大学におけるバリアフリー、東大に学ぶ効果的支援の在り方
東京大学情報学環福武ホールにてバリアフリーシンポジウムが開催された。テーマは「高等教育機関における機会均等への挑戦-バリアフリーの東京大学は実現したか-」、東大内の支援担当者および障害をかかえる卒業生が意見交換を行った。
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
◆障害をかかえる卒業生の主張、「健常」者が「障害」者に向き合う姿勢に疑問
シンポジウムでは下肢や聴覚に障害をかかえる卒業生らが登壇し、自らの主張を述べた。家電メーカーにてソフトウェア開発を担う栗田光晴氏は、教育現場に限らず、そもそも「健常」者が「障害」者に向き合う姿勢について疑問をなげかける。
映画「I am Sam」に代表されるように、映画やドラマ、ドキュメンタリー番組で障害者が主人公となり困難を超えていくストーリーは多数あると栗田氏は主張。その一方で、ごく普通に、たとえば主人公の家族や友人として障害者が登場することは稀だと指摘する。
普段の生活における困難、障害者としてスポットライトを当てられた後の生活、生計の立て方など、障害者が抱える生々しい現実の苦難の部分は直視されていないと栗田氏は語る。結局は「感動の作り手としてしか自分たちのことを見ていないのでは」と疑問をなげかけた。
その一方で、東京大学で支援コーディネーターを務める中津真美氏(バリアフリー支援室特任専門職員)は、障害のある学生・教職員に対して社会が築いているバリアこそが問題だと強調。障害者支援ではなく「バリアフリー」という理念が必要だとし、まずは「健常」者側が何気なく持っている「障害」者への認識を改めるべきだと呼びかけた。
◆法定雇用率だけでなく、能力発揮も追求したい
それでは大学における「バリアフリー」とはどのように推進されるべきなのだろうか。どのような組織体制を整えるべきなのだろうか。
東大のバリアフリー支援室長を務める丹下健氏(農学生命科学研究科教授)は過去10年間の活動を振り返り、これまで課題として設定してきた事項については概ね対応してきたとコメントした上で、今後の新たな検討課題を3つを掲げた。
1つは「障害者雇用の“方針”の確立」だ。丹下氏は「数字面での法定雇用率をクリアするだけでなく“能力をきちんと発揮できているか”に着目することが必要」だと強調。2つ目は「施設改善における障害のある学生・教職員の意見を反映させた空間デザインの確立」。歴史的景観を保ちながらも、ユニバーサルデザインなどを取り入れた設計とのバランスの必要性を説いた。
《北原梨津子》
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