台では前期に基礎からしっかりと学び直しをするので、「なぜこの解法を使うのか」という視点から基礎固めをやり直すことで、数学の偏差値が安定するようになりました。

越智さん:僕は秋の模試であまり結果がよくなかったときがいちばん“底”でした。体調が悪かったことに加え、数学や理科で本当は解けるのに解けない問題だと思い込んでしまっていました。自分が解ける問題を見極められるよう、問題文や数式の見た目に惑わされず、問題が聞きたいことは何かを探ることを特に意識して、過去問などに取り組みました。

池上さん:僕の場合は11月ごろに精神的に不安定な状態になる時がありました。担任から駿台のカウンセラーを紹介してもらい、話を聞いてもらう中で、「これからすること」だけでなく「これまでしてきたこと」にも目を向けられるようになり、自分の中で成長したポイントを探すことで不安が解消されました。

--駿台での浪人生活を振り返っての感想や成長したと思う点を教えてください。

太田垣さん:大学受験は人生で初めての大勝負でした。もし現役で合格していたら天狗になっていたと思うので、ここで挫折したのは今振り返れば良かったと感じています。計画力、実行力が格段に身に付き、プレッシャーにも強くなった気がします。

白石さん:浪人生活は旅の途中でする寄り道みたいもので、まっすぐ行っていたら知らなかった世界をたくさん見られたと感じています。浪人時には東大以外の大学も受験しましたが、それも「人生には多様なルートがあって良い」「自分にはいろんな可能性があるのだ」と受け入れられるようになったからで、浪人の1年間を通じて視野がすごく広がったなと思います。

越智さん:浪人生活を通じて、目標と今の自分の間にはどれくらい距離があり、目標を達成するにはどのように勉強を組み立てれば良いかを自分で考えて実行できるようになりました。スランプになったときも自分で決めた計画を着実にこなすことで気持ちを立て直し、乗り越える力や自信が身に付いたと思います。

池上さん:大学に入ってから必要な知識が十分身に付いただけでなく、勉強の仕方そのものを学ぶことができました。これは大学の勉強でも役に立っており、浪人していなければ今ごろ苦労しただろうと思うことがよくあります。また、現役時代は我流に固執して自分で自分の首を絞めることが多々あったのですが、浪人時代には担任や先生方のアドバイスを素直に受け入れ、柔軟になれたことも大きな成長につながったと感じます。

高みをめざすからこそ、諦めずに後悔の少ない選択を

--最後に浪人をするか迷っている受験生にメッセージをお願いします。

太田垣さん:浪人生活は実質10か月しかなく、今は茨の道に見えるかもしれませんが、振り返ってみればあっという間です。京大は最先端の恵まれた研究環境に加え、自由な校風で、やりたいことに打ち込める場所です。これまで京大をめざしてきたなら、不合格でも諦めずにがんばってほしいと思います。

越智さん:浪人は、第一志望に受からなくても「それでも浪人して良かった」と思えるぐらい勉強できる意志の強さが必要です。その強さがある人なら、浪人生活から得られるものも大きいと思います。

 僕にとって京大に進学して得たものでいちばん大きいのは、人との出会いです。僕の学科は2年次のコース選択に向けて勉強をがんばる人も多く、刺激を受けています。

白石さん:越智さんが今話したように、東大にも教授、学生共にとても優秀な人たちが集まっていて、そこから受ける刺激や影響は計り知れないものがあります。高3の結果だけで進路を決めるのは早すぎる気もするので、立ち止まって考える時間を確保する意味でも、浪人を選んだ方が後悔は少ないのではないでしょうか。

池上さん:白石さんの言う通り、東大の魅力は周りに自分よりすごいと思える人があふれているところです。当たり前のように勉強するだけでなく、自分のもっているものを人に与えることをいとわない人ばかりで、周りの人のおかげで自分も毎日成長していると感じています。この環境に身を置くために諦めずに浪人して本当に良かったですし、受験をやり切った実感がないなら、浪人を選んだ方が良いと思います。

--浪人生活を振り返って、保護者に感謝していることはありますか? 浪人を考えていらっしゃる保護者の方々へのメッセージと共にお願いします。

太田垣さん:浪人生活では毎日お弁当を作ってもらったり、参考書がほしいと言えばお金を出してくれたりと、いろいろな場面で支えてくれた両親には本当に感謝しています。

 浪人の1年間は本人がいちばんしんどいし、精神的に落ち込むこともあるかもしれませんが、絶対に将来にプラスになると思うので、1年間は温かく見守ってあげてほしいです。

白石さん:経済面での支援はもちろん、僕はだらけてしまった時期もあり、親としては心配で口出ししたい気持ちがあったと思いますが、あえて何も言わずに見守ってくれたことには心から感謝の気持ちでいっぱいです。

 浪人は、本人が少しでも迷っているようであれば真っ向から反対せずにそっと寄り添い、何よりも本人の意思を尊重してあげてほしいです。

越智さん:僕もやはり親に対しては経済的な支えに対する感謝が非常に大きいです。季節講習の講座数を遠慮して抑えめにしていたら、「これも受けておいたら」と親から勧めてくれたこともあり、本当にありがたかったです。

 保護者が子供に見える形で不安を出したら、志望校合格へのノイズになります。もし子供が浪人すると決めたら、保護者も覚悟を決めて応援してあげてほしいですね。

池上さん:実は両親からは「浪人は向いていないだろうからやめた方が良い」と言われていたので、浪人を決めたときは複雑そうでした。でも最終的には「やるならがんばれ」と応援してくれたことには感謝の気持ちでいっぱいです。

 浪人の1年間は単に学力をつけるだけでなく、自分を見つめなおす機会であり、今日皆さんが言っていたように、その後の人生において間違いなく大きな意味を持つと思います。ある先生が最後の授業で、「大事なのは選択ではなく、その後の行動だ」と言っていました。浪人はご家族としても大きな決断になると思いますが、ぜひ応援してあげてください。

--ありがとうございました。


 インタビュー前には、浪人生活には大学入試に必要な「勉強だけ」をひたすら詰め込む期間というイメージがあった。しかし4人の話を聞いて、志望校に見合う学力を身に付ける以外にも、自分の課題を分析し解決法を考える力、解決法を実行する力が養えることがわかった。これらは今の社会で非常に求められている力でもある。

 また、東大・京大受験では理系であっても文系の、文系であっても理系の学習が必要となってくる。それらの学習を現役時に深めることは時間的に難しいが、勉強に集中できる浪人時ならじっくり腰を据えて学ぶことができる。結果、興味の幅が広がり、大学卒業以降の進路の選択肢も格段に増えることだろう。1年というプラスアルファの時間を過ごすことは、憧れの第一志望校への合格を叶えるだけでなく、人として成長できる貴重な機会なのだ。

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《木村りこ》

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