花咲スクールに聞く、集団と個別で伸ばす子供たちの学ぶ力

 埼玉県加須市の「花咲スクール」は近年、埼玉県北東部で急速に合格実績を高めている学習塾・予備校だ。同スクールの代表取締役兼本部校教室長の大坪智幸氏に、今の子供たちの学ぶ力をいかに伸ばすか、また保護者が留意すべき視点とはどのようなものかを聞いた。

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 埼玉県加須市、東武伊勢崎線花崎駅前に本部がある「花咲スクール」は近年、埼玉県北東部で急速に合格実績を高めている学習塾・予備校だ。同スクールの代表取締役兼本部校教室長の大坪智幸氏に、今の子供たちの学ぶ力をいかに伸ばすか、また保護者が留意すべき視点とはどのようなものかを聞いた。

紆余曲折の社会経験を
「教育」に活かす



--大坪先生が教育に携わるまでの経緯を教えてください。

 大学卒業後に民営化1期生として郵便局に入社しましたが、ある日「自分は本当に何をしたかったのだろうか」とふと疑問を感じてしまったんです。その後も転職を繰り返しさまざまな職を経験 する中で、社会の矛盾を痛感しました。自分のこれまでを振り返り、子供たちには自分のように紆余曲折しながら人生を考える のではなく、まっすぐ進ませてあげたいと思うように。自分の紆余曲折した経験をもとに何か伝えることができるのではないかと考えたことが、「教育」を目指すきっかけとなりました。

 思い立って教育業界への転身を決めた当初は、通信制高校の教員と塾講師を両立していました。2014年の春期講習からはさいたま市を拠点とする県内大手学習塾で講師を務め、2016年5月からはフランチャイズとして花咲スクールを設立、2019年に完全独立し、現在の「花咲スクール本部校」を開校しました。

 通信制高校教員時代に普通の高校には適応しにくい子供たちや発達に難しさをもつ子供たちと向き合うことで、多様な子供たちへの接し方を勉強させてもらった経験により、今の私の授業テクニックが培われたと感じています。また塾の講師をはじめた県内大手学習塾入社後にベテランの先生に新人研修を担当してもらえたのも幸運でした。授業の方法や子供との接し方をはじめ、子供の未来に対する考え方まで、さまざまなことを伝授していただきました。

「花咲スクール」代表取締役兼本部校教室長の大坪智幸氏

--大坪先生はこの塾のある加須市のご出身なのでしょうか。

 出身は春日部です。県内大手学習塾との縁があり今の教室を受け持つことになりましたが、本当にめぐり合わせです。加須市周辺は、都内やさいたま市の中心部で働いていらっしゃる方が多く、真面目で教育熱心なご家庭が多いのが特徴です。

花咲スクールがこだわる「集団個別」の徹底



--貴塾の強みはどのような点にありますか。

 我々のコンセプトは「分かる+出来る=楽しい」ですが、そのための成績を伸ばす「授業力」を強みとしています。特に中学生を対象とした授業では「集団個別」で、1コマ目は集団授業、2コマ目は生徒が各自の深度・ペースで個別演習を行っています。他の塾でも同様のことをしているとは思いますが、徹底されているところは少ない印象です。

 当塾ではスタッフに、1コマ45分の中でその日やるべきことを完璧にやり切るように指導すること、その後に生徒が自分でできるようになるまでひたすら繰り返してから帰すこと、この2つの方針を徹底しています。子供たちが自分でできるようにならなければ、塾に通う意味はないと思うのです。

--個別演習を支えるICTの活用について教えてください。

 大阪に本社を構える会社の学習ソフトを使っています。これを採用している理由は、自由度のあるシステムが我々の目指すところにマッチしているからです。

 我々はありとあらゆるオリジナル問題を揃えていますし、塾の生徒には、このレベルが適しているといった生徒個人の傾向を理解したうえで指導を行っています。この学習ソフトならば、子供たち自ら自分に合ったレベルの問題を選ぶことができます。練習問題も基本からスタートして、ステップアップしていくことが可能になっています。

--ひとりひとりに個別最適化できるということなんですね。他に大切にされている部分はどんなことがありますか。

 我々はオリジナルでテキストを作るにしても、必ず生徒全員が重なる部分の「部分集合」を大事にし、その重なる部分を集団授業のベースにしています。生徒の個別学習にはそれぞれのペースがあるので、部分集合以外の部分を個別で学んでいくことが必要になります。そのため1コマ目は集団授業、2コマ目は個別演習と完全に分けています。集団でも個別でも生徒数は同じで、1人の講師が集団と個別の両方を行うのも、そうした背景があるためです。

 生徒を伸ばすには、ICTを活用した「システム」に加え、生徒と接しながら、塾を支えていくスタッフを含めた「人」の存在がやはり欠かせません。大手塾のフランチャイズのようにシステムだけを投入するだけでは望ましい成果は得られないと考えています。

 また、保護者との関係作りも重要です。当塾では、「お父さんやお母さんもテレワークで時間があればオンライン授業を一緒に見て楽しんでくださいね」と伝えています。すると、授業でノリが良いお父さんやお母さんからの質問が出てくることもあるんです。

支持される理由は第1志望合格率の高さ



--現在の在籍生徒数はどのくらいでしょうか。

 2021年12月23日現在の生徒数は全体で120名です。その中の中学生80名のうち、3年生は33名です。当塾の場合、中3生は夏に募集を止めています。これは我々の夏期講習を受けずに、その後に実力を伸ばすのは難しいと判断しているためです。

 高校受験や大学受験だけでなく、その先の就職ですらゴールではないと私はずっと言い続けていますが、そうした考えからすると、たとえば入試直前の冬期講習のみ取り組むことで、果たして子供たちに何が残るのだろうかと思うのです。それは教育ではなく「消費行動」に近いのではないかと感じています。 その一方で、当塾では小学校から最大で7年、8年と在籍してくれる子供たちも多くおり、継続による学ぶ力の獲得はとても大切だと考えています。

教室のようす。現在、コロナ対策もあり、1教室最大16名で授業を行っているという

--塾の信頼のベースである高校合格実績を教えてください。

 2021年度の高校入試第1志望合格率は100%で、2016年度入試以来2度目の快挙でした。2016年度からの第1志望合格率は平均で約94%。具体的には埼玉県立の御三家(浦和、浦和第一女子、大宮)で大宮に合格実績が出ています。またその他の県内有数の公立進学校である春日部や不動岡、浦和西、越ケ谷にも合格実績が多く出ています。早大本庄や中央大付属などの難関私大付属校の実績もあります。

--貴塾生には、どちらの高校の人気がありますか。

 地元ならば、やはり不動岡高校です。一時に比べて、かなり進学実績も良くなっているのは確かですが、この地域の子供たちや鴻巣周辺には堅実な子 が多く、不動岡を第1志望にしているケースが多く見受けられます。通学時間などを考慮に入れ、賢い選択をしているようです。自分がやりたいことに時間をあてられるというのが理由の1つにありますね。ちなみに不動岡の校風は、文化祭などを見に行けばわかるのですが、とにかく明るい。はっちゃけるところははっちゃけて、真面目なところはがっちり真面目という、中学生が理想とするメリハリの効いた高校だといえます。

社会に出てからも通じる力を養成する講師の試み



--埼玉県公立高校の入試では学校選択問題がありますが、貴塾では特別な対策をしていますか。

 特別なことはありませんが、やはり模擬演習をひたすら繰り返すことは必須です。たとえば英語ならば、A4用紙1枚を超えるほどの長文読解で、「基本の読み方」を丁寧に行うよう徹底して指導します。また、我々は授業の合間で、SDGsに関する観点の話題にも多く触れます。まず日本語で情報や知識を得たうえで、SDGs系の英作文や国語の長文にも対応できるようになると思います。

 数学では、論理的思考で言葉を記号に直していく試みをしたり、ロジカルシンキングを取り入れたりという指導を行っている講師もいます。こうした社会に出てから役立つ力を身に付けてほしいという講師の不断の努力の積み重ねが、実績として現れているのだと感じています。

授業のようす。講師の不断の努力が実績につながっている

--普段の授業や講習会ではどのようなことに注力していますか。

 内申点のこともあるので、中1や中2では定期テストを重視しています。特に英語は、学習指導要領の改訂から教科書が新しくなったことで混乱もありますが、当塾の子供たちはみんな良く頑張っていると思います。

 また、講習会では学力の備蓄を作っていく「学習備蓄」というスローガンを持って取り組んでいます。子供たちは学校生活が始まれば忙しくなります。その前に講習会で先取りして学習を進めておき、備蓄した学力を少しずつ切り崩して行く イメージです。学校の授業では、講習会で学んだことを思い出すことにもなりますし、そこに塾での復習が入ることで学力を着実に定着させることになるのです。

大切なのは子供を信じること



--ご家庭での学習については何かアドバイスをされていますか。

 家庭学習は、塾での個別演習の延長上にあるもの。ですので保護者にはできるだけ手出しはしないでほしいと言っています。それには2つ理由があって、1つ目は保護者が共働きで忙しい方が多く、子供と一緒にいる時間が少ないにもかかわらず、宿題などでいろいろと口を出しはじめると、親子関係に悪影響が出るためです。

 そしてもう1つの理由は、親世代とは学習のやり方が根本的に違っているからです。私たちは、できない問題があればやらないで持って来てもらって良いと言っています。あえてわからないままで1週間を過ごし、悶々とした気持ちのまま塾に来る。そして頭を本当にフルに働かせながら一緒にやってみる。問題が解ければその瞬間、悶々とした気持ちから解放され、目の前がパッと開けるような成功体験につながっていくわけです。

 今は、与えられることに慣れすぎている子供たちが多いと感じています。老子の言葉に「授人以魚不如授人以漁(人に授けるに魚を以ってするは、人に授けるに漁を以ってするに如かず)」というものがあります。英語圏でも同様の“Give me a fish and I will eat today ; teach me to fish and I will eat all my life.”という表現があります。食料を欲している人に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えなければ自分の力で生きていけるようにはならないということです。「何かを与えられるのを待つのではなく、自分自身で取りに行こうよ」と思うのです。

塾の外観

--保護者が先回りしすぎているケースが多いのでしょうか。

 年々増えているように感じています。

 子供たちや保護者の方に伝えたいのは、大人も子供も安易に妥協や言い訳をしないでほしいということです。今はいろいろな言い訳を探し、誰かのせいにして済ませてしまうことも多いように感じます。

 頑張っている子はやはり伸びます。そして、伸び具合は生徒によっても異なりますので、伸びを感じられないとしても、それは目に見えないだけかもしれません。高校に入ってから伸びたという生徒もたくさんいますので、大人はもう少し信じてあげてほしい。その子がしっかりと自分の足で立って生きていけるようになるためには、抱きしめなければならないときもあれば、突き離さなければいけないときもありますよね。

 塾は、プロである講師が観察をベースにして指導をしています。子供が自分でしっかりと問題に向き合って考えてきたのかどうかは、質問の仕方でも分かります。「自分自身で問題のどの部分がわからないのかがわかっていない」と判断できる時には、我々はあえて答えず、しばらく放っておくこともあります。そして生徒自身でわからない部分をあぶり出しができたと感じられた時に、すっと子供に寄っていきます。

 このように子供自身で考え行動する機会が増え、子供に真剣に向き合い、困ったときに手助けする大人が増えてほしい。社会全体がもっと子供を信じてあげてほしいと私は思います。そのために微力かもしれませんが、尽力していきたいと考えています。

--ありがとうございました。

 大坪先生のお話からは、決して平坦ではなかった先生自身の社会経験から生まれた、子供たちに対する厳しくも温かな眼差しを感じた。2022年の春には、大坪先生の教育に関する書籍も出版予定だと聞く。塾という教育現場を超えた、さまざまな発信を期待したい。

花咲スクール

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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