なぜ河合塾の東大英語は"本番で崩れない"のか…2人の名講師が明かす指導の全貌

 求められる力の幅広さと制限時間の厳しさで知られる東大英語。英語が得意なだけでは合格に届かないこの入試で、毎年多くの東大合格者を指導する河合塾の名講師2人が、「本番で崩れない力」を育む指導の全貌を明かす。

教育・受験 高校生
PR
なぜ河合塾の東大英語は
なぜ河合塾の東大英語は"本番で崩れない"のか…二人の名講師が明かす指導の全貌 全 6 枚 拡大写真

 東大入試の英語(以下、東大英語)は、120分で要約・英作文・リスニング・和訳・長文読解までを課す。求められる力の幅広さと制限時間の厳しさは、数ある大学入試の中でも群を抜く。ただ英語が得意なだけでは太刀打ちできない。では、合格には何が必要なのか。毎年多くの東大合格者を輩出する河合塾では、東大英語をどう指導し、どう生徒を支えているのか。東大講座の英語科を代表する2名の講師に、「本番で崩れない力」を育む指導の中身を聞いた。

お話を聞いた人
田村 喜宏氏:河合塾英語科講師
東大を含む上位レベルの講座を数多く担当。東大向けの教材や東大入試オープン(模試)の作成に携わる。豊富な指導経験と分析に裏打ちされた確かな授業は、多くの塾生の信頼を一手に集める。
木下 陽介氏:河合塾英語科講師
大阪校、京都校など近畿圏の校舎で東大講座を数多く担当。質問にも熱心に対応し生徒ひとりひとりに寄り添った丁寧な指導を行う。論理的でわかりやすい授業で、生徒から絶大な信頼を得る。

「英語ができる」だけでは届かない…東大が問う総合的な言語力とは

--東大英語には、他の難関大や医学部受験と比較して、どのような特徴がありますか。

田村 喜宏氏:東大講座を多数担当、教材・模試作成にも携わる

田村先生:最大の特徴は、問われる力の幅広さです。その他の難関大では長文読解や英作文が中心ですが、東大では読解だけでも複数の形式がありますし、それに加えて要約、和訳、英作文、リスニングまで、多岐にわたる力が求められます。さらに決定的なのがスピードです。120分という試験時間の中で、大量の英文を読み、処理しなければなりません。近年は文章量も増え続けており、2026年度入試では総語数が過去最多となりました。

木下先生:他大学と比べても、東大英語は非常に完成度の高い試験だと感じます。日本のトップ層の高校生が現在どのような力を身に付けているかを踏まえ、東大が求める力を適切に測れるよう作られています。自由英作文では自分の考えを英語で発信する力、いわばスピーキングにも通じる力を測る意図もあり、4技能をバランスよく見る緻密な作り込みに、日本一の大学である東大らしさが表れていると感じます。

2026年度東大入試問題構成

--分量が多くスピードも求められるということは、東大英語は帰国生や英語で教育を受けてきた人が有利ですか。

田村先生:実際はそれほど単純ではありません。というのも、東大英語が問うているのは英語力だけではなく、思考力や判断力、日本語力を含めた総合的な言語力だからです。

 たとえば要約問題では、英文を読んで内容を理解できたとしても、日本語での表現力がなければ、限られた字数で的確にまとめることはできません。2026年度入試の第1問でいえば、英文全体を和訳換算で約9%の文字数まで圧縮して要約することが求められましたし、第2問の自由英作文では、”What does it mean to be strong?”(強いとは何を意味するのか)という問いに対する自分の考えを60~80語の英語でまとめる必要がありました。つまり、東大が求める英語力とは、英語でコミュニケーションができる・英文が読めるだけでは十分とは言えないのです。

木下先生:受講生の中に帰国生は何人もいますが、私もやはりそれだけでは合格できないという実感はあります。東大英語では、問題文が何を伝えようとしているのか、質問で何を聞かれているのかを正確につかむ力が求められます。これは先ほど田村先生が言われた「日本語力を含めた総合的な言語能力」であり、私はそれが東大の考える「頭の良さ」の1つだと思っています。

田村先生:私もそう思います。前東大総長は、「言葉とは本来、数式のように透明でノイズがないものではないため、自身の解釈や感情のフィルターを通すことで情報が歪む危険性を自覚し、複雑な事実を正確に届けることが重要である」と訴えていました。東大英語で問われているのは、まさにそうした言語の運用力だと言えるでしょう。

河合塾が育てる力は再現可能、だから本番でも崩れない

--東大英語で求められる力を育てるために、河合塾ではどのような考え方で指導やカリキュラムを設計しているのでしょうか。

田村先生:東大英語において、過去問を何十年分も機械的に解かせ、「習うより慣れよ」とする指導では限界があります。私が第一に考えているのは、テクニックや暗記に頼らず、「なぜその答えになるのか」を徹底して考えさせること。そして、単に正解・不正解だけでなく、「東大はこの答案をどう評価するか」という採点者の視点に立つ習慣を身に付けてもらうことです。

木下先生:河合塾の強みは、我々講師が出題意図を熟知し、東大が求める力を再現可能な形で教えられることです。復習しやすく、学んだことが次につながるオリジナルカリキュラムを組んでおり、「何が問われているのか」がわかるようになります。「河合塾で初めて東大英語の考え方が理解できた」と話す生徒も少なくありません。

--出題意図といえば、今年は第5問の小説で、"Before she can tell him no, he should please read his paper, the man takes two corners of the blanket and flaps it over the mattress."という文章の和訳問題が難解だとSNSでも話題になりました。しかしここでは、描出話法という珍しい文法知識の有無ではなく、「言葉を機械的な処理に任せない、文脈から意味を読み取る力」を問う東大の強い意図を感じます。

木下 陽介氏:近畿圏で東大講座を多数担当、丁寧で個に寄り添う指導に定評

木下先生:おっしゃるとおりです。東大英語は通常第1問で、英語の論説文を日本語で要約させ、論理的思考力を測ります。そして第5問では、小説やエッセイを読ませ、心情理解を問います。小説ですから、辛い状況に置かれた人物が描かれる作品もあり、今年もこの文章は、妻に先立たれた男性が登場する物語でした。

 実は国語でも、現代文は論説文と随筆または小説が出題されており、2025年度からは2年続けて小説が出題されています。これは私の個人的な見立てではありますが、東大が英語と国語でこのように小説を出題する意図は、最高学府と呼ばれ、国家を牽引する人材を育ててきた自負があるからこそ、他者を理解する力、自分とは異なる立場に共感できる力を重視している姿勢の表れではないかと思うのです。

田村先生:私も東大英語の第5問は象徴的だと思っています。東大受験生のデータを長年追ってきて驚くのは、論説文は読めても小説になると心情が読み取れない、英語は得意なのに第5問だけ苦手という生徒は、合格まであと1歩届かないケースが少なくないということです。配点は非公表ではあるものの、第5問の配点が東大英語の中でもっとも高いと見られており、合否を左右する重要な問題と言えるのかもしれません。

 一方で、東大に合格する生徒を見ていると、第5問を楽しんで解いている印象があります。本来、小説やエッセイはそうやって読むものですから、日頃から読書はもちろん、受験勉強以外に多様な価値観に触れるような経験をしている人に来てほしいという、東大からのラブレターと言えるかもしれないですね。

木下先生:東大が出題する小説の文章で、登場人物が感情を直接語ることはほとんどないので、場面や行動から何を感じているかを読み取る力が問われます。授業では、たとえば「少年は下唇を噛んだ」という1文があれば、悔しかったのか、我慢していたのかなど、少年の感情を必ず問いかけます。生徒の読みと私の読みを照らし合わせながら考え方に気付いてもらう。そうした積み重ねで、次第に自分でも心情を理解できるようになっていくのです。

田村先生:小説に苦手意識をもつ生徒には、わからないことがあっても、わからないまま読み進めて良い、わからないことを受け入れながら読むことが小説なのだと伝えています。授業では、その問題文だけでも興味をもってもらえるように、とにかく面白いと感じてもらうことを意識して工夫をしています

復習しやすく、学んだことが次につながるオリジナルテキストで、「何が問われているのか」がわかるようになる

--リスニングは年々難化していると聞きます。対策についてはどのような指導をしていますか。

田村先生:リスニング演習は授業でももちろん行いますが、それ以上に重視しているのは「毎日英語を聞く習慣」です。問題を解くのは週に1~2回でも構いませんが、日本語に囲まれた環境では、英語の音から意味を取る感覚が1日休むだけでも鈍り、取り戻すのに時間がかかります。毎日聞き続けることが、リスニング力の土台になります。

木下先生:京大志向が強い関西では、京大の個別試験にリスニングがないこともあって学校現場でも軽視されがちです。しかし、東大のリスニングは単に音を聞き取るだけの問題ではありません。東大が求めるのは、問題文を先読みして問われているポイントを頭に入れ、聞いた内容を整理し、「何が言いたいのか」を素早くつかむ力です。つまり、読解や要約にも直結する力であり、リスニング対策はすべての力の底あげにつながると伝えています。

--ここまで伺った要約・小説の読解・リスニングの指導には、共通する考え方があるように感じます。

田村先生:すべてに通底しているのは、「本番で崩れない力」をどう育てるかということです。今、お話ししたように、東大英語はパターン暗記やテクニック頼みの力だと、想定外の出題に直面した瞬間にあっけなく崩れます。しかし、「何が問われているのか」を自分で見抜ける力が身に付いていれば、初めて見る問題にも冷静に対応できます。

木下先生:河合塾のカリキュラムでは、さまざまな出題形式に段階的に取り組んでいきますが、そのすべてが「出題の意図を自分で考え、判断する」という思考の軸をつくるための訓練です。その軸があるからこそ、本番でどんな問題が出ても動揺せず、もっている力を出し切ることができる。「本番で崩れない」とは、特別なテクニックではなく、どんな状況でも揺るがない思考の土台ができているということなのだと思います。

「まず走り始める」伸びる生徒がもつ知的行動力

--東大に合格する生徒、伸びる生徒にはどのような特徴がありますか。

木下先生:「この問題で何の力を身に付けるのか」を俯瞰でき、講師が伝えたいことを理解しながら学べる生徒は伸びます。このタイプは、高3から本格的に受験勉強を始めても最後にぐっと伸びることが多いです。一方で、問題を数多くこなしていても、表面的な解き方だけを追いかける生徒は最後に伸び悩む傾向がありますね。もちろん生徒自身の資質もありますが、何を学ぶための問題なのかという本質を伝えられる講師の存在も重要です。

田村先生: 伸びる生徒に共通しているのは、柔軟性と行動力です。1つのやり方に固執せず、別の方法にも気軽に挑戦できる。たとえば自由英作文でも、「自分は賛成だから賛成意見しか書かない」のではなく、「反対の立場ならどう考えるだろう」と視点を変えて書いてみる。そうした発想が新しい発見につながります。逆に伸び悩む生徒は、教材でも授業でもあれこれと手を出し、1つのことに腰を据えられない傾向があります。

 よく「ジョギングを始めようと思いながら、2か月間シューズ選びだけをしている人」に例えるのですが、大切なのはまず走り始めることです。覚悟を決めたら素直に行動に移す。私はこれを「知的行動力」と呼んでいますが、東大を目指すうえで欠かせない力だと思います。

覚悟を決めたら素直に行動に移す「知的行動力」は東大を目指すうえで欠かせない力

--映像授業やAI学習の時代に、対面授業を受ける意味はどこにあるのでしょうか。

木下先生:まずは対面授業ならではの臨場感ですね。言葉だけでなく、講師の表情や間の取り方、教室の空気まで含めて伝わることで、初めて理解できることがあります。

 もう1つは双方向性です。映像授業やAI学習にもメリットはありますが、一方通行になりやすく、自分の思考のずれや勘違いに気付きにくい面があります。対面授業では講師とのやり取りを通じて、その場で考え方を修正できます。東大英語では「何を考え、どう答えを導くか」が重要ですから、この双方向性には大きな価値があると思います。

田村先生:3つ目をあげるとすると、同じ東大を目指すライバルの思考に触れられることだと思います。私の授業では、前週に提出してもらった自由英作文や要約の答案を匿名で配布し、「ここはよく書けている」「後半で論点がずれている」「この表現ではこう書くと良い」といった検討会を行っています。自分では思いつかないような答案を書くライバルがいる。その頭の中をのぞくような経験ができることも、対面授業ならではの価値だと感じています。

講師と生徒の距離の近さが東大合格の追い風になる

--授業以外も含め、生徒とはどのようなコミュニケーションを心掛けていますか。

木下先生:生徒によって求めていることはさまざまです。添削を細かく見てほしい生徒もいれば、勉強だけでなく受験の不安を相談したい生徒もいる。だからこそ、ひとりひとりが何を求めているかを受け止め、「この先生は話を聞いてくれる」と感じてもらえる信頼関係を築くことを大切にしています。

 授業後は気軽に質問に来てもらっていますし、ほぼ個別指導のような距離感で接しています。こうしていると、生徒の授業への向き合い方も自ずと変わってくるものです。

田村先生:現役生の自由英作文は熟練の添削者が担当していますが、私は添削済みの答案を1枚1枚確認し、コメントを書いてくれた生徒には個別に返事をしています。手間はかかりますが、こうしたやり取りを続けていると、学習の悩みや相談も自然と寄せられるようになります。また、状況に応じて面談も行い、模試や過去問の答案を一緒に分析しながら、今後の学習方針をアドバイスしています。そうした積み重ねが成績の大きな伸びにつながり、東大合格を勝ち取った生徒もいました。

 大手の予備校というと面倒見が良くないのではないかと思われるかもしれませんが、実は我々講師と生徒の距離はかなり近いと思っていただいて良いと思います。

--東大を目指す受験生と保護者にメッセージをお願いします。

田村先生:受験生にも保護者の方にもお伝えしたいのは、簡単に諦めないでほしいということです。模試の成績が悪かったとしても、それはあくまで通過点に過ぎません。力は少しずつ積みあげていくもの。私たちも毎週の授業を通して、伸びるきっかけを与え続けています。ですから、「いつか必ず伸びる」と信じて取り組んでいただきたいですね。

木下先生:私は東大を目指すこと自体に大きな価値があると思っています。東大英語のエッセンスを学ぶことは、受験のためだけではなく、思考力や判断力、表現力などさまざまな力を養うことにつながります。それは、大学受験はもちろん、その先の人生においても大きな財産になるはずです。日本最難関の入試に挑戦しようとすることは偉大な決断です。ですから、受験生の皆さんも保護者の方も、ぜひそのことに自信と誇りをもち、最後まで諦めずに頑張ってください。

--ありがとうございました。


 今回の取材を通して印象的だったのは、河合塾が「解き方」ではなく、「東大が何を問おうとしているのか」という考え方そのものを教えていることだ。その力は東大合格だけでなく、大学や社会で求められる思考力やコミュニケーション力にもつながる。東大を目指す過程そのものが、受験を越えた大きな財産になると感じた。

河合塾の難関大対策 東京大学をめざす

《木村りこ》

【注目の記事】

この記事の写真

/

特集