富士通とMIT、未知のデータを高精度に認識できるAI技術を実現

 富士通とマサチューセッツ工科大学Center for Brains, Minds and Machinesは、学習時と傾向の大きく異なる未知のデータに対しても、AIが高い認識精度を示す技術を共同開発した。

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独自に算出したAIの画像認識度合を示す指標を活用して、AIがOODデータの高い認識精度を実現する技術
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 富士通とマサチューセッツ工科大学Center for Brains, Minds and Machines(CBMM)は、学習時と傾向の大きく異なる未知(out-of-distribution、以下OOD)のデータに対しても、AIが高い認識精度を示す技術を共同開発した。今後、観測条件の変化に対応できる交通監視AIや、多種多様な病変を正しく認識できる画像診断AI等、社会のさまざまなシーンへAI技術が適用されていくことが期待される。

 近年、AIの構築は、ディープニューラルネットワーク(DNN)を利用した機械学習技術の発展により、人に匹敵する高い認識精度を持たせることが可能となり、製造業における不良品検知や医療における画像診断等の幅広いシーンで応用され始めてている。しかしながら、人と同等以上の性能を発揮する側面の一方で、学習時には想定していなかった照明や視点等の環境や条件の変化により見え方に大きな違いが生じると、認識精度が大幅に低下するという課題もあった。

 今回、富士通とマサチューセッツ工科大学CBMMは、人の持つ認知特性と脳の構造に着想を得て、AIがOODデータを高精度に認識できる技術を開発。人が物を認知する際に形や色等の見え方に違いがあっても、それらの視覚情報を脳内で正確に捉えて分類できることに着想を得たも。複数の画像データをDNNに入力した際に生じるニューロンにおける対象物の見え方と分類の反応から独自の指標を算出、指標の数値が高くなるようにDNNの学習を促進させることで、AIの認識精度を向上させる。

 具体的には、従来、DNNを分割せず1つのモジュールで学習させることが認識精度の高いAIを実現する最良の手法だと考えられていたが、今回算出した指標に基づき、DNNを物の形や色等の属性ごとのモジュールに分割して学習させることで、より認識精度が高いAIを実現した。なお、この技術を適用したAIを、スタンフォード大学が開発した、AIの画像認識精度を測定するためのベンチマーク「CLEVR-CoGenT」で評価した結果、世界一の精度を達成した。

 富士通とマサチューセッツ工科大学CBMMは、2019年からの共同研究を通じて、人の脳がどのように知的な振る舞いを生み出すのか理解を深め、その知性をどのようにすればAIとして実現できるかを追求、社会や産業における課題解決に貢献する革新的なAI技術の開発を進めてきた。今後は、今回共同開発した技術をさらに高度化し、より人に近い柔軟な判断を可能とするAIを開発し、モノづくりや医療等をはじめとする幅広い分野への展開を目指してゆく。

 今回の共同開発の成果の一部は、AI分野でもっとも権威のある国際会議「NeurIPS 2021(Conference on Neural Information Processing Systems)」において2021年12月8日(日本時間12月9日)に発表された。

《編集部》

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