英語に特色のある公立高校入試
--大阪府の公立高校入試の特徴について教えてください。
大阪府の公立高校の入試では、理科・社会は共通問題ですが、英語・数学・国語においては難易度別の3種類の問題「A(基礎的問題)」「B(標準的問題)」「C(発展的問題)」を学校ごとに選択して学力検査を行います。このうちC問題は文理学科10高(北野高校、豊中高校、茨木高校、大手前高校、四條畷高校、高津高校、天王寺高校、生野高校、三国丘高校、岸和田高校)をはじめとする難関校で採用されています。
来年度入試に、2019年度入試からの大きな変更点はありませんが、英語民間試験による見なし点(読み替え得点)が導入されていることが、大きなポイントと言えるでしょう。対象となるのは英検、TOEFL iBT、IELTSで、たとえば英検2級の場合は入試当日の点数において80%(学力検査が80%を上回る場合はそちらを適用)、準1級の場合は100%が保証されます。
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出典:大阪府教育庁
--英検の2級以上を取得した受験生は、入試においては他の教科に注力できるわけですね。
はい、そのとおりです。また、英語においては一発勝負の入試ではなく、複数回受験のチャンスがあり対策も立てやすい民間試験に計画的に取り組むことで、安心して入試に臨めるわけです。
英語に関するもうひとつのポイントが、C問題における英語3技能(聞く・書く・読む)です。問題文自体が英語の英問英答でリーディング力を試されるうえに、リスニングは25分と長文で、難易度の高い出題となっています。とはいえ、C問題の平均点は51.7点(平成31年度)と低くなく、学力上位層の子どもたちは、きちんと適応できているようです。
C問題に限ったことではなく、英語資格を活用した受験生のうち、入試当日に80%に到達しなかった生徒は80.7%にのぼります。非常に多くの中3生が英検によって助かっているということでしょう。府内の最難関、北野高校では、定員320名の約半数にのぼる169名が英検2級以上をもっているということです。天王寺高校は87名ですので北野高校の突出ぶりが目立ちます。英検2級以上の人数だけに注目すると、茨木高校が100名にのぼります。3年後の大学実績に大きく影響するかもしれません。
難関校ほど学力検査重視
--公立高校では内申点が重視される学校が多いと思いますが、どのような扱いになりますか。
学力検査と内申点の配点には、7:3で学力検査重視のタイプIから、3:7で内申点重視のタイプVまであります。難関校ほど学力検査を重視する傾向にあります。
--なぜ、難関校では内申点のウエイトが低いのでしょうか。
昨今の大阪府の状況として、絶対評価により内申点が高く出る傾向があり、内申点で学力を測るのが難しくなっていることが理由のひとつです。
このことは、実は危険な要素をはらんでいるのです。保護者の世代での平均は3でしたので、お子さんが4をとってくると「うちの子はよくできる」と思いがちなのですが、実は3.49が評定平均となっています。それは1がついている生徒が2%しかいないことに起因しています。4だから大丈夫と安心せずに、模試などでお子さんの学力を確認し、必要に応じて塾などで受験対策をされるとよいと思います。
--ほかの教科はいかがでしょうか。
数学のC問題が難しいことも特徴のひとつです。平成29年度入試ではC問題の平均得点率が28.6%でした。さすがに難しすぎると見直しされ、今年度は58.0%になっています。

最難関回避の傾向
--人気校の傾向はいかがでしょうか。
北野高校・天王寺高校の難易度が高いことから、北は茨木高校、豊中高校、南は高津高校に流れています。
当塾の生徒の傾向としては、私学併願校として桃山学院高校の人気が圧倒的に高くなっています。自由な校風に加え制服なし、国公立におよそ250人合格の実績などが人気の理由で、文理学科の併願に選ばれています。特に高津高校と併願するケースが多く、高津高校自体も志願者を増やし、2019年度は倍率が1.4倍まで上昇しました。清教学園高校、初芝富田林高校も安定的な人気があります。
高まる附属校人気と私学無償化
--大学入試改革の影響はありますか。
専願校として大学附属校の人気がますます高まっています。不透明な大学入試に不安を感じる保護者が、高校の時点で大学に直結する高校を好む傾向があります。
関西の私立大学の最難関である関関同立の附属はもちろん人気が高いのですが、難易度も高い。そこで、これらに続く近畿大学附属高校の人気はまさにフィーバーと言ってもよいほどです。
近畿大学泉州高校も、2019年度には人気が跳ね上がり、定員240名に対して専願が234名にのぼっています。当塾の希望者も昨年の3倍程度になっています。
--附属以外の私学はいかがでしょうか。
大学附属に限らず、大阪府では授業料無償化制度(※)により私学人気が高まっています。大学進学まで考えた場合に、難関公立校を狙える層以外では、公立より面倒見のよい私学に進学させたいと考える保護者も多くなっています。このため2019年度は私学の専願率が25%を超え、過去3年間で最高となりました。
※ 大阪府では、国の高等学校等就学支援金と併せて、私立高等学校等授業料支援補助金を交付することにより、私立高校等の授業料が無償になるよう支援している。対象は世帯年収910万円未満(保護者のどちらか一方が働き、高校生1人、中学生1人の4人世帯の場合のめやす)と広く、590万円未満の世帯は授業料にかかわらず無償、800万円未満でも子ども2人世帯で10万円、1人世帯で30万円など授業料負担額の上限が決まっている。
受験生は理社知識の定着と過去問対策
--受験生(中3生)の入試までの学習についてアドバイスをお願いします。
入試まであとわずかとなったこの時期に、数学にこだわる受験生が多いと感じています。数学の難問を解いて満点を目指す必要はなく、合格点を確保することを目指せばよいと思います。そしてその分の時間を理社の学習に回し、こちらは知識をしっかりと定着させ、高い総合点を目指して勝負したほうが、合格への近道でしょう。
特に高倍率の学校ではボーダーライン付近に多くの受験生が集中しますので、数点の違いが合否を分けることになります。数学にこだわりすぎて、理社の知識が十分でない状態で入試を迎えると、頑張ったのに合格できないという残念な結果を招く可能性があります。これからの時期は、新しい問題集に手を出すことはせず、基礎的なところを意識してしっかりと知識を身に付けることが大切です。
--過去問への取組みについてもアドバイスをお願いします。
第一ゼミナールでは12月から過去問対策を始め、冬期講習で集中的に取り組みます。冬期講習ではこれまでの学習の総まとめも行いますので、総仕上げを目的にこの時期から入塾する受験生もいます。
家庭で過去問に取り組む場合は、国語と英語は早めに始めてもよいでしょう。ただし、数学はすべての単元を習う前に過去問に取り組むと、自信をなくすことになるのでお勧めしません。
--過去問は何年分やればよいのでしょうか。
過去3~5年分でよいと思います。入試制度が変わる以前のものは、過去問としてはあまり意味がありません。時間を計って、時間配分を考えながら解くとよいでしょう。
また間違えた問題を解き直すことは大切ですが、同じ問題を繰り返し解いて過去問で100点をとっても意味はありません。できなかった問題は、その単元を他のテキストなどでやり直し、解法をしっかりと身に付けることが大切です。
--受験校はいつごろまでに決めればよいでしょうか。
11月の下旬から学校の三者面談が始まるので、通常はそれまでに決めることになります。私学無償化の影響で、私学で合格を確保したうえで、公立でチャレンジする生徒も増えています。結果的に併願校の私学に進学するケースも多いので、併願校選びにおいても、実際に学校に足を運び、雰囲気を肌で感じて、自分に合う学校を選んでほしいです。
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中2ではあえて凹凸を作る
--中2生へのアドバイスもお願いします。
真面目な生徒ほど、全教科をまんべんなくやろうとしますが、全教科に平均的に時間を割いて底上げしようとすると、全体の偏差値が伸びにくいことが多いものです。
余裕のある中2のうちは、自分の得意教科を見つけてあえて凹凸を作り、得意不得意を明確にしておくとよいでしょう。好きな教科を見つけておくことは、将来の進路選びにも役立ちます。柱になる教科をつくったうえで、中3では苦手を克服していくと、学力の底上げにつながります。また、ぜひ見なし点が保証される英検にこだわって挑戦してほしいです。
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--ありがとうございました。
英語3技能や英語民間試験の導入など先進的な入試を行っている大阪府では、文理学科10高の人気と、手厚い私学無償化制度により高まる私学人気が特徴という。大阪府でも大学附属校人気が高まっているということだが、附属校は高大接続の観点からも注目されている。入試本番までわずかとなったこの時期、悔いが残らないよう、併願校も含め納得できる受験校を選び、しっかりと対策をして、入試当日を迎えてほしい。
イベント情報
第一ゼミナールでは、今冬も模試や冬期講習会など受験生等を対象としたイベントが予定されている。最新情報については公式サイトで確認してほしい。
大阪府公立対策模試
開催日:2019年12月8日(日)
内容:中3対象の公立C問題に対応した「そっくり模試」。中1・2には将来のトップ高合格を見すえた文理学科10高模試を同時開催。
冬期講習会
開催日:2019年12月22日(日)~2020年1月7日(火)
受験必勝Vゼミ
開催日:2019年12月28日(土)~12月30日(月)
内容:1日10時間、合計30時間の集中ゼミ。入試頻出の重要単元の理解と実践をめざす。
第5回公開テスト
開催日:2020年1月11日(土)~1月12日(日)
内容:受験学年は入試直前判定、他は学年最後の実力測定となる公開模試。受験料無料。