Surface✕AIで高まるプログラミングへの興味…探究心を刺激する青山学院中等部の取組み

 Society 5.0時代を生きるこれからの子供たちは、どのように新しい情報活用技術を学んでいくのか。青山学院中等部・高等部の先進的な取組みとして、micro:bit×Surface Pro 7を活用したハイレベルなプログラミング授業のようすを紹介する。

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Surface Pro 7を活用した授業のようす
Surface Pro 7を活用した授業のようす 全 9 枚 拡大写真
 Society 5.0時代を生きるこれからの子供たちは、どのように新しい情報活用技術を学んでいくのか。ICT教育の先駆け的な存在として知られる青山学院中等部・高等部。その先進的な取組みとして、micro:bit×Surface Pro 7を活用したハイレベルなプログラミング授業のようすを紹介する。

 授業を担当するのは、同校で数学と情報技術(AI)を担当する傍ら、YouTubeチャンネルを運営し授業動画などを配信、マイクロソフト認定教育イノベーターに認定されるなど、多方面で活躍する安藤昇先生。

AIの可能性を子供たちに伝える



 この日の授業は、この日の授業は、ノートPCやタブレットとしても使える2 in 1スタイルの「Surface Pro 7」を使い、小型コンピュータであるmicro:bit(マイクロビット)を組み込んだ「AI判定マウスシールド」を作るというもの。


 「以前、顔の傾きをセンサーが検知し、口元のシールド部分が自動で開閉するタイプのマウスシールドを試作しました。顔を下げるとパカッと開いて、顔を上げると閉じるというもの。でもそれだと顔を上げた状態で飲み物が飲めないという欠点がありました。その欠点をカバーすべく、コップの写真を100枚近くAIに認識させ、USBカメラにコップの画像が写る=飲み物が口元に近づくとシールドが開く、というよりインテリジェントなバージョンを制作しました」と安藤先生は語る。

 そして今回、生徒たちが実践したのはさらにその発展形。AIが相手の顏の動きや表情を認識して、相手が話しているときはシールドが自動的に閉じるというもの。時世に合ったインパクトのあるテーマは、生徒たちの探究心をおおいに刺激しそうだ。

 まずはAIが画像を認識するための「目」となる、USBカメラを用意する。授業の前半ではUSBカメラで、さまざまな表情(口の動き)の顔写真を撮影。準備ができたら、AIに写真を認識させるための学習をさせていく。「ラベル1」のときは口が開いている表情、「ラベル2」のときは口を閉じている表情ということを学習させるために、MakeCodeで作ったコードをAIに読み込ませ、写真を認識させる。

AIに写真を認識させるための学習をさせる

MakeCodeでプログラミングしている画面

 100枚以上の写真をAIに読み込ませて学習させることで、目だけで泣いているのか、笑っているのかなど、人の表情をかなりの精度でAIが認識できるようになるという。「人間でもマスクをした状態で表情を読み取るのは難しいですよね。人ができないことをAIにはできる、“人間よりももしかしたら機械のほうが賢いのかな?” ということを体感してくれたのではないでしょうか」と安藤先生は説明する。

高性能なパソコンで実現する深い学び



 センサーやUSBカメラ、拡張プログラムを駆使するなど、授業にはかなり複雑でハイレベルな内容が組み込まれている。

 安藤先生によると、基本はmicro:bitとSurface Pro 7を繋ぎ、MakeCodeで作ったプログラムをmicro:bitに転送してマスクを開閉しているという。さらにコップや顔の表情など、USBカメラで撮影した画像を認識させるためにはAIを使う。これには、子供向けのプログラミング環境Scratchでmicro:bitを使えるようにするための拡張機能を使用。さらに、機械学習を利用するための拡張機能も読み込む必要があるなど複雑な処理が必要で、ハイスペックなパソコンでなければ動作が遅くなり思ったような操作が行えない

 このような拡張機能を問題なく読み込んだり、100枚以上にもなる膨大な画像を短時間で処理したりするなど、発展的な授業を行うためには、パソコンのパフォーマンスの高さは必要不可欠だ。Intel Coreプロセッサを搭載し、ハードなビジネスシーンでも広く利用されているSurface Pro 7を使うことで、こういった複雑な処理を伴うプログラミングでも滞ることなくスムーズに進み、思いどおりの授業が実現しているという。

Surface Pro 7を活用した授業のようす

 授業の後、安藤先生と山中くん、野口さん、杉山さん(生徒はいずれも仮名)に話を聞いた。

プログラミングの“技術”よりも“興味付け”が大事



--授業では、Surfaceを使いこなして楽しそうに学ぶ生徒たちの姿が印象的でした。青山学院のICT教育やプロミング教育の特徴や目的について教えてください。

安藤先生:2020年から、1人1台の情報端末を活用できる環境を整備し、ICTの教育への可能性を模索してきました。学校でも家でも、自分のパソコンやインターネットを自由に活用するのが当たり前。⽣徒たちは教科書やノートと同じようにSurface Pro 7を使って学習活動を⾏える恵まれた環境です。

 本校では中学、高校と連携しながら6年かけて情報分野を身に付けていく中で、中学までは、プログラミングの“技術”よりも“興味付け”が大事だと考えています。たとえば今回の授業では、AIを使ったマウスシールドを作りましたが、“実際の生活に役立つもの”をプログラミングやAIの機械学習を駆使して作れることを学んでもらうのがいちばんの狙いです。

 高校では、社会人が学ぶようなカリキュラムで、PythonやJavaなどの本格的な言語や、プログラミングの構造などをしっかり学びます。中学は、あくまでもそれの準備段階として、楽しさを感じてもらいたいと思っています。始めにテキスト言語から入るととっつきにくくなることを過去に経験しているのですが、マインクラフトやScratchなど、子供たちが夢中になれるゲーム的な教材から入り、それを楽しいと思ってもらえているのは思惑どおりですね。

インタビューに応える安藤先生

--プログラミングの授業の感想を聞かせてください。

山中くん:面白かったです。プログラミングは、真面目な学びの一面もあれば、ゲームとしての楽しさもあって一石二鳥だなと思います。今日の授業ではAIを使った顔判定マウスシールドを作りましたが、顔認証や音声認識を応用すれば、いずれは犯罪抑止などにも役立てられるのではないかと思いました。


プログラミングで何をするか? その目的が重要



--ますます重要度の高まるプログラミング教育ですが、中高生にプログラミングを学ばせるうえで大切にしていることは何でしょうか。

安藤先生:現在の教育現場で推し進めているプログラミング教育では、まず言語を教えて何かをしようという傾向がありますが、それは間違いだと思っています。いわゆるプログラミング的思考といいながら、順次処理、繰り返し、条件分岐、と分けているような。そういった技術は勝手に覚えるので、それよりもプログラミングを使って何をするのか、という目的を明確にしてあげることが大切です。目的があるからこそ、その時々に必要なことをマスターできるのです。

テクノロジーに裏付けされたクリエイティビティを



--プログラミングを学ぶ生徒たちのようすはいかがですか。

安藤先生:現場で教えていて感じるのは、プログラミングそのものに凝る生徒と、プログラミングで表現するものに凝る生徒がいることです。

 ある生徒は、micro:bitの点滅をつなげた制作物を作りました。プログラムとしてはとても単純な順次処理を並べているだけなのですが、芸術的にはビジュアルに凝った素晴らしい出来栄えでした。一方で、とても複雑な計算を組み込み、ネット上から引用した海流の流れと温度のデータを点でプロットさせるという解析プログラムを作った生徒もいました。

 同じプログラミングでも、見た目に凝る生徒と中身に凝る生徒と二極化するのです。中身を深いものにするか、表現を豊かにするか、両方あって良いと思っています。技術的なことと表現すること、どちらも認めてあげたいですね。プログラミング教育というと技術的な指導に偏りがちですが、世の中でヒットした作品の多くはクリエイティビティに秀でたものです。それにテクノロジーが裏付けされていることが重要で、どちらもこれからの教育には欠かせないと考えています。

GIGAスペック以上のPCだからこそ実現できるストレスない学び



--時代に応じた情報活用技術の習得には、どのようなICT環境が必要だとお考えですか。

安藤先生:生徒たちがやりたいことを実現するためには、ハイスペックなパソコンが必要不可欠だと考えています。GIGAスクール構想で推奨されているような端末ではどうしてもスペックが不足します。Surface Pro 7を使うことで、ストレスのない学びを実現できています。教員も機能の限界にとらわれず、新しい学びに挑戦できるようになりました。写真や動画でのプレゼンテーション、解析や統計といったプログラミング以外の授業でも使える端末であることは、すべての科目におけるこれからの学びに必要不可欠です。

 また、高機能なスマホを日常的に使っている子供たちにとって、スペックの劣るパソコンはむしろ使いづらいということもあります。中学、高校生だから性能の低いパソコンで良いという考えは間違っていて、子供だからこそパソコンを使って、さまざまなことができる可能性を感じてほしいと思います。

Surface Pro 7を活用した授業のようす

--生徒さんたちにとって、Surface Pro 7の使い心地はどうですか。

杉山さん:レポートなどを書くときには、やはりSurfaceがあると便利です。キーボードもとても操作しやすいです。OneNoteやTeamsを使って、課題の提出もできるのがとても便利。タブレットとしても使えるのが良いですね。

野口さん:タッチパネルの操作に慣れているので、パソコンからタブレットに簡単に切り替えられるのも便利です。オンライン授業はもちろん、PowerPointで資料を作ったり、カメラ機能を使って友だちとテレビ電話をしたり、学校や日常になくてはならないツールだと思います。


--先生方にとってはいかがでしょうか。

安藤先生:教員と生徒の端末の操作性が同じなのが良いですよね。Windowsを使い慣れている教員が多いので、トラブルが起きたときに対処しやすいと思います。テスト作成ソフトの多くがWindows対応なので、先生たちはWindowsでないと仕事にならないという声もあります。キーボード操作や漢字変換といった日本語入力をしやすいことも良い点です。

--安藤先生は「Microsoft 365」をフル活用されていますが、特に便利な使い方を教えてください。

安藤先生:Teamsのログ機能で出欠をとることができるのが便利です。アンケート、テスト、投票を作成でき、集計結果を簡単に表示することができるFormsもよく使います。Power Platformでは、今までPowerShellでやらなければならなかったスクリプト処理が簡単にできるようになり便利になりました。

 Surface におけるWord、Excel、PowerPointの使い勝手の良さは言わずもがなですね。また、クラウドで共同編集できるのも素晴らしい。生徒がマインクラフトの世界大会に出場したときも、生徒3人で同時にPowerPointを編集しながら短時間で資料を作ることができました。共同編集ができることでさらに使い方が広がりますね。

教員にも新たなスキルが必要な時代に



--今後、ICT教育に携わる先生方に求められることは何でしょうか。

安藤先生:近年、学校教育において映像の大切さがこれほど注目された年はなかったと思います。私自身5、6年前から教育現場で動画や映像配信などに取り組んできましたが、10年かかるだろうと言われていたICTの教育現場への浸透がコロナ禍によりこの数か月で実現していった状況に驚いています。

 これからは、オンラインで授業ができて当たり前の時代が来ます。対面授業でなければダメだというマインドを大きくシフトチェンジする必要があると思います。また、映像の制作や配信も先生にとって必要なスキルのひとつになるのではないでしょうか。

 私からアドバイスをするとしたら、失敗を恐れないことですね。プログラミング教育も、ICTを使った教育も、始めからうまくいくことなんてありません。失敗は次へのステップになりますし、常に新しいことにチャレンジすることが大事です。私自身も、トラブルはよくあります。完璧さや結果だけを求めない。大人になっても失敗を恐れずにやっていったら良いと思います。

--ありがとうございました。

 Society 5.0時代を迎え1人1台端末が当たり前となり、ますます活発化するICT教育。発展的なプログラミング授業を行い、クリエイティビティを育むためには、子供たちの自由な発想に応えられるパソコンを用いることはもはや欠かせない。子供たちの情報活用能力を伸ばすために、どんなツールをどうやって使うか。現場の先生も保護者も、改めて考えさせられる授業だった。

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《吉野清美》

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