【大学受験2023】代ゼミ・船口明先生に聞く、受験期に「身近な大人」を活用し最大限の収穫を得る方法

 共通テスト目前の今、受験生がいかにこの時期を乗り越え、本番に臨むべきか、そして周囲の大人はどうサポートしていくべきか。代々木ゼミナールの現代文講師であり、教育総合研究所主幹研究員の船口明先生に聞いた。

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入試業界の変化は激しい。毎年情報のアップデートを。
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 2023年度大学入試の大きな山場、大学入学共通テストがいよいよ迫ってきた。受験生も保護者もついピリピリしてしまいがちな時期、保護者の誤った声かけや、受験生本人の殺気立った態度がその後の親子関係に影響を及ぼしてしまうこともままある。保護者はこの時期のわが子にどう向き合い、サポートすれば良いのだろうか。また、受験生本人も周囲の声に心乱されることなく、大人に上手く頼りながら受験を乗り切るにはどうしたら良いだろうか。

 本企画では、大学受験予備校の先生方に、共通テスト目前の今、受験生がいかにこの時期を乗り越え、本番に臨むべきか、そして周囲の大人はどうサポートしていくべきかを聞く。今回は「講師の代ゼミ」と評され、講師の質に定評がある代々木ゼミナール(以下、代ゼミ)にて現代文の人気講師であり、代々木ゼミナール教育総合研究所主幹研究員として変わりゆく学びに対応した指導法を日々研究している船口明先生に、受験直前期における過ごし方や大人との付き合い方等について聞いた。

取材に応じてくれた代々木ゼミナール 船口明先生

不安なときは周囲の大人を頼る

--受験直前期、ついSNSやインターネット上の情報を見てしまって、一喜一憂してしまう受験生も多いのではないでしょうか。

 SNSやインターネットについては、明確に欲しい情報を収集するためのツールとして使う分には問題ありません。でも漠然とした不安の中で、目的なく「皆はどんな感じなんだろう」とぼんやり眺めてしまうと、情報に振り回されてしまったり、SNSでのコミュニケーションで傷ついたりします。SNSやインターネットの情報の波に飲み込まれないようにするには「今自分が何をすべきか」「今の自分にどんな情報が必要なのか」を知ること。それがわからない場合は、実際に自分のことをよくわかってくれている大人に「あなたが今するべきことはこれだと思うよ」と客観的にアドバイスしてもらうと良いでしょう。

「この人なら相談できる」信頼できる1人を探す

--塾・予備校の先生、学校の先生、家族。受験に悩んだり、行き詰まったりした際に、受験生はこれらの大人をどう頼ったら良いでしょうか。

 受験生の身近な大人というと、おそらくその3種の方々になると思います。学校の先生と一口に言っても、担任の先生、進路指導の先生、部活の先生に限らず、自分にとっていちばん気の合う先生を見つけると良いと思います。塾でも先生よりスタッフの方が話しやすい子もいますよね。人と人との繋がりなので「本当に自分のことをよくわかってくれて、なおかつ自分が話しやすい人」を選ぶことが重要です。

 メンタルサポートとしての相談相手の選び方は「この人の言葉はいつ聞いても心に染みこんでくる」とか「この人なら遠慮なく話せる」という主観で構いません。自分が何か悩んだり抱え込んだりしたとき、周囲の大人全員に相談する必要はありません。この人になら相談できるという「1人」を見つけるだけで安心感が違いますし、1人で抱えていた気持ちをスムーズに発散できる先をもつことは大きな意味があります。

--大勢を味方にしなくても、心を許せる1人を見つけることで気持ちにゆとりができますね。

 情報の提供元としての相談相手という意味では、学校と塾・予備校の先生をうまく使い分けると良いですね。学校での授業の内容等は、学校の先生に相談した方が良いことも多いですが、受験に関するノウハウは、塾の先生の情報量の方が多い可能性が高いです。たとえば自分が受験当日までどのようにカリキュラムを立てるべきかとか、志望校の出題傾向が知りたいとか。

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客観的な受験情報が蓄積されている塾・予備校

--なるほど。「餅は餅屋」ということですね。

 受験情報に関しては、最近は学校の先生の中にも塾・予備校から学ぼうというスタンスの方が多くいますし、代ゼミの教育総合研究所主幹研究員として、教育委員会や進学校にお招きいただいてお話する機会も多いです。実際に学校現場をみると、先生方はクラス指導や生活指導等の通常の学校業務に加えて受験指導もしている状況で、こうした多忙な状況を考えると、毎年アップデートされる入試情報を、生徒ひとりひとりの志望校に合わせてキャッチアップすることは難しいでしょう。実際のところ、昔のイメージのまま旧来の受験指導をされている先生もいます。受験の状況は大きく変化して、5年も経てば大昔になるほど。変化のスピードが非常に速くなっています。

 さらに受験のみならず、社会の状況も変化しています。とりわけ、少子化は受験生にとって追い風です。加えて入試のスタイルも多様化しているので、うまく頭を使って受験校選びや受験科目選択をすることで大きなチャレンジもでき、自分の得意分野で勝負ができる時代になってきています。一方で、いまだに「苦手科目の克服をしなければいけない」という固定観念に捉われている受験生が大勢います。これは非常にもったいないことで、今の時代は合格点までの残り点数を、苦手科目に注力するよりも、得意科目でプラスオンする方が合格への近道になる場合も多いんです。

--昨今の入試改革等の激しい変化の情報も取り入れながら、受験に臨む必要がありますね。

 たとえば地方から都市部の私立を目指す、逆に地方の単科大学を目指す等、自校からの進学実績の少ない大学の情報は学校としても有していないことがあります。その点、塾・予備校には全国の大学の情報が網羅的に集約されています。その情報をもとに「この大学はこんな出題傾向だからここは軽くやっておけば問題なし」とか、「問題集のこの部分をやると良い」と具体的なアドバイスができます。そのあたりはメンタルのサポートとは別に、自分にとって客観的情報に基づいて有益なことを教えてくれる人を判断すると良いと思います。

教えることが好きでオープンな代ゼミの講師

--こういう性格の子にはこういうタイプの先生が合う、という分類はできますか。

 そう簡単に分類はできないです。悩んでいる子は、唯一無二の自分の悩みに寄り添ってほしいのであって、分類されることを嫌がると思うんです。生徒ひとりひとり性格も環境も志望校も違うので。でも、概して先生自身が生徒に対して自分の心の内を明かしてくれる、オープンマインドな方が話しやすいのではないかと思います。その点、予備校の先生、特に代ゼミの講師は教えることが好きで、熱心に取り組んでいる人が多く、授業の中で自分という人間をオープンに表現する人が多いです。

 ノルマとして授業のカリキュラムをこなすことだけを考えるなら、生徒たちが落ち込んでいようが授業内容のみをただ話せば良いのです。でも生徒たちからすれば、自分の気持ちを汲んでもらえず、心を閉ざしたまま授業をする先生の話は聞きたくないでしょう。代ゼミが「講師の代ゼミ」と呼ばれるのは、そうした授業をする先生は淘汰され、人気講師だけが生き残っていく環境だからです。私自身、機械的な授業を実験でやってみたことがありましたが、講習を取ってくれる生徒も明らかに減りましたし、何より生徒との心のつながりが生まれず、授業していても楽しいとまったく思えませんでした。

 日々授業をする中で感じているのは、「頑張れ」と一方的に相手への言葉ばかり発しても生徒たちの心には刺さらないということ。とくに11~12月ごろになると、「頑張れ」はほぼ生徒の心には届きません。むしろ私たち講師は今までどんな生き方をしてきて、どんなことを考えている人物なのかをオープンにすることで、生徒たちが自然と相談相手として選んでくれるのです。

 生徒たちにアドバイスするとしたら、「『この人なら話したい』と思う人がいれば、勇気をもって相談してみてほしい」ということです。「こんなことを相談したら相手は困るのでは」とか「きっと忙しいから今は相談しないほうが良いかな」と尻込みするよりも、自分の直感を信じてアクションしてみてください。フィーリングが合う相手であれば、たとえ忙しくても真摯に向き合ってくれるはずです。メッセージは量ではなくて深さだと思います。ぜひ自分の直感を信じて、ここぞというときに勇気を出してほしいですね。

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親にとっての挑戦は「子供を信じて放っておく」こと

--この時期、普段の生活の中でわが子にどのようなサポートや声かけをすべきか、保護者の方にアドバイスを。

 経験的にみて、受験生が親に望んでいるのはほぼ100%「放っておいてほしい」ということです。ただ「無関心」と「放っておく」は違います。親からの「応援している」という思いが伝わっている前提で放っておいてほしい。家庭の事情によりどこまでできるかは別ですが、たとえば、温かいご飯を用意したり、学校や塾の送迎をしたりといったことも、応援の1つの形です。

 受験期、私たち講師には生徒たちからさまざまな愚痴が寄せられますが、親の過干渉に関する苦情が非常に多い。私は授業の最後に感想を書くカードを用意しているのですが、親に望むことを生徒に書かせたら、9割以上が「放っておいてほしい」と書いていました。とくに志望校のレベルが高ければ高い生徒ほど、そう書きます。

 今の時代はひとりっ子が多いこともあってか、親が高校生の子供のために衣類を選んで用意したり、模試の間違いをコピーしてあげたりすることもあるほど、過保護・過干渉な時代。一方で、それを受けている子供は「模擬試験のABC判定や偏差値くらいは親が知っていても仕方ない。だけど、模試の何の教科で何番の問題ができなかったでしょ、なんて言われたら、一体どこまで見張られているのかとゾッとしてしまう」と。

 親が知らずのうちにこうした過干渉を続けてしまうと、受験をきっかけに子供は親とほとんど口をきかなくなります。とくに男の子に多いです。受験前までは仲が良かったのに、受験期にまったく話さなくなったという子が、残念ながら毎年一定数います。医師のご家庭なら、実家を継ぎたくない最大の理由がそこにあることも多く、「もし医師になってしまったら一生この親に縛られて生きていかなくてはいけないような気がして嫌だ」と話す子もいます。受験期の親の関わり方が、親子関係を壊す引き金になっていることもあるのです。

 もちろん「これが私ができる最後のサポート」と思って積極的に関わろうとする親の気持ちもわかります。でも「本当の意味で子供のことを信じて待つ」ことこそが最大のサポートだと思います。過干渉しすぎてしまう時点で信じきれていない証拠です。

「本当の意味で子供のことを信じて待つことこそが最大のサポート」と話す船口先生

人生において失敗は当たり前「それでもあなたは大丈夫」

--子供のためと思っての行動が裏目に出てしまう辛さ…。今一度子供の目線に立って冷静になりたいですね。

 この話をすると、「失敗したらどうするんですか」という反応をいただくんですが、失敗なんて人生では当たり前。「失敗してもあなたは大丈夫」というのが本当の意味での「大丈夫」。失敗を恐れていたら何の学びも生まれません。「うちの子なら何があっても大丈夫」と器を大きく、どんと構えるトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。

 1つエピソードを紹介します。ある母親が、息子から「もう関わらないでくれ」と言われたと相談に来たことがありました。その母親は子供を医学部に入れて実家の病院を継がせなければと思っていた教育熱心な方でした。なぜ相談相手に私を選んだのかを聞いたら「先生の授業があった日は、子供が晩ごはんを食べながら楽しそうに先生の話をしていたから」と言ったんです。その理由も非常に嬉しかったのですが、さらに素晴らしかったのはその後。私から「信じて放っておくべき」という話を聞いて、その母親は家に帰って、「今日船口先生に相談に行きました。どうしても心配になってしまって、ついあなたに過剰に関わってしまいそうになる。でも今日からぐっと堪えて、何も言わないように、お母さんも自分と戦うね」と子供に宣言したそうです。この宣言をきっかけにこの親子の関係は良好になり、受験後、親子で私にお礼を言いに来てくれました。

 一概に保護者に対して「塾に相談に来てください」とはお勧めできません。親が塾に相談に行くことを子供が嫌がることも多いですし、自分の心配事を解決するためだけに相談に来る自己中心的な保護者も多いからです。この母親の良かった点は、まず相談相手として「子供が楽しそうに授業を受けている」先生を選び、隠さずにきちんと「あなたのことを思って相談に行った」と伝え、さらにそれまでの自分の態度を反省し、これから挑戦することを宣言したこと。自分の悩み解決のために相談に来たのではなく、すべてにおいて子供目線でいたことがとても素敵だと思うんです。

真剣に向き合うほど得られるものも大きい

--最後に、これから入試に臨む受験生に、エールをお願いいたします。

 受験は本人たちが思っている以上に得るものが大きい人生の一大イベントです。「諦めないで最後までやるのが大事」とよく言いますが、本当にその通りだと思います。「試験が始まるギリギリまで見ていたページが出題された。僕は奇跡の合格なんです」という手紙を毎年もらうんですが、それに対して「その奇跡は起きた奇跡ではなくて、諦めなかった君が起こした奇跡だよ」という言葉を返します。

 受験では「最後まで諦めなかった」という事実は非常に重要です。諦めそうになるのを「もう少し頑張ろう」と思えるのは「前を向く力」があるからこそ。受験生の皆さんには、前を向いて、今日よりも明日、明日よりも明後日とちょっとずつ良くなっていく毎日であってほしいと願っています。

 「世の中なんて何も変わらない」と嘆く生徒もいますが、自分が同じところにいたら景色は変わりません。景色を変えようと思ったら自分が動くこと・変わることが大切です。同じものでも違う角度から見れば全然違うものに見えますし、同じ言葉でも違う気持ちで聞き直してみると、新たな視点が得られる可能性も高い。その新たな視点を得るために、他者からのアドバイスを大切にしてほしいですね。

 年上からのアドバイスだけではなく、年下からの言葉もぜひ参考にしてみてください。志望校を決めるときに、小学1年生の妹の「お姉ちゃんには美容師になってほしい。小さいころ私の髪を結んでくれたときのお姉ちゃんすごく楽しそうだったから」という言葉で進路を決めたという子もいました。

 代ゼミの授業が90分で本当に良かったと思う理由の1つが、授業をするだけでなく、一見すると横道に外れた話題も話せる余裕があること。大学受験は大きなものだけに、しっかり向き合うことで、合格・不合格とは別次元の大きな収穫を得られます。親子を含めた人間関係も、人間としての心の力も。裏を返せば、楽に通り過ぎれば楽に通り過ぎるほど、得られるものも少ない。「大変」は漢字で「大きく変わる」と書きますが、真面目に向き合えば向き合うほど、人生における感動的なドラマになります。目を逸らさずに、しっかり向き合ってほしいですね。

--ありがとうございました。

受験を親子ともに挑戦し、成長するチャンス

 船口先生は取材中、時折涙を拭う場面もあった。「講師の代ゼミ」がそう称される所以が見えた、情熱溢れるインタビューだった。大学受験は決してゴールではなく、人生の1つの通過点。でも、その一大イベントに親子ともに真剣に向き合い、それぞれが挑戦し続けることで、単なる合否だけでなく「前を向く心の力」や「子供を心底信じて待つ力」、「お互いが心地良いと思える親子の形」が得られる、人生のターニングポイントにもなる。受験生の悩みに常に寄り添い、ひとりひとりを信じて励ましてきた代ゼミ講師の視点だからこそのアドバイスに、受験生も保護者も励まされたのではないだろうか。

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《羽田美里》

羽田美里

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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