ここでは、家庭でできる「昆虫標本づくり」の方法をご紹介。自由研究テーマ選定の参考にしていただきたい。
昆虫のからだのしくみを確かめる~自分だけの昆虫標本を作ろう~
第2分野【生物】観察
制作時間:10日 難易度:★★
夏になるとたくさんの昆虫が活発に活動します。では、そのからだのつくりはどうなっているのでしょうか。また、どこに生息しているのでしょうか。昆虫採集と標本づくりから調べてみましょう。
用意するもの
標本箱* 昆虫針 防虫剤 ラベル 甲虫類(カブトムシやクワガタムシなど) 木工用接着剤 発泡スチロールの板
そのほかのもの ピンセット、まち針(数本)
*ダンボール箱や紙でできたお菓子の箱など。
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実験1 やってみよう 大きな甲虫類の標本作り
★手順 全5工程
夏休みに飼育する機会が多くなる、カブトムシやクワガタムシ、カナブンなど比較的大きな昆虫。大切に飼育していても寿命で死んでしまうことがあります。
そのようなときには、飼育した昆虫を標本にして、からだのつくりなどを観察してみましょう。
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ぬるま湯につけて、関節部分をやわらかくする。
※死後時間が経過すると、脚などの関節が固くなります。
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からだを固定するために、胸部に昆虫針をさす。
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脚がやわらかいあいだに、ピンセットやまち針でからだの形を整え、発泡スチロールの板に固定する。その状態で乾燥させる。
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3で固定した昆虫を用意した標本箱に収め、防虫剤を入れる。昆虫の名称や標本箱を作った年月を書いたラベルを標本箱にはる。
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箱の大きさに合わせて、同じ種類の昆虫が複数入った標本箱を作る。
うまくいかないときには
脚がとれたら接着剤で接着する
●お湯につけすぎると、脚がとれてしまうことがあります。とれた場合は、木工用接着剤でとれた部分を接着しましょう。
●標本を長期に保存する場合には、内臓を取り出す必要があるため、専門書で方法を調べましょう。
なぜそうなるの? ~昆こん虫ちゅうのからだのしくみ~
昆虫のからだは頭部・胸部・腹部に分かれている
昆虫類は、節足動物の中のひとつのグループで、名前がついているものは約75万種存在するといわれています。現在、名前がついている生物の種類は約165万種ですから、昆虫の種類がいかに多いかがわかります。
●75万種もいる昆虫
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名前がついている生物の種数は165万種。昆虫のなかまはその半分ほどの種類を占める。
種類は豊富ですが、共通の特徴があります。たとえば、昆虫のからだは3つの部分に分かれています。頭部、胸部、そして腹部です。
頭部には一対の触角と複眼、胸部には3対(6本)の脚と2対(4枚)のはねがついています。脚は多数の節に分かれてよく曲がります。また、昆虫のからだが外骨格といわれる固い組織で守られているのも大きな特徴です。
●昆虫のからだの特徴
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昆虫のからだは3つの部分からできている。これは、昆虫にみられる共通した特徴。
実験2 やってみよう バッタやコオロギのなかまで標本作り
★手順 全3工程
草むらや芝生などで、バッタやコオロギのなかまを探しましょう。
それぞれの場所で5~10匹ずつ採集します。
※多めに採集した昆虫は逃がしましょう。
※昆虫を長期保存する場合は、ピンセットなどで内臓をぬきとる必要があります。
用意するもの
バッタやコオロギのなかま、昆虫針、木工用接着剤、発泡スチロールの板、標本箱*、防虫剤、図鑑
*お菓子の箱でも代用できます。
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ススキなど、イネ科の背の高い草が密集した場所や、芝生など数カ所から、バッタやコオロギを採集する。
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実験1と同様に標本を作る。
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採集したバッタ類、コオロギ類の名前と種類を図鑑で調べる。種類と採集した数を見つけた場所ごとに分け、表にまとめる。
そうなんだ! ~外国から輸入したクワガタムシの影響~
カブトムシやクワガタムシの飼育ブームによって、外国産のカブトムシ、クワガタムシが大量に輸入されています。日本に持ち込まれたこれらの外国の昆虫が国内の生態系に悪い影響を与えています。
いま注目されているのは、何らかの理由で野外に逃げ出した外国産のクワガタムシと日本のクワガタムシとのあいだに生まれた雑種の昆虫です。
この雑種が増えることで、将来、日本在来のクワガタムシがいなくならないか問題になっています。
身近で発見 ~草の種類によってバッタの種類も変わる~
採集した昆虫を場所ごとにみると、草の種類や草のたけが異なると、そこにくらすバッタ類の種類や数がちがうことがわかります。
また草むらには、オンブバッタやショウリョウバッタなどの日本に広く分布するバッタ類と、限られた地域に分布するバッタ類がくらしていることもわかります。
レポートのまとめかた
実験1で、カブトムシを箱に入れる前に真上や真下の姿をスケッチし、レポートにのせましょう。
実験2で、家の近くでバッタが多いところはどこか、地図にまとめましょう。バッタの種類ごとにまとめると、おもしろいレポートになります。
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実験2で、バッタだけでなく草むらのようすも観察しましょう。バッタが見つかった草むらには、どんな種類の草が生えていたのかを地図に書きこみます。
発行:永岡書店
<著者プロフィール:野田 新三(のだ しんぞう)>
1970年大阪生まれ。不思議に思ったことは「自分で確かめたい」という気持ちから、理科に興味を持つ。95年千葉大学大学院教育学研究科を修了後、理科の教諭として教壇に立つ。