「授業力をつけよう!」JEESが若手教師を支援…第1回教育シンポジウム
全国初等教育研究会(JEES)は6月2日、「授業力をつけよう、若手教師たち!」と題した第1回教育シンポジウムを開催した。若手教師へのスキル伝達や多方面との情報共有などの方策を考える。
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堀田氏は、まず義務教育現場の現状として、たとえば発達障害を持つ児童が普通教室に6.5%存在するという統計や、現在の年齢構成でピークである50代の教師が定年になるまでに、ベテラン教師のスキルやノウハウの伝承が課題になっている問題などを提起した。また、文科省が実施する全国学力・学習状況調査を分析すると、たとえば図書館の利用率の高い学校、私語の少ない学校などの学習規律の項目と、学力テストの学校別の正答率に相関があり、またこれらを改善することで学力向上が見られた学校があることがわかるという。
では、若手が効果的な授業を展開するにはどうすればよいのか。堀田氏は、現行法において義務教育では、教科用図書を使用する必要があり、それに対応した授業を展開するには、ベテランから学ぶなど実践の中でのスキルアップが重要だと述べる。そのうえで、各種勉強会への参加のほかに、ドリルや補助教材の活用も有効であるとした。堀田氏は独自のリーフレットを作成し、若手にドリルや問題集の効果的な使い方を発信する活動も行っている。
◆先人の財産を受け継ぎ、新しい学校を作る…藤川教授
藤川氏は、若い人が先輩やベテランの方法を受け継ぐことの重要性を認めながら、その一方で、変化の激しい現代社会においては、若い人が新しい学校や授業を作っていく取組みも必要ではないかと述べる。授業によっては、教科書の内容がどんどん古くなっていくこともある。現代においては、社会が変わることを前提とした授業というものも考えなければならないかもしれないとする。
子どもたちには、「(これをやるのは)自分のためだから」と教えているかもしれない。しかし、「自分のためならやらなくてもいいや」と思ってしまう子もいる。ならば逆に「人のためになるから、社会のためになるから」という教え方もあるだろうという。そう考えることで、集団での問題解決や社会とのつながりを意識させ、個々の子どもの特性を活かした学習につなげたいという。
藤川氏は、若い教師たちの研究を支援し、現職の教師たちが学べる場を作る活動も行っている。教師たちの財産継承の場として「明日の教室」という勉強会を毎月開催しているそうだ。また、新しい授業を作るという面では、社会とのつながりを持ってほしいとの希望から、地域や学校以外との交流を進めている。
藤川氏はさらに、国が学校の制度を変えるといった政策はどれもうまくいっていなく、問題解決を国に期待してはいけないとし、「自分たちが社会を変えていく、学校を変えていく必要がある」と若手にエールを贈った。
◆20代教員の参加者も多く、若手のスキルアップ意向は高い
終了後、20代の若手教師に、シンポジウムの感想を聞いた。多摩地域の小学校で3年目という女性教師は、「自分でも授業力をつけたいと思って参加しました。自分の学校も若い先生が多いので勉強になりました。」と語ってくれた。世田谷区の小学校から5名で参加した男女のグループからは、「校内に自主研のグループがあり、その活動として参加しました。」「授業に取り組む姿勢を勉強させてもらいました。」といった意見が聞かれた。
主催者によれば、こうしたシンポジウムは年に1回程度の開催になるだろうとしつつも、個別のセミナーや実践的な研究会などで現場を支援していきたいとのことだ。今回、第1回目のシンポジウムにもかかわらず、北海道から九州までの広い地域から、定員を大幅に上回る約300名の参加者が集まった。下村博文 文部科学大臣からの祝電も披露され、JEESの取組みへの期待の高さが伺えた。
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