アプリ甲子園2018、優勝は渋渋・浅野啓さんと浦高・田村来季さん共同開発ゲーム「PERVERSE」

 2018年10月14日、中高生のためのアプリコンテスト「アプリ甲子園2018」の決勝大会がD2C本社で開催された。優勝および総務大臣賞は、渋谷教育学園渋谷高等学校1年の浅野啓さん、埼玉県立浦和高等学校2年の田村来季さんが共同開発した「PERVERSE(パーバース)」に決定した。

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ファイナリスト全員で記念撮影/「アプリ甲子園2018」決勝大会のようす
ファイナリスト全員で記念撮影/「アプリ甲子園2018」決勝大会のようす 全 20 枚 拡大写真
 2018年10月14日、中高生のためのスマートフォン向けアプリコンテスト「アプリ甲子園2018」の決勝大会がD2C本社(東京都中央区)で開催され、厳正なる審査の結果、優勝および総務大臣賞は浅野啓(あさの けい)さん(渋谷教育学園渋谷高等学校1年)、田村来季(たむら らいき)さん(埼玉県立浦和高等学校2年)共同開発のゲームアプリ「PERVERSE(パーバース)」に決定した。決勝大会のようすをレポートする。

アプリ甲子園2018開発部門の決勝は審査項目が変更に



 「アプリ甲子園」は、2011年にスタートした全国の中高生がスマートフォンアプリの開発を競う大会である。8回目を数える今回は、開発部門決勝の審査項目に変更があった。大きな2つの軸として「企画力」と「技術力」が審査基準となっている。企画力審査では、独創性・新規性、消費者支持度の2項目を、開発者による約4分間のプレゼンテーションと審査員からの質疑応答にて採点。技術力審査では、審査員が実機を触ってUI・UXデザインを、ソースコードなどからは実装力、技術チャレンジを採点した。

 開発部門の審査員は、審査員長である齋藤精一氏(Rhizomatiks Creative Director/Technical Director)、田中里沙氏(事業構想大学院大学学長/宣伝会議取締役メディア情報統括)、千代田まどか氏(Microsoft/Software Engineer)、中澤仁氏(慶應義塾大学環境情報学部准教授/博士)、鷲崎弘宜氏(早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所所長・教授)、技術審査員を金子麻里絵氏(パワーハウス/WEB・モバイルアプリエンジニア)が務めた。

 1次選考では30組に絞られ、2次選考で決勝に進む10組が選抜されてこの日を迎えた。年々レベルが高まるファイナリスト10組のアプリを、企画力審査の結果とともにプレゼンテーション順に紹介する。

表情も晴れやかな受賞者/「アプリ甲子園2018」決勝大会のようす
表情も晴れやかな受賞者

2018年開発部門ファイナリストによる作品と企画力



「速棋(ソクギ)」久下京一郎さん/武蔵野市立第三中学校3年


【企画力】独創性・新規性:89点、消費者支持度:78点 計167点
 将棋をベースにした対戦型ゲームアプリ。5種類の駒を使って戦い、色の付いたマスに相手よりも早く到着すると勝利となる。ゲームのルールも開発者自身が考えたとのことで、審査員からも高く評価する声があがった。

「SPEEDAY(スピーデイ)」笠原未来さん/日本女子大学附属高等学校3年


【企画力】独創性・新規性:76点、消費者支持度:84点 計160点
 手書き入力をメインにしたカレンダーアプリ。通知やテーマカラーの変更など多彩な機能が楽しい。審査員からはさまざまな入力方法に対応することもできたら良いというアドバイス。またアプリの特徴とネーミングがマッチしていることも好評価だった。

「PERVERSE(パーバース)」浅野啓さん/渋谷教育学園渋谷高等学校1年、田村来季さん/埼玉県立浦和高等学校2年


【企画力】独創性・新規性:97点、消費者支持度:94点 計191点
 2つのキューブを動かしながら同時にゴールまで持っていくゲームアプリ。マップをサーバにアップロード共有し、世界中の人がレートを競うことができる。審査員からはアルゴリズム、ソースコードが非常に素晴らしいとの高評価を受けた。

「オシマル」宮城采生さん/岩倉南小学校5年


【企画力】独創性・新規性:86点、消費者支持度:87点 計173点
 動物のブロックを押し合っうなどさせて敵陣へのゴールを狙うゲームアプリ。審査員からはシンプルなのでゲームへの没入感があるという声や、アプリ内課金に繋がる今後の拡張の展望などのアドバイスがあった。開発者はゲームクリエイターになることを希望。

「写して翻訳」河原慶太郎さん/青山学院中等部3年


【企画力】独創性・新規性:72点、消費者支持度:79点 計151点
 画像から物の名前を判断する物体認識、画像からテキスト抽出するOCR、テキストの翻訳という3つの機能を有する翻訳アプリ。2020オリンピック・パラリンピックの外国人来日による需要増、アンケート結果を受けて改善を実施したことも好評価だった。

「AsnapR(アスナップル)」中馬慎之祐さん/Canadian International School Singapore Lakeside Campus中学3年


【企画力】独創性・新規性:91点、消費者支持度:94点 計185点
 ARカメラ(写真・動画)アプリ。動画デコレーションや情報を空中に加えるなど、シンプルながらさまざまな楽しみ方が可能となる。奥行きを利用し多彩な表現が可能になることでユーザー自身のクリエイティビティがあがることが素晴らしいといった高い評価を受けた。

「写刺繍 ~Sha-Shi-Shu~」菅野晄さん/早稲田実業学校初等部6年


【企画力】独創性・新規性:82点、消費者支持度:84点 計166点
 オリジナルの刺繍デザインを簡単に作成できるアプリ。撮影した写真を刺繍の図案に変換し、必要な刺繍糸が示される。開発者の祖母が好きな刺繍からヒントを得た。審査員からは身近な人を助けるアプリは素晴らしく、またネーミングも良いとの評価があった。

「ARoute(エールート)」山口響也さん/三田国際学園高等学校2年


【企画力】独創性・新規性:87点、消費者支持度:81点 計168点
 来日外国人向けの路線図・経路探索アプリ。駅のホームにあるナンバリングをスキャンしAR上に路線図表示。行きたい駅のタップで発車時刻等の情報が表示される。審査員からは有用性や技術の高さが評価され、また機械学習による拡張性にも期待する声があった。

「ComDiary(コムダイアリー)」原田摩利奈さん/東洋英和女学院中学部3年


【企画力】独創性・新規性:79点、消費者支持度:86点 計165点
 愚痴を吐き出せるアプリ。音声認識により愚痴を文章化する。友人に共有、あるいは共有せずにスマホ内の保存も可能。愚痴は3日で消える。審査員からは、愚痴を前向きに活用できそう、需要があると思うなどの声があった。

「TIERN(ティーン)」谷津俊輔さん、愛野茜太さん、井上大斗さん、木村優斗さん、鋪野 和莉さん/千葉県立一宮商業高等学校2年


【企画力】独創性・新規性:86点、消費者支持度:79点 計165点
 キャラクターに言葉を与えると、辞書データをもとに感情を判断することで、キャラクターが変化するアプリ。かわいい、楽しい、完成度が高いという声があがった。5名1組のチームで開発し、スケジュール管理や意見調整などのチームで開発する難しさも経験。

新設された「アイディア部門」の結果発表と表彰式



 企画力審査に続き、会場外に用意された実機によるアプリ体験タイムへ。この時間を利用して審査員による別室での技術力審査及び各賞の協議などが行われる。アプリ体験タイムでは、開発者自らが実機とともに使い方や開発した意図などを説明。観覧者の驚きの声も数多く聞こえ、ファイナリストのレベルの高さを実感できるものとなった。

 アプリ体験タイムのあとは、今大会から新設された「アイディア部門」の結果発表と表彰式がスタート。アイディア部門は、アプリ実装前の企画のみの参加が可能となっており、柔軟で広範なアイディアが多数応募されることが期待されていた。

 今回のテーマは、学校の先生にプレゼントしたいアプリのアイディア。9月14日から候補作品がアプリ甲子園のサイトに掲載され10月5日まで投票が行われた。アイディア部門の審査員は永谷研一氏(発明家/ネットマン 代表取締役社長)が務めた。

 アイディア部門の受賞者は下記のとおり。

オーディエンス賞
「トビタツ」小林亜結子さん、滑川寛さん、上野寛和さん、足立結菜さん、小島 恒祐 さん


 オーディエンス賞はアプリ甲子園のサイトでもっとも投票数が多かった作品に与えられるもので、「トビタツ」は229票を獲得した。転校生の孤立を減らし、転校先ですぐにクラスで仲良くなれるようにするために考えられたアプリで、転校生の情報を受け入れ側の先生や生徒と共有できる仕組みになっている。

アイディア部門オーディエンス賞「トビタツ」の小林亜結子さん/「アプリ甲子園2018」決勝大会のようす
アイディア部門オーディエンス賞「トビタツ」の小林亜結子さん

最優秀アイディア賞
「取写選択」森川彩音さん


 最優秀アイディア賞は審査員である永谷氏により選出された。「取写選択」は先生と生徒をつなぐ写真共有アプリ。写真を共有するだけでなく、自分が写っている写真を選んで表示したり、卒業アルバム用に写りの良いものを選び出したりと、学校イベントで便利に活用できる機能を想定している。なお、副賞としてプログラミングスクールの参加権も授与された。

アイディア部門最優秀アイディア賞 「取写選択」森川彩音さん/「アプリ甲子園2018」決勝大会のようす
アイディア部門最優秀アイディア賞 「取写選択」森川彩音さん

アプリ甲子園2018、開発部門受賞者一覧



 続けて、もっとも技術力の高いアプリに贈られる技術賞および協賛各社が提供する特別企業賞が発表された。入賞アプリは下記のとおり。

技術賞 「ComDiary(コムダイアリー)」
原田摩利奈さん/東洋英和女学院中学部3年



電通アイソバー賞「写刺繍 ~Sha-Shi-Shu~」
菅野晄さん/早稲田実業学校初等部6年



パワーハウス賞「SPEEDAY(スピーデイ)」
笠原未来さん/日本女子大学附属高等学校3年



 第3位から優勝者には、下記の3名が選ばれた。

第3位 「TIERN(ティーン)」
谷津俊輔さん、愛野茜太さん、井上大斗さん、木村優斗さん、鋪野 和莉さん/千葉県立一宮商業高等学校2年


【審査結果】UI・UXデザイン:84点、実装力:96点、技術チャレンジ:91点、独創性・新規性:86点、消費者支持度:79点 総計436点

準優勝 「AsnapR(アスナップル)」
中馬慎之祐さん/Canadian International School Singapore Lakeside Campus中学3年


【審査結果】UI・UXデザイン:86点、実装力:82点、技術チャレンジ:86点、独創性・新規性:91点、消費者支持度:94点 総計439点

優勝 「PERVERSE(パーバース)」
浅野啓さん/渋谷教育学園渋谷高等学校1年、田村来季さん/埼玉県立浦和高等学校2年


【審査結果】UI・UXデザイン:92点、実装力:90点、技術チャレンジ:93点、独創性・新規性:97点、消費者支持度:94点 総計466点


 非常にレベルの高いアプリが揃った中で、浅野啓さん、田村来季さんの「PERVERSE (パーバース)」があらゆる項目で高得点を獲得し優勝を果たした。ゲームをシェアする方法やデザインの完成度など非常にバランスが良く、近年でもレベルが非常に高いものだったという講評となった。浅野さんは「競技プログラミングをやってきて良かった」とコメントし、確かな技術力や課題解決力が培われていることを印象づけた。

優勝した「PERVERSE (パーバース)」の浅野啓さん/「アプリ甲子園2018」決勝大会のようす
優勝した「PERVERSE (パーバース)」の浅野啓さん

子どもたちは大人の想像をたやすく超えていく



 アプリ甲子園2018は、やってみたくなるゲームアプリやARアプリが数多く披露され、2020東京オリンピック・パラリンピックなどのインバウンド需要を捉えたアプリ、身近な課題を解決するやさしい視点の素晴らしさが際立つアプリも印象的だった。

 技術総評でも指摘があったように、外部サービスを結び付けて有効活用するアプリも目立つ。今後の大切な視点として、どんな技術が自分の周りにあるのかを理解し、どのように実装できるかを試行することも重要になるものと思われる。またAR、IoT、機械学習、ディープラーニングなどのキーワードもさらに意識されることになるだろう。

優勝した「PERVERSE」の美しいデザイン/「アプリ甲子園2018」決勝大会のようす
優勝した「PERVERSE」の美しいデザイン

 小学生2名が決勝に残ったことは、今後のプログラミング人材の可能性を考える上でも非常に心強いものがあった。課題を発見する力、その課題に対して自発的に解決する方法を見出すためにさまざまなトライ&エラーをしていく力プログラミングを手段として駆使しながら自らのクリエイティビティを発揮できる力を、アプリ甲子園のファイナリストはすでに有している。

 これから学校教育にプログラミング教育が導入されていくが、保護者をはじめとした大人には、本質を捉えたサポートをいかに実現できるかが重要になるものと思われる。

《佐久間武》

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