ここでは、玩具店で手に入るアクアビーズを使って「分子模型」の作成方法をご紹介。自由研究テーマ選定の参考にしていただきたい。
自由研究:中学生向け 小学生向け
物質の正体について模型で探る~アクアビーズで分子模型を作ろう~
第1分野【科学】観察
制作時間:1日 難易度:★★★★
身の回りの物質はすべて、原子という小さな粒でできています。この粒には約100もの種類があり、その組み合わせによって身の回りのさまざまな物質はできています。原子の集まりの最小単位(分子)の模型を作ってみましょう。
用意するもの
アクアビーズ* アクアビーズトレイ三角** アクアビーズトレイ四角**
そのほかのもの 水、霧吹き***、ピンセット、ビニール袋
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*玩具店や通信販売などで購入できます。
**アクアビーズトレイ三角は三角形に、アクアビーズトレイ四角は正方形に並べやすい。また「アイロンビーズ」のトレイでも代用できます。
***アクアビーズを固めて結びつける方法は、霧吹きを使うのが一般的。くわしくはアクアビーズの説明書で確認しましょう。
実験1 やってみよう 空気の成分を分子模型で再現する
★手順 全5工程
アクアビーズと水を使って、まずは空気の分子模型を作ってみましょう。
実際の原子に色はありませんが、窒素は青、水素は白などと色を決めておくとよいでしょう。
*実際の原子の大きさは、原子の種類によってことなりますが、この実験ではどれも同じ大きさのものとしています。
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アクアビーズトレイ四角にアクアビーズを並べ、水で固める。酸素原子2個、窒素原子2個がそれぞれ結びついた状態で大気中に存在している、酸素と窒素の分子を再現する。
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酸素原子2個と炭素原子1個で二酸化炭素を、水素原子2個と酸素原子1個で水蒸気を再現する。水蒸気は液体の水が気体になった状態であり、分子構造は水と変わらない。
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アルゴンはほかの原子と結びつきにくいので、原子1個のみで1セットのアルゴン分子になる。
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空気の成分として、窒素分子78 セット、酸素分子21セット、アルゴン分子1セットを用意する。
※空気の78%は窒素、21%は酸素、1%はアルゴンです。また、ごくわずかに二酸化炭素も含まれています。
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4で作った空気の成分の模型をすべてビニール袋に入れる。さらに、2で作った二酸化炭素分子と水蒸気分子を1セットずつ入れ、ビニール袋を振る。
うまくいかないときには
ピンセットをうまく使い、水のつけすぎに注意する
●ピンセットを使うと、ビーズをトレイに並べたり、袋からビーズを取り出すのに便利です。
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●きりふきで水をつけすぎるとビーズがひと回り大きくなったり、トレイの跡が残ったりすることがあります。しっかり乾かすと、ある程度は元に戻ります。
なぜそうなるの? ~気体・液体・固体の秘密~
3つの状態の違いは、分子の距離と並びかたで決まる
同じ種類の分子でも、気体・液体・固体とそれぞれの状態ごとに、分子同士の距離や並びかたが違います。それを、大気中の水分子の変化で確認してみましょう。
まずは気体の状態の水分子、つまり水蒸気の場合です。水分子は、温度が高いうちは大気中をバラバラに動き回っています。
ところが温度が下がってくると、水分子が大気中を移動する動きがしだいに弱まり、分子同士がぶつかると、たがいにくっつきます。やがてそのくっついた水分子がある程度の大きさになると、重くなって地表に落ちます。これが液体の状態の水分子、つまり水です。地表に落ちてくる水分子が雨です。
さらに温度が下がると、分子同士の動きがさらに弱まり、分子がきれいに整列し始めます。これが固体の状態の水分子、つまり氷なのです。
●気体・液体・固体での分子の状態
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気体はバラバラ、液体はくっつき、固体は整列している。
実験2 やってみよう 固体を分子模型で再現する
★手順 全3工程
実験1では気体である大気の分子模型を作りました。今度は、固体を再現してみましょう。
今度は身の回りにある、食塩、氷、炭酸ナトリウム(重曹を熱すると得られる)などの物質の原子の並び方を調べましょう。
用意するもの
アクアビーズ、アクアビーズトレイ三角、アクアビーズトレイ四角、水、霧吹き、ピンセット
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食塩のおもな成分は、塩化ナトリウム。塩素原子とナトリウム原子が、交互に立体的に結びついてできている。
※実際の食塩の結晶はもっと立体的に広がっている。アクアビーズトレイ四角をじょうずに使って、3個×3個×3個以上に大きくしてみよう。
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酸素原子と水素原子で左上の図のように六角形を作る。固まったらトレイに立てて、水素原子を左下、右、上と3回に分けてくっつける。
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炭酸ナトリウム(Na2CO3)分子はナトウリム原子2個、酸素原子3個、炭素原子1個でできている。この平面の構造が、炭素原子の上下にナトリウム原子がくっつく形で何層にもなって結晶を作っている。
そうなんだ! ~身の回りの物質は原子でできている~
原子がいくつか集まってできているのが分子です。実験1のアルゴンのように、原子が1個だけで分子を構成している場合もあります。
このとき、近くにある原子同士がただきまりもなく集まって分子になるわけではありません。原子の種類によって、その集まりかたには一定のきまりがあるのです。たとえば、水素原子2個と酸素原子1個で水分子が1セットできます。ですが「実験1」で作った模型でわかるように、水素原子と酸素原子は一直線に並ぶことはなく、真ん中の酸素原子を軸に、かならず少し角度をつけて結びついています。
分子1セットの大きさはとても小さいのですが、このように膨大な数の分子が結びつくことで物質を構成しています。
結晶は、この分子が規則正しく集まってできたものです。そのため分子の形が結晶の形に大きく影響しています。
レポートのまとめかた
アクアビーズにはさまざまな色があり、どれも同じ大きさです。ところが実際の原子の大きさは、原子の種類によって異なります。たとえば酸素原子は、水素原子の約1.2倍の大きさです。原子の種類によって、大きさや重さがどれくらい違うのかを理科年表や図鑑などを使って調べ、表にして比べてみましょう。
実験2で作った炭酸ナトリウムの結晶は、炭素原子、酸素原子、ナトリウム原子の3つの原子が立体的にくっついて構成されています。さまざまな物質の結晶の構造を、図鑑やインターネットを使って調べ、結晶の分子模型をつくってみましょう。
発行:永岡書店
<著者プロフィール:野田 新三(のだ しんぞう)>
1970年大阪生まれ。不思議に思ったことは「自分で確かめたい」という気持ちから、理科に興味を持つ。95年千葉大学大学院教育学研究科を修了後、理科の教諭として教壇に立つ。