ボローニャ国際児童図書見本市2017、ヨシタケシンスケ氏「もう ぬげない」特別賞…日本が得た3つの大きなトピック

 イタリア・ボローニャで、2017年も世界最大の児童書見本市「ボローニャ国際児童図書見本市(Bologna Children's Book Fair、ボローニャブックフェア)」が開催された。総出展数は75か国1138社におよび、4日間で3万8,000人超が来場した。

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2017年ボローニャ国際児童原画展授賞式では日本人受賞者が全員そろった
2017年ボローニャ国際児童原画展授賞式では日本人受賞者が全員そろった 全 38 枚 拡大写真
 イタリア・ボローニャで、2017年も世界最大の児童書見本市「ボローニャ国際児童図書見本市(Bologna Children's Book Fair、ボローニャブックフェア)」が開催された。2017年の会期は4月3日から6日まで。総出展数は75か国1,138社におよび、4日間で3万8,000人超が来場した。

◆日本からは17社が出展

 世界最古のボローニャ大学や美食で知られる都市、ボローニャ。児童書見本市の開催は、2017年で54回目となる。イタリアをはじめ、欧米諸国や中東、アジアなど、各国の児童書関係者が一堂に会するなか、日本からも17社が出展した。

 福音館書店、偕成社などの児童書各社が自社本の翻訳出版権を売るブースのほか、作家らが共同で自作を紹介するブースも見られた。2016年度は日伊国交樹立150周年にあたり、その一環として在イタリア日本国大使館とJBBY(日本国際児童図書評議会)の共催で開設された日本の絵本紹介ブース「にほんのえほん Visually Speaking:Seeing Japan through Picture Books」もあった。また、幻冬舎と吉本興行が、にしのあきひろ(西野亮廣)氏の著作を並べるブースには、最終日ににしの氏本人の来場もあった。

 30年以上出展を続ける講談社で、約20年見本市スタッフとして参加する烏丸由美氏は話す。「パンダがチューリップやバナナになりきって体操する『パンダなりきりたいそう』(いりやまさとし/講談社)が人気。各国の編集者やイラストレーターが、次々とこの絵本の前で立ち止まります。また、2月に国内で刊行されたばかりの『点字つきさわる絵本 あらしのよるに』(きむらゆういち、あべ弘士/講談社)も好感触です。日本でウケるものが必ずしもそうとは限りませんが、目をひくかわいらしさや画期的な出版物には注目が集まるのでしょう」。実際に、毎年多くの日本の絵本がこの見本市で他国編集者の目に止まり、翻訳出版されている。

 自社本の翻訳権を売る人がいる一方で、未来に国内刊行される児童書を探し求める人もいる。「モチモチの木」(斉藤隆介、滝平二郎/岩崎書店)が知られる岩崎書店でも、自社で紹介の場を出しながら、各国ブースをまわって買い付けを行う。買い付けるのは編集者で、彼らは敷地面積にして東京ドーム約8個分のだだっ広い会場をくまなく歩く。そのため、見本市全体の傾向を肌で知る存在といえる。岩崎書店編集の秋山将一氏は「今年は欧米の出版社を中心に、平和や人権をテーマにした絵本をとてもよく見かけます。アメリカでの新大統領就任に影響を受けた流れでしょう。重要な活躍をした女性を描く絵本、多様な人種の存在に気づかせる絵本なども多い」と述べた。

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《てらしまちはる》

てらしまちはる

ワークショッププランナー/コラムニスト/絵本ワークショップ研究者。東京学芸大学個人研究員。2022年3月に単行本『非認知能力をはぐくむ絵本ガイド180』(秀和システム)を刊行。絵本とワークショップをライフワークとしている。アトリエ游主宰。

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