ギフテッドの子供は、どうして支援や配慮を必要としているのか。実は、適切な注意をうまく切り替えたり保持したりすることが苦手、同級生や学校生活に馴染めない等、本人なりに多くの不得手を抱えていて、日常生活や人間関係に支障が出るケースも少なくない。けれど、高い知的機能をもつゆえに困り感が周囲に伝わりづらく、誰にも助けを求められないまま悩んでいる場合が多いのだ。
発達障害やギフテッドの研究・支援に長年携わり、ギフテッドたちの成長を見守ってきた北海道教育大学旭川校教授・片桐正敏氏をはじめとした複数の研究者たちが共同で執筆した「ギフテッドの個性を知り、伸ばす方法」より、我が子はもしかしたら発達障害? ギフテッド? と感じたときのヒントとなるギフテッドの子供が示す特徴を紹介する。
ギフテッドの過度激動(Overexcitability)とは
精神科医のカジミシェ・ドンブロフスキは、ギフテッドには環境からの刺激に対する感受性や興奮性が高く、時に強い行動的・感情的反応を示す傾向があると考え、この傾向がギフテッドらしい能力の早期発達や人格発達を促す鍵の一つになると考えました(肯定的分離理論とも言います)。こうした特徴を過度激動(Overexcitability,OE)と言います(超活動性や過興奮性)等の訳がありますが、ここでは表記を過度激動と統一します。
ドンブロフスキは、過度激動には脳神経の興奮のしやすさといった神経学的背景が想定されており、刺激に対する敏感性(sensitivity)や強い反応性(intensity)と表現されることもあります。過度激動はギフテッドの子どもの「精神的・行動的な激しさ」を示す言葉で、ドンブロフスキは過度激動を5つ(精神運動面、感覚面、想像的な面、知的な面、情動面での激しさ)に分類しました。一般的に、1人の中で、1つあるいは複数の過度激動が高い場合が多く、5つの過度激動すべてが高い場合は少ないとされます。
ドンブロフスキは、通常自然に受け入れる物事に対して、過度激動を示すギフテッドは、精神的・行動的に過剰に反応してしまうため、日常にある疑問や矛盾に気づきやすく、強い関心やモチベーションを持つと考えられています。ギフテッドの過度激動による反応は、周囲と質的に差異を生みやすく、本人の中での葛藤や集団生活上の問題につながることがあります。そのため、ギフテッドの子どものカウンセリングを行う上では、自身の過度激動に関して理解を深めることが重要視されています。海外では過度激動の評価尺度である「OEQ-II14」が開発されており、日本でも現在私たちが原著者の許可を得て、日本語版OEQ-IIの作成を行っています。以下、尺度の質問項目の一部を参考までに挙げてみます。
過度激動 | 日本語版OEQ-IIの質問項目例 | ||
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1 精神運動性 | ・私は動いているのが大好きだ。 ・私は負けず嫌いだ。 | ||
2 感覚性 | ・芸術鑑賞は、総じて、夢中になる体験だ。 ・自然の中の美しさに、感動する。 | ||
3 想像性 | ・退屈だと感じると、私は空想を始める。 ・ 心の中に思い描くものは、現実のものと思えるほど鮮明だ。 | ||
4 知性 | ・自分の考えを、しっかり持っている。 ・ 問題を解決したり、新しい概念を発展させたりすることが大好きだ。 | ||
5 情動性 | ・喜び、怒り、興奮、絶望などの感情を、私は強く感じる。 ・悩みや心配なことが、たくさんある。 |
次に、過度激動を強く示すギフテッドの子どもがどのような特徴を示すのか、5つの過度激動を紹介していきます。
精神運動性過度激動
一般的な生活では、刺激が足りない。自分に必要な強い刺激を求める傾向がある
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感覚性過度激動
身体への外部情報のとりこみ方は、人それぞれ。刺激に対しての制御が上手にできない
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想像性過度激動
想像力が、強い。想像に没頭するあまり、日常生活では、ボーッとしているように見える。
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知性過度激動
知的好奇心が強く、言語発達も早熟。時として、周囲と話が合わない困り感を抱える。
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情動性過度激動
感情のコントロールが、難しい。冷静に行動するにはどうすればいいのか、本人も悩んでいる。
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<協力:小学館/イラスト:平松昭子>
※本記事内で紹介している内容についての詳しい情報、参考文献等は本書内をご確認ください
編著/片桐正敏 著/小泉雅彦 著/日高茂暢 著/富永大悟 著/ギフテッド応援隊 構成/楢戸ひかる
本書は「ギフテッド」と呼ばれる子どもや知能の高い子どもの個性を知り、伸ばす方法についてわかりやすく解説します。保護者が我が子を支えるコツを専門の大学関係者と当事者、その保護者たちが執筆しました。本書のねらいは、子ども一人一人の特性を見極めて理解し、少しでも保護者が子育てできるようにするための書籍です。願わくば、子どもにも読んでもらって自己理解が深まるように、イラストやまんがで、直感的に理解し、読みやすく工夫をしました。親の言葉や当事者手記も掲載し、学校側の理解を促すきっかけになる内容です。アカデミックな部分と全国組織の親の会「ギフテッド応援隊」にも参加してもらっています。(「はじめに」より一部抜粋)