【e-Learning Korea 総括】デジタル教科書、スマート教室に学生や主婦の見学も目立つ
「スマートラーニング、スマートな世界」をテーマに、9月6日から8日まで韓国ソウル市にあるCOEX展示場で「e-Learning Korea 2011」が開催された。
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eラーニング、ユビキタスラーニングから進化した「スマートラーニング」の各種サービス・コンテンツを体験できる展示会と、国際カンファレンス、教育アプリケーション公募授賞式、教育サービス輸出商談会などのイベントが同時開催された。展示会には10か国97の企業が参加し、2万3,000人が参観した。
◆新しい教育システムにかける期待の高さ
この展示会は韓国の文部科学省にあたる教育科学技術部、経済産業省にあたる知識経済部、コンテンツ産業を担当している文化体育観光部、外務省にあたる外交通商部の4つの省庁が共同主催した。韓国のスマートラーニング、新しい教育システムにかける期待がたいへん高いことがわかる。初日から国会議員や関連省庁の公務員が団体で視察をする様子も見られた。小中高生の見学も多く、デジタル教科書や英語教育関連の展示に釘付けになっている教育ママも多く見かけた。
韓国は去る7月、国家政策として2014年から小中学校で、2015年からは高校でもデジタル教科書を使う「スマート教育推進戦略」を発表しているだけに、今年の展示会は「デジタル教科書」「デジタル教室」「スマートデバイスを活用した教育」に焦点が当てられた。
◆デジタル教室&デジタル教科書の公開授業
教育科学技術部と仁川市教育庁の支援により、会場では2009年からデジタル教科書実証実験校に指定されているトンマク小学校の先生と6年生の児童が、展示場内にあるデジタル教室でデジタル教科書を使った公開授業を行った。
児童は学校ではHPのタッチ式ノートパソコンを使うが、この日はサムスンの最新タブレットPCであるGalaxyTab10.1を使った。デジタル教科書を見ながら先生の説明を聞き、デジタル教科書の中にある問題を解いて、授業中にパワーポイントでテキストと画像を編集して授業のテーマに合わせて発表資料を作り、電子黒板を使ってみんなの前で発表する、というところを見せてくれた。
5年生の時からデジタル教科書を使っているという6年生の子ども達は、慣れた様子でタブレットPCを使いこなし、デジタル教科書にタッチしながら先生の説明を聞き、ネットを検索して発表資料を作成して電子黒板に送信したりと、自由自在。
筆者の質問にも一つ聞けば十を答えてくれるほど賢くて、「学校で使っているタッチ式のノートパソコンよりもタブレットPCの方がさくさく動いて画面もきれいだし使いやすい」「デジタル教科書なんてネットが使える人なら誰でも使える。難しいことなんて何もない」「画像や動画を見ながら授業できるし、わからない言葉はすぐ検索できるからすごく便利。ノート機能もあるからタッチペンで記録することもできるし、家からは教育庁のサイトにアクセスして予習復習もできるし、デジタル教科書の方が好き」と、色々な話をしてくれた。
◆恊働するゲーム
このほかに、パソコンや情報化設備を施して壁がガラスになったり電子黒板になったりするマジックガラス、改定されたデジタル教科書の中身、教育クラウドコンピューティング、子ども達が学校で休み時間に利用できる、グループでしかできないタッチパネルゲームも展示された。
「グループでしかできないゲーム」とは、タッチパネルの画面に足し算、掛け算の問題が出され、その答えの数だけ指を画面にタッチさせないといけない。一人では遊べない、みんなでわいわい騒げる楽しいゲームだった。
◆教育クラウド
教育クラウドコンピューティングは、教師向けのクラウドは学校でも外でも校務を行い授業準備ができる段階までになったが、児童・生徒と保護者向けのクラウドは未だ完成していない。完成すれば子ども達は授業中の筆記やメモまでもクラウドに保存して、教科書はもちろんノートを持ち歩かなくても家庭で予習復習ができ、保護者はどこにいてもインターネットがつながる場所であればログインして我が子の学校生活や先生からの連絡事項、成績表などを確認できるようになる。
現在はパソコンから子どもの学校生活と連絡事項、成績などを確認できるが、これをスマートフォンやタブレットPCからも利用できるようにして、保護者の意見を聞いて確認できる項目も増やしていくという。
◆授業がマンネリを防ぐ監視カメラ
会場でもっとも展示が多かったのがFuture-School、Smart-Campusのコーナーで、電子黒板と電子教卓、教科書の内容を3D映像に変換した学習コンテンツ、英語教育用アプリケーションであった。eラーニング用の映像を簡単に作れるソリューションと映像装備の展示も多かった。映像を録画しながらWebとモバイル向けに同時に配信できソリューションと、教師のための「生徒管理カメラ」と「講師追跡カメラ」が注目された。
「生徒管理カメラ」のサンプルで見せてくれたのは実際の高校の授業を教室の前と後ろから撮影したもので、生徒達がつまらなさそうにしている様子が生々しく映っている。これは教師のための動画で、学生が授業にまったく集中していない様子を動画で確認し、教師が自分の授業法を見直して改善するために使われているという。このシステムを教師や生徒を監視するためというよりは、教師の授業がマンネリ化するのを防ぐために導入する中学・高校が増えているという。
韓国では教師になるのも至難の業だが、教師になってからも生徒や保護者から授業内容を評価され、評価が低ければ研修行きとなる。これも教育熱の高い韓国ならではの風景かもしれない。
「講師追跡カメラ」は自動的にカメラが講師を追跡して動画を録画することで、撮影するカメラマンがいなくてもeラーニング用の動画が作れるというものである。
◆教師と生徒が情報共有できるスマートデジタルペン
タブレットPCに筆記した内容をリアルタイムで教師と生徒が共有するスマートデジタルペンも面白い。教卓にある先生用のPCから学生達がどのような内容を筆記しているのかをチェックできるので、理解して筆記しているのか、筆記するふりをして他のことをしているのか、一目でわかるようになっている。
中高生になると、授業中に先生が黒板に書いたことを書き写すのに精いっぱいで先生の話に集中できなかったということもある。電子黒板とタブレットPCをつなげて、書き写さなくても先生の板書が学生の画面に表示されるようにしたデジタル教室・デジタル参考書の展示も面白かった。
◆SKとサムスンはスマートラーニングを展示
携帯電話加入者数1位のキャリア「SKテレコム」とサムスン系列のeラーニング・研修会社「サムスンSDS」もスマートラーニング関連サービスを展示した。
SKテレコムは「Tスマートラーニング」というアプリケーションを紹介していた。スマートフォンとタブレットPCから利用できるデジタル参考書が出版社別・科目別に登録されている。ユーザーは自分で学習目標を立てて自主的に参考書を使って勉強し、理解できないところがあればアプリケーションの中で質問もできるようになっている。間違えた問題だけ自動的に集めてもう一度解くようにしたり、教育用ゲームで勉強に興味を持つようにしたりと、付加サービスも随時追加されている。
ラーニングマネージメントシステムを導入して、ユーザーの学力や学習パターンを分析してプランを立ててあげたり、計画通りに学習しないとアラームを鳴らしたりという機能もある。保護者向けの画面からは子供の学習状況をリアルタイムで確認できるだけでなく、入試・留学情報も提供してもらえるので、子どもにどう教えたらいいのか教育ガイドの役割もしてくれるという優れ物。費用は1科目当たり月26,000ウォン(約1,730円)である。
サムスンSDSは企業の社員研修向けスマートラーニングがメインで、GalaxyTabやスマートフォンを使っていつでもどこでも研修が受けられるソリューションとコンテンツを紹介した。
省庁の知識経済部は社会人向けスマートラーニングとして、高費用・高危険のトレーニングを、ロボットを使ってより安い費用で安全にできるトレーニングシステム、脳波測定で集中度をチェックできるトレーニングシステムなどを展示した。
◆一緒に学ぶインタラクティブな授業へ変化
eラーニング国際カンファレンスでは「New Directions for Educational Innovation」をテーマに、ソーシャルメディアを活用して学習者が協業することでクリエイティブな思考を広げていく「ソーシャルラーニング」、「21世紀に必要なスマート教育の必要性と推進方向」、「IT技術発展と教師の授業法変化に関する国際比較」を紹介する発表が行われた。研究結果によると、シンガポール、アメリカ、イギリスでは、「教える授業」から教師と学生がIT技術を活用して「一緒に学ぶインタラクティブな授業」へと変化しているという。
カンファレンスでは、会場から携帯電話のSMS(ショートメッセージ)で質問を受け付けパネルに答えてもらうなど、教育とICTをめぐる議論が活発に行われた。
36か国が参加している、アジアと中南米の地域間の協力と相互理解のための政府協議会FEALAC(Forum for East Asia and Latin America Cooperation)も開催され、eラーニングを通じた教育イノベーション、東アジアと中南米のeラーニング協力方案を議論した。
◆教育用モバイルアプリケーションアイデア授賞式
会場では教育科学技術部・仁川市教育庁・韓国教育学術情報院などが共同主催した「教育用モバイルアプリケーションアイデア公募」の授賞式も行われた。
小学校教師が企画した「スマートフォン通信簿」が最優秀賞を、高校教師が企画した先輩と後輩を1対1でつなげ個別にアドバイスしてもらえるようにした「学習プランナー」が優秀賞を受賞した。高校生、大学生も応募し、歴史科目を覚えやすくするアプリケーションやCEOになって会社を経営するシミュレーションゲームが優秀賞に選ばれた。
公募には保護者部門もあり、最優秀賞は「愛の百科事典」、優秀賞は授業中誰が発表するかを選ぶ「発表者選定アプリケーション」が選ばれた。保護者も子どもの教育のために必要なアプリケーションは何かアイデアを考え、公募に参加しているところは素晴らしいと思う。
ここまで紹介してもまだまだ展示の一部に過ぎない。次回は教育ママ達のブログで話題になった展示を中心に紹介する。
《趙 章恩》
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