【EDIX】デジタル教科書の普及に拍車…慶應 中村伊知哉教授
学校におけるIT化は着実に進んでいる。授業にPCを使う、タブレットを使う、校務をIT化する、クラウド利用を進めるといった動きは、メディアでの露出を含め少しずつつ身近な存在となっているのではないだろうか。
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デジタル教科書に関する学校や政府の取り組みはどうなっているのかーー教育ITソリューションEXPO(EDIX)で慶應義塾大学 メディアデザイン研究科 中村伊知哉教授による講演が行われた。中村教授は、デジタル教科書教材協議会(DiTT)の副会長を務めるほか、内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会会長をはじめ、総務省、文部科学省の関連委員会の委員としても活動している。
政府は全体の情報化政策の中で、2020年までにすべての小中学校にデジタル教科書を普及させる計画を進めているが、DiTTでも独自の提言を行いそれを2015年までとするプランを立てているという。中村教授によれば、DiTTは2015年までに1,000万台の情報端末を学校に普及させ、超高速無線LAN環境の整備率100%、全教科のデジタル教科書および教材を用意する(すべてをデジタルにするわけではない)ことを目標に掲げ、さまざまな作業部会が、独自の実証実験や政府への提言などを行っているとした。
その中で、中村教授は、デジタル教科書への官民の取り組みは一定の成果が表れているとする。文科省と総務省の共同プロジェクトであるフューチャースクールやDiTTが展開する13の実証校による研究結果から、実際に導入した学校は大きな混乱や問題もなく成果を上げていることがわかってきたからだ。よく、学校の先生が使いこなせないのではないか、授業スタイルの変化についていけない生徒や先生がでるのではないか、といった懸念を耳にするが、実証実験の結果からはその心配はほとんどなかった。
たとえば、ICTを使って指導ができる教員の割合についての調査では、導入前に半分程度だったものが、導入年度、2年目で70~80%前後まで高まっている。また、児童・生徒からの評価も、授業が「たのしい」「わかりやすい」などのモチベーションに関する項目で高いポイント(90%以上)を得ているそうだ。
「実証実験が複数年に及び、実際にはICT導入による混乱や格差は問題視されるほど起きていません。学校や先生方は心配する必要はないと思います。逆に、先生にはデジタル教科書では教えられないだろう、などという意見には、先生方はもっと怒ってもよいと思います。」(中村教授)」
成果を強調しつつも、これらの調査からは、児童・生徒の思考能力や表現力を高めるといった項目の評価があまり高くない(50~60%)といった問題も指摘された。表現力などは、今後の国際化社会においては重要スキルである。また、フューチャースクールなどでは、新しい設計の電子教材について、内田洋行やインテルなどの企業の協力によって研究開発も進められている。この活動では、標準化すべきインターフェイスなどが見えてきているという。
DiTTは主にデジタル教科書等の関連企業によって組織されているが、今後は先生方とのコミュニケーションや情報共有を支援したいとして、財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)、社団法人日本教育工学振興会(JAPET)と共同でTEC(Teacher's Educational Community)という組織を立ち上げている。
以上のような成果については、DiTTとして6月には報告書の形でさらに詳しく発表する予定だそうだ。
今回の講演では、もうひとつ大きな動きについて発表された。DiTTとしては、与党、野党ともに提言を行ったり政策について議論をしたり、積極的なロビー活動も行っている。そのひとつに「デジタル教科書実現のための制度改正」という取り組みがある。
これは、現行法ではデジタル教科書は法的に根拠のある「教科書」(教科用図書)に含まれないため、コンテンツの開発や普及の妨げになっているという点を是正しようという取り組みだ。教科書は、著作権法上の特例措置が認められており、一定の条件を満たせば著作物の利用をしやすくなっている(無条件にできるわけではない)。デジタル教科書は、通常の教材や書籍等と同じ扱いなので、使用許諾処理が煩雑となる。あるデジタル教材では、銀閣寺の写真は掲載できても金閣寺の写真が掲載できないといった問題が起きたりする。
冒頭に示したように、中村教授は内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会にも名を連ねている。この調査会において、「デジタル教科書等の活用の実証研究を進めるとともに、その状況を踏まえつつ、デジタル教科書・教材の法的な位置づけ、教科書の検定制度と合わせて著作権制度上の課題を検討する。」という指針が発表されたことも紹介した。
これは、文科省や総務省が法改正を含めた取り組みに大きく舵を切ったということである。もちろん法改正までにはまだ何ステップも必要だが、中村教授によれば「知財計画2012」にこの指針が盛り込まれる可能性が高まったという。
中村教授は指針の中の「その状況を踏まえつつ」の表現にも注目する。これは、実証実験も続けながら、法律や制度の検討も始めるということである。「実証実験の結果を踏まえて」という表現ならば、実験の終了まで待たなければならないが、今回の指針ではそれが同時進行するということを意味する。
続けて中村教授は、「法制度や検定に関する発言や提言は、民間企業にとってはタブーといっていいくらい非常に扱いにくい問題です。それを省庁の側から指針が発表されたことは業界にとって大きな前進であり、ようやくここまできたか、という思いです。」と述べ、今後のデジタル教科書・教材の普及に拍車がかかることを期待し、講演を終えた。
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