「感謝の気持ちでいっぱい」生徒会主催のビジネスコンテスト、聖光学院Innovation CUP
横浜市の聖光学院中学校高等学校で1月20日、高校生のためのビジネスコンテスト「Seiko Innovation CUP」の決勝大会が開催された。主催は同校の生徒会。審査員はライフイズテック代表取締役CEOの水野雄介氏ら3名が担当した。
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
生徒会主催の同校生徒(中学生・高校生)を対象に行われたコンテストだが、66チーム、267人の応募があったという。応募作品も粒ぞろいだったといい、最終的に4チームが決勝に残り、この日の最終審査で優勝が決まる。生徒会が手配したプロの審査員も、選考に大いに頭を悩ませた決勝となった。
審査員は、ライフイズテック代表取締役CEOの水野雄介氏、500 Startups Japanマネージングパートナーの澤山陽平氏、エイチ・アイ・エス取締役・相談役の行方一正氏の3名。決勝大会に残ったチームと発表内容は以下の通りだ。
1、R(リーマン)TWINS:高校1年生
「青少年の自殺を減らすシステム」
2、行くぜ!爽健美茶:中学3年生
「可能性は無限大!変幻自在のコレクションケース」
3、N-sos委員会:中学2年生
「旅行時の緊急トラブルの解決」
4、MLE:高校1年生
「中高生の放課後を変える!」
R TWINSのビジネスプランは、青少年の自殺問題に対応するため、特別な研修を受けた心理学の専門家や元教師を学校に派遣するという事業。彼らの調査では、悩みを抱えた青少年は、NPOや病院に相談することがあるが、医療的な対処に終始しがちという問題があるという。悩みの原因や改善策など包括的な対策がとれるような人材で、青少年の自殺を少しでも減らそうというものだ。
行くぜ!爽健美茶は、マグネット式で立体、立方体を作ることができる透明なプラスティック板「マグ・ディスプレイ」の発明を発表した。正方形、正三角形などの透明プラスティックをエッジ部分で接続し、立体を作り、中にプラモデルやフィギュアを入れて飾ることができる。組み合わせや拡張は自在だ。発表では、クラウドファンディングサイトにそのままアップできそうなCG動画、製品の原価計算、販売計画も練られた事業プランも披露された。
N-sos委員会は、訪日外国人向けのトラブル解決サイトのアイデアだ。利用者が投稿しあうCGM系のサービスとの違いは、旅行者のために解決までの時間を設定できること。報酬をやりとりできる機能を実装しており、サイト運営と回答者のマネタイズが可能な点も特徴だ。アプリから音声通話も可能なテレフォニー機能も実装している。これにはエイチ・アイ・エスの行方氏が非常に興味を示していた。
最後のMLEは、友人と遊ぶ時のお小遣いを有効に活用するにはどうすればいいか、という問題を解決するため、カラオケの比較サイトを考えた。校内のアンケートでは放課後の過ごし方でカラオケで遊ぶ回答が多かったことから、少しでも安い店、穴場情報をまとめ、地図案内、料金表などが検索できるサイトにニーズがあると踏んだからだ。情報は、投稿ではなくスタッフが収集するスタイルで、手間がかかるが、お店との交渉でクーポンや送客ビジネスまで考えられている。実際に調査したあるチェーン店では、コンテストサイトでありながら、実際にクーポンを発行してくれたそうだ。
発表後の質疑応答でも、審査員からは「いくらあればこの事業をスタートできるのか。起業家と話をするときこの視点は重要」「このサービスは地域別より高校ごとのユーザーをターゲットにしたほうがよい」など、さながら本物の投資家とベンチャーのマッチングイベントのような光景が見られた。
最終的な審査の結果、優勝はカラオケの比較情報サイトを発表したMLEが手にした。審査員特別賞として、ライフイズテックからはいくぜ!爽健美茶のマグ・ディスプレイ、500 Startups JapanからはN-sosの旅行トラブル解決アプリ、エイチ・アイ・エスからはR TWINSの自殺防止策に賞状と、各企業からの記念品が贈られた。
審査員を務めた水野氏は、最後にイベントの総評として次のように語った。
「このような取り組みは、おそらく日本の学校の中でもっとも先行しているのではないか。アメリカでは一番できる学生は起業し、2番目はベンチャーに入り、3番目が大企業に入るといわれている。起業は楽しいもの。このイベントのように仲間とできる活動を通じて高い志を持ち続けてほしい。」
イベント終了後、生徒会長の瓜阪竜也さんに、なぜこのようなイベントを企画したのかを聞いたところ、中学から高校に進級するときの春休みに、学校主催のベンチャー企業視察ツアーに参加したことがきっかけだそうだ。次の夏休みには企業のインターンを経験し、ビジネスコンテストにも参加した。このような経験から、聖光学院でもコンテストができないかと考え、Innovation CUPを準備したという。
大会を終えて率直な今の感想は、と聞くと、瓜阪さんは「感動しました。昨年の5月くらいから企画を準備してきましたが、生徒会や各委員長の協力があり、イベントを実現させることができました。感謝の気持ちでいっぱいです。そして、高校生のイベントを世の中に発信できるインパクトも感じられたのもよかった。」と答えてくれた。
来年も開催するか、との質問には、「現在2年生なので、生徒会は引退します。Innovation CUPは続けてほしい本音もありますが、押し付けるようなことはしたくないので、判断は後輩にゆだねます。」と語った。
定例化したイベントは間口やチャンスを広げる意味はあるが、たしかに起業は人に言われてやるようなものではない。瓜阪さんなりの後輩へのメッセージなのだろう。
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