「ぜひ実際に学校を訪れて、偏差値だけでなく、本当にわが子に合った学校選びをしてほしい」と語るのは、細田学園(埼玉県志木市)の副学園長・持田直人氏だ。細田学園は、2019年4月に細田学園中学校を開校し、そのユニークな教育方針(6月の同校取材記事参照)が話題となっている。
持田氏、教頭の山中聖子氏、広報主任の坂東啓介氏に、これからの中学受験について、また、細田学園で力を入れている教育活動について聞いた。
中学受験が変わってきた
--学習指導要領が新しくなり、また大学入試でも、センター試験が廃止され大学入学共通テストが始まるなど大改革が行われます。中学受験にはどのような影響があるとお考えですか。
持田氏:このところ、中学受験が変わってきています。新時代に突入したなと実感しています。これまでは、偏差値至上主義で志望校を選ぶ傾向がありましたが、どの学校ならわが子が本当に幸せな人生を歩むことができるだろうかと考える保護者が少しずつですが増えていると感じます。皆、学力が高いだけではなく、素晴らしい人生を送るために学力以外の力も身に付けなければならないと気付き始めたのではないでしょうか。
世界的に見ても、「学力観」が変わってきました。これまでは、認知能力が高い人、つまりたくさんの知識があり、与えられた問題を速く正確に解ける人が優秀だとされてきた。しかし今は、コミュニケーション力、協調性、自己効力感、粘り強さといった、試験では測れないような力=非認知能力が重視されています。
非認知能力が重視されるわけ
--非認知能力が重要視されるようになった背景には何があるのでしょうか。
持田氏:2015年にOECDが発表した報告書「Skills for Social Progress」が大きなきっかけとなったと考えられます。この報告書の中に、非認知能力(報告書の中では Social and Emotional Skills =社会情動的スキルと表現されている)を育成したほうが、より豊かな幸福な人生を送ることができる、また、非認知能力が高い人は結果的に認知能力も高くなる可能性がある、ということが書かれています。
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産業界でも、変化のスピードが速く、複雑で困難な課題が山積する現代においては、異なる価値観の人とのコミュニケーションや協働作業によって新しいアイデアを生み出し、問題解決をしていく能力、すなわち、非認知能力が高い人材へのニーズが高まっています。
このような背景から、教育現場でも学力偏重の教育への見直しが図られ、それが大学入試改革や新学習指導要領にも影響を与えているのです。
細田学園の、非認知能力を育てるさまざまな試み
--細田学園の、生徒が自ら課題を設定し、自ら調べて、生徒同士でディスカッションしながら新しいものを創り上げていくという「DITOメソッド」や、自分が興味・関心をもてるものに一生懸命取組み、その対象を広げていく「dots教育」はまさに、非認知能力の育成を意識したもののように思います。
持田氏:そのとおりです。本校では、一斉に先生の講義を聞くという授業よりも、フィールドワークやディスカッション、PBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)を中心に行っています。知識を詰め込むのではなく、体験や議論の中から新しい答えを導き出していくという学びです。
坂東氏:グローバルに活躍できる人材を育てるため、8月には高校生を対象に、ハーバード大学の学生を招いてともに学ぶ機会を設けたり、セブ島への語学研修や、ハワイ、シンガポール、マレーシアでの国際体験も行っています。
社会貢献プロジェクトでは、生徒たちが社会課題を取り上げてその解決を試みるという活動を行っています。たとえば、子ども食堂を支援する取組みや、川の水質改善、小学生に勉強を教える、といった活動を、生徒たち自らが主体的に進めています。
山中氏:文化祭などの学校行事でも、生徒たちの自主性を重視しています。学校説明会のような、本来は学校が行う行事でも、生徒たちから「自分たちでキャンパスツアーをやりたい」という声があがり、7月の学校説明会では企画から運営までを生徒が実行しました。説明会に来てくれた小学生たちにも、年齢の近い先輩たちが案内してくれるのが大変好評でした。
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大切な6年間、ミスマッチのない学校選びを
持田氏:これからは、偏差値の高い学校を出たから優秀だとか、幸せだという時代ではありません。どのような経験をし、社会に対してどのような貢献をしていくかが問われる時代になります。他人とコミュニケーションをし、協力し合って何かを創ることができる、最後までやり抜くことができる、今後はそういう人たちが時代をリードしていくでしょう。
学校選びにおいても、「偏差値が高い学校ならどこでもいい」ではなく、どの学校なら自分に合っているか、自分の好きなこと、得意なことを伸ばせるか、という視点で選んでほしい。中学・高校の6年間は、人生においてとても大切な時期です。ミスマッチのないよう、なるべく多くの学校を見て、お子さんにぴったりの学校を見つけてほしいと思います。
すべての生徒が「学校が楽しい」と答えるわけ
--細田学園中学校は2019年度に開校し、初めての夏休みを終えました。生徒たちは細田学園での学びをどのように感じているのでしょうか。
山中氏:生徒たちは皆、「学校が楽しい」と言いますね。何が楽しいのかと聞くと、「今までの勉強とは違う勉強ができるから」と多くの生徒が答えます。細田学園の授業は、課題が出されて自分で考えなければならない授業が多く、そこに手応えを感じているのだと思います。家庭で保護者に相談したりディスカッションしたりする生徒もいて、家庭内で会話が増えたという保護者様からの声もありました。
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坂東氏:理科・社会は特に、ディスカッションが多いですね。「社会は暗記科目だと思っていた」という生徒も多く、そのために社会が嫌いだったという生徒も、「細田学園の授業は楽しい」と言ってくれています。
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進路選びにつながるドッツレコードシート
--夏休みには、フィールドワークを実施されたとか。そのようすを教えてください。
山中氏:本校では、年3回の長期休暇を利用して、フィールドワークを行っています。夏休みには、宮沢賢治の作品の世界観に触れようというテーマで、岩手県に国語のフィールドワークに行きました。あらかじめ宮沢賢治について調べたり作品を読んだりするなどしっかり事前学習をしたうえで現地に行ったことで、より収穫の多いフィールドワークになったのではと思います。今、成果をまとめているところです。
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春休みのフィールドワークでは大島に行き、30年前の三原山の大噴火跡を訪ね火山について学習する予定です。溶岩が広範囲に広がる風景はまるで月面のようで、そこから宇宙への関心が広げる生徒もいるのではないかと思います。
--まさに、dots(原体験)を増やしていくという試みですね。
山中氏:そうですね。生徒たちは、自分の体験を些細な出来事も含め、すべて「ドッツレコードシート」に記録しています。これが6年間積み重なっていきます。
持田氏:高校2年で進路を考えるときに、自分はどのようなことをしてきたか、何が好きだったか、これから何をするべきか、ドッツレコードシートを見て自らを振り返ることで見えてくることが必ずあるはずです。生徒たちが、自分にとって最適な進路を選択し、豊かな人生を歩んでほしいと思います。
--ありがとうございました。
中学受験の志望校選びには、気になる学校を訪問して実際に授業を体験したり、先輩の話を聞いたりする機会があると、より身近で実感がわいてくるだろう。細田学園のオープンスクールでは「VRで学ぶ世界の歴史~教室から世界へダイビング~」「生命の設計図~色々なものからDNAを取り出そう~」などユニークな授業を体験できる。また、保護者が仕事帰りに参加しやすい時間帯に行われるナイト説明会、細田学園独自の入試を体験できる入試体験会も開催される。秋から冬にかけてのさまざまな体験が、より幸せになる学校選びへとつながるだろう。
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細田学園中学校 オープンスクール
日時:2019年10月27日(日)9:00~12:00
場所:細田学園
<内容>
保護者:学校説明(全体説明会+選択制説明会)
児童(4・5・6年生):授業体験(多数の中から選択できます。先着順)
細田学園中学校 ナイト説明会
日時:2019年11月6日(水)18:30~
場所:池袋駅直結 メトロポリタンプラザビル12F ステーションコンファレンス池袋
<内容>学校説明
細田学園中学校 入試体験会
第1回
日時:2019年11月23日(土)9:00~11:00
第2回
日時:2019年12月15日(日)9:00~11:00
場所:細田学園
<内容>
1部 児童:入試体験/保護者:学校説明
2部 問題解説