日本人初、教育界の「ノーベル賞」トップ50に選出…工学院附属が喜びの声

 英国の非営利教育団体Varkey Foundation(バーキー財団、バーキ基金)は12月9日、国際的な教諭トップ50を選出する「The 2016 Global Teacher Prize Top 50」を発表した。日本人のトップ50入りは初めて。

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Varkey Foundation「the 2016 Global Teacher Prize Top 50」
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 英国の非営利教育団体Varkey Foundation(バーキー財団、バーキ基金)は12月9日、国際的な教諭トップ50を選出する「The 2016 Global Teacher Prize Top 50」を発表した。選出された全148か国の教諭のうち、トップ50名のファイナリストに高橋一也氏が選ばれた。日本人のトップ50入りは初めて。

 「Global Teacher Prize(グローバル・ティーチャー賞)」は、英国の非営利教育団体であるバーキー財団が設立した国際的な賞。教育分野で優れた功績を残した教諭を表彰するもので、12月9日には設立から第2回目となる2016年の「The 2016 Global Teacher Prize Top 50」を発表した。評価対象は世界148か国、約8,000名の教諭。

 2年目の発表を迎えるにあたり、バーキー財団はこのグローバル・ティーチャー賞を「教育会の『ノーベル賞』」と称した。また、教諭・教師・先生を表彰する賞では世界でもっとも大規模な賞であるという。トップ50に選ばれた候補者は今後最終的に10名に絞られ、インタビュー応答やメディア出演を行い、自らの教育活動の普及や全世界で教務に携わる教員イメージの向上に努める。なお、優勝者には約1億円の賞金がおくられる予定。

 グローバル・ティーチャー賞2016トップ50に選ばれた教諭のうち、日本人では工学院附属中学校・高等学校の高橋一也氏がノミネートされた。高橋氏は工学院附属中学校英語科教諭で、同校が2015年度に新設したハイブリッドインターナショナルクラス1年C組の担任。

 バーキー財団Webサイトによると、高橋氏の評価ポイントは人間とチンパンジーの言語比較研究や、生徒たちの創造性を育む「LEGO」を利用した指導法、そして高校生からソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)を輩出しようとする取組みやグローバル人材の育成に取組んでいる点にある。

 工学院附属中学校Webサイトによると、高橋氏は効果的な教育法の確立を目指し、生徒らに通常の授業を行う傍ら実践研究や校内・外でも教育法を教え広めるなど、精力的に活動を行っているようす。グローバル・ティーチャー賞トップ50のWebサイトでは、高橋氏ほか選出された50名の経歴や活動内容、直接情報を取得できるTwitterアカウントなどを紹介している。

 教員育成で「教室から、社会を変える」をコンセプトに、子どもたちの学習環境の向上や若者たちのリーダーシップの育成を目的に活動している非営利組織「Teach for Japan(TFJ)」代表の松田悠介氏はグローバル・ティーチャー賞に関し、「高橋先生の受賞は喜ばしいこと」「(この賞は)じわじわと浸透してくると思います」とコメント。学力向上のみを評価基準に入れているわけではなく、コミュニティ性や多様性を育む教育の推進や教員同士の連携、社会的地位の向上に貢献した度合いなどを重要視している点が印象的であると分析した。

 また、グローバル・ティーチャー賞の目的の半分以上を占めるのは「教職員の地位向上」であることを指摘し、この賞の目的を理解し、励みとしながら「(全国の)教員自身が自分たちの社会的地位を向上するために、周りの同僚と連携してコミュニティを巻き込みながらアドボカシーをしていくことに期待しています」と述べた。松田氏は、来年度は本年度から始めた「教師の日(Japan Teachers' Week)」運動にも絡ませながら、さらに国内の普及活動にも貢献していきたいと語る。

 高橋氏の選出を受け、工学院大学附属中学校や「21世紀型教育を創る会」は公式ブログで喜びの声を発表。バーキー財団は、このグローバル・ティーチャー賞が普及することで、将来は「教師になりたい」と願う子どもが増えればとコメントしている。優勝者は、2016年3月にドバイで開催される「The Global Education and Skills Forum」で発表される予定。

 まだ2回目の実施であるため知名度が特別高くないことも予想されるグローバル・ティーチャー賞であるが、高橋氏の選出や賞の浸透で教員の地位向上や子どもたちの教育がより良いものとなるよう、今後の動向を見守っていきたい。

《佐藤亜希》

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