【夏休み2023】子供たちの好奇心を形に…ソニーの「プログラミング的思考コンテスト」の魅力

 ソニーの教育プログラムCurioStep主催の「サマーチャレンジ2023」。その一環として行われる「大切な人のワクワクをつくるしかけコンテスト」の審査員を務める松丸亮吾氏、小森勇太氏、シッピー光氏に、昨年のようすや、このコンテストの意義などについて話を聞いた。

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【夏休み2023】子供たちの好奇心を形に…ソニーの「プログラミング的思考コンテスト」の魅力
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 小中学生が興味をもった身近な課題の解決に向けて自由に発想し、創作した作品を発表することで好奇心や行動力を発揮することを目的にスタートした、ソニーの教育プログラムCurioStep(キュリオステップ)の「大切な人のワクワクをつくるしかけコンテスト」。2年目となる今年は、2023年6月15日から9月3日まで作品を募集している(プログラミング用ツールのレンタルは7月9日まで)。

 当コンテストの審査員を務める、謎解きクリエイターでRIDDLER代表取締役の松丸亮吾氏、ライフイズテック取締役副社長COO/共同創業者の小森勇太氏、ソニーグループ サステナビリティ推進部シニアゼネラルマネジャーのシッピー光氏の座談会を実施。昨年のコンテストのようすや、このコンテストの意義などについて話を聞いた。

愛があふれる個性豊かな作品たち

--まずは昨年の審査で、みなさんの印象に残った作品を教えてください。

松丸氏:グレートアイデア賞の「赤ちゃん人形 あーちゃん」が印象に残っています。なぜかというと、「装置」(この作品ではMESHブロック)が隠されていたからなんです。

 世の中の「動く」ものやサービスの多くは、それを動かすために「装置」が必要です。ところが商品化されたものはその装置がむき出しになっていません。この作品は人形の中に装置が隠されているのですが、小学生でよくその点に気付いたなと思いました。装置を隠すのは大変ですし、修正が必要になったときには装置を取り出す必要があります。それでもあえて隠している。物やサービスの体験価値や体験的な喜びを高めるためには、マシンという感覚がないほうが良いですものね。

謎解きクリエイターでRIDDLER代表取締役の松丸亮吾氏

小森氏:私はクールギミック賞の「ママおしごとおつかれさまプログラム」が印象に残っています。課題設定が明確で、お母さんは疲れているときにどんな行動をするのか、どんなことが好きなのかなど、親子だからこそわかる部分が本当に丁寧に描けていた。そしてひとつひとつの課題に対応するギミック(しかけ)が作られていました。ものづくりの際、課題設定と解像度の高さは重要なポイントです。こうした観点は、世の中のさまざまな課題を解決する礎になると思うんです。

ライフイズテック取締役副社長COO/共同創業者の小森勇太氏

シッピー氏:私はすべて印象的でしたが、特に小学校高学年部門の最優秀賞「毎日わくわく!スクワット応援ROBOスクワクくん」ですね。

 お父さんが毎日スクワットを続けるために何が必要かを考え、回数を測って目標を達成すると応援メッセージが送られるなど、課題を解決するためのさまざまなしかけがありました。受賞者への副賞としてソニーグループ本社で開催したイベントで作者のお子さんとお父さんにお会いしましたが、作品づくりにとても意欲的なお子さんで、お父さんはそれを優しく見守るといった親子関係も素敵でした。

ソニーグループ サステナビリティ推進部シニアゼネラルマネジャーのシッピー光氏

--昨年の審査全般を振り返って感じたことはありますか。

松丸氏:レベルが高いアイデアばかりで、純粋に子供たちの思いを感じました。また、しっかりとニーズに合わせて作るということが自然にできていて感動しました。1つの機能に特化して作られているのではなく、同じハードでいくつもの使い方や機能があるなど、多角的に考え、創意工夫された作品も多くありましたね。

小森氏:ひとことで言うと「愛」を感じました。誰かが困っているものを解決したい、喜ばせたいという強い思いと、自分のものづくりへのワクワクが両立している作品が多かったです。誰かに対して、あるいは、ものづくりに対して愛があふれるというのは大切で、それが自然とできている作品が多かったのには感心しました。

シッピー氏:大切な人をよく観察して、その人をどういうシチュエーションでワクワクさせられるのか考え抜かれた作品が多かったですよね。本当に多様なアプローチがあったのですが、限られた技術を駆使してできることを粘り強く考えられている点も印象深かったです。

昨年(2022年)の審査のようす

課題を見つけてあきらめずにやり抜く力を

--このコンテストに参加することで、子供たちのどんな能力が引き出されて、将来どんな場面で発揮できると思われますか。

シッピー氏:このコンテストでは、自分で課題を見つけ、考えることを大切にしています。大切なのはツールや技術をどれだけうまく使いこなせるかではなく、技術と知識を「誰のために」「どう使うか」という視点で課題を設定し、その課題に対してどのように工夫をして最終地点に到達するのか、アイデアをかたちにする力です。そのため、このコンテストでは、プログラミング用ツールを使用することを必須としないことで選択肢を広げ、より多くのお子さんにプログラミング的思考でアイデアをかたちにする体験をしてもらいたいと考えています。

小森氏:やはり試行錯誤は大切ですよね。プログラミングというのは、プログラムに新しい機能などを組み込む「実装」という段階で、必ずと言って良いほど「やってみないとわからないこと」が出てきます。ですので、とりあえずやってみて、ダメだったら何度でもやり直してみるという経験は、プログラミング的思考を養ううえでも重要です。

 コンテストに向けて自分がこれをやりたいと課題解決のイメージができても、実際に手を動かしてみたら失敗したという経験をたくさんすると思いますが、そのプロセス自体が素晴らしいものなのです。課題解決のアイデアから実装までを子供たちで行うのが、このコンテストの特徴のひとつでもあります。

「まず取り組んでみて、ダメだったらできるまで何度も試行錯誤する経験が大事」と小森氏

松丸氏:これからの社会を生きる子供たちは、学校で教えてもらうような「解法を学んで答えを出す」だけでは得られない力を求められると思うんです。社会人になってから必要とされる力とも通じるのですが、世の中の課題を自分で発見する力、自分から問題点に気付いて解く力は、学校の勉強だけではなかなか身に付けられない。

 社会の中の課題というのは答えが存在しないものなので、自分で問題を発見・分析して、さらに創意工夫を重ねる必要があります。そのうえで、アイデアとアイデアを掛け合わせて、自分の中で最善策を探さなければならないので、誰かに教えられたらできるようになるというものではないんですよね。

 だからコンテストに参加して自分で一から考えて行動するという経験は、大人になってからも社会のために何ができるか、自分で考えられるようになると思うんです。そういう意味で、非常に意義のあるものだと思います。コンテストのテーマは「大切な人をワクワクさせる」という、日常の遊び心にも通ずるような子供の視点でも取り組みやすいものだと思うので、チャレンジしやすいのではないでしょうか

小森氏:誰かのために何かをすると変わるということを自分で体感するのは、大事な観点なんですよね。自分がやったことで相手が本当に喜んでくれている、課題が解決していると感じられたときって、「自己効力感」が培われるんです。この感覚は大人になってからも極めて重要な力。コンテストに参加することで、お子さんひとりひとりの「自己効力感」がおおいに引き出されるんじゃないかと期待しています。

松丸氏:僕たちは審査員という立場上、賞を決めてはいますが、本来勝ち負けを決めるものではないのだと子供たちには思ってほしいです。参加して一生懸命に考えることがいちばん大切で、受賞することが正解ではないと思っています。だからこそ、まずは気軽な気持ちで参加してもらいたいですね。

子供たちのチャレンジの場に

--ソニーがこのコンテストを通じて目指していることは何でしょうか。

シッピー氏:CurioStepを立ち上げる際に、これからの時代を生きる子供たちにソニーとして何を提供できるのか、社内でいろいろと議論し、「好奇心を育む機会を提供する」というコンセプトが決まりました。CurioStepでは、ワークショップの開催などを通して、さまざまな「興味の種」をまき、その中から子供たち自身で何かに興味をもってもらい、それを育てていくプログラムを開催しています。コンテストは、その好奇心を原動力に、チャレンジする機会として位置付けています。

 ソニーはPurpose(存在意義)を「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」としています。そして、みんなが豊かに暮らせる社会や地球環境を作ることをサステナビリティのひとつの考え方としていますが、その最初のステップは、身近にいる大切な人がワクワクすることであり、そこから感動が広がること。ソニーの考えるサステナビリティの実現の意味でも、このコンテストが、子供たちが感動を生むクリエイターになるひとつのきっかけになってほしいと考えています。

このコンテストの意義を語るシッピー氏

--今年の応募作品に期待していることをお聞かせください。

松丸氏:僕は個性的なアイデアほど面白いと感じてしまうんですよね。そうした個性的なアイデアにたどり着くまでには、相当な分析と労力が必要です。最初に話した「赤ちゃん人形 あーちゃん」では、装置となるマシンを隠すことは必須ではありません。ただ「赤ちゃん」の形状を再現するという演出を高める中で出てきた必然的なアイデアでした。それを取り入れることで、結果的にいちばんの個性になったと思っています。

 たとえば、実現したい課題や形にしたいものがあったときに、それをどうやったら体験価値をより高めることができるのか、演出を考えてほしくて、考えていけばいくほど、個性的なアイデアがどんどん生まれると思います。妥協せずに締め切りギリギリまで…締め切りは過ぎたらダメだけど(笑)、考え抜くことを期待しています。

小森氏:昨年はコロナ禍にまつわる課題が多かった印象でした。今年はより自由度を高く、自分が本当に好きなものを追求してもらえると良いと思っています。審査員は最後のアウトプット部分を見るだけではありますが、それでも、作るプロセスを楽しんでいるなとか、好きじゃないとここまで考えられないよねといったことは感じられます。シンプルに自由に発想して、過程を楽しむことを期待しています。

シッピー氏:私たち審査員にとっても、審査を通じて子供たちの「たくさんのワクワク」を想像できる貴重な機会です。今年もたくさんの方に参加いただいて、たくさんのワクワクの詰まったアイデアをいただけたらと思います。

「好き」に全力で取り組んでほしい

--保護者はお子さまに対してどうアプローチすれば良いとお考えですか。

松丸氏:さきほど「個性」という言葉も出ましたが、個性とは、何かを突き詰めて獲得できるものだと思います。何かひとつ信じられないぐらい飛び抜けて時間を注いだ経験…たとえばゲームをとことん突き詰めた経験をもっていれば、将来、ゲーム業界やエンタメ業界でとても重宝される人材になるんです。何の話をしても、「あ、なんちゃらのゲームの話ですよね、それって…」みたいな感じで説明できるとか。それは才能というよりも、小さいときに好きなことを突き詰めた努力の結果なんですよね。だから子供たちがやりたいと言ったことに対しては後押しして欲しいし、チャレンジしたくなるモチベーションづくりを保護者の方には意識してほしいです。

小森氏:私が保護者の方に大事にしていただきたいのは、「子供の自己決定の機会を奪わない」ということ。もちろん教えることが必要な場面は多いのですが、一方で、子供の思考する瞬間を奪う行為でもあることは理解しておいてほしいと思います。

シッピー氏:そういう観点からすると、前回のコンテストの受賞者イベントでお話しさせていただいた保護者の方は、自分が教えるのではなく「見守っています」という方が多かったです。子供が好きなことだから、自分はプログラミングがわからないけれど応援していますといった感じでした。

松丸氏:その話、とても納得感があります。僕自身、子供時代に親に何かを聞いたときに答えを教えてもらえず、調べる方法だけ教えられることが多くて。今でもわからないことがあればすぐに調べる癖がありますが、それは親の教育のおかげかもしれません。

シッピー氏:保護者の方も、これからの時代は今まで自分の経験してきた教育のあり方とは少し違うのではないか、と感じているとは思うんですよね。そしておそらく「自分で考える」ことの大切さは、感じていらっしゃるのではないかと。このコンテストだけがその解ではありませんが、チャレンジする機会のひとつとしてとらえていただけたら嬉しいです。

「子供時代に好きなことを突き詰めた努力の結果が個性となり、それが将来生きてくる」(松丸氏)

--最後に子供たちへのメッセージをお願いします。

シッピー氏:自分で課題を探して、解決のために考えていくプロセスを経験することはきっと成長につながると思いますので、ぜひチャレンジしてほしいです。小学生だけでなく中学生にも良い機会です。とても楽しみにしています。

小森氏:大切な人をワクワクさせることにワクワクしてください。そこから出てくるアイデアや試行錯誤の経験は、とても意味のあることです。何か解決したいと思ったときには、「その前後にももっと何かあるかもしれない」と視野を広くして探してみるとか、「お父さんのために解決したことだけれど、お母さんのためのものもできるかもしれない」といったふうに転用を考えていくと、より良い課題解決に結び付くのではないかと思います。

松丸氏:僕はどちらかというと勉強は苦手でしたが、小学3年生ぐらいのときに謎解きにハマって、問題を作ってほめられたことがすごく嬉しくて、それによって自己肯定感が生まれて勉強も頑張ってみようと思えるようになりました。

 「自分は勉強ができない」「こんなコンテストは無理」と感じている子もいるかもしれません。でも実はそれは錯覚だったりします。このコンテストでは、自分の好きなことを評価も気にせずに全力投球すれば、こんな世界がある、勉強だけがすべての価値尺度じゃないと気付けるはず。「好き」を全力でぶつけてほしいと思います。僕たちも作品にはすべて目を通すので、ぜひ「自分の大切な人をワクワクさせるしかけ」をひとつでも多く届けてほしいです。

--ありがとうございました。

フランクでリラックスした雰囲気の中で対談は終了した

 CurioStep「大切な人のワクワクをつくるしかけコンテスト2023」は2023年9月3日に応募が締め切られ、10月中旬には結果が発表されるという。プログラミング用ツールを使いたいけど、持っていないという方も気軽にチャレンジできるよう、ツールのレンタルや、基本的な使い方を学べるワークショップも用意されているという(7月9日(日)まで募集)。また対談中にも話があったように、必ずしもプログラミング用のツールを使用しなくても良いため、子供たちが気軽に参加できるコンテストと言えよう。

 対談では、たくさんのワクワクがあふれ、また改めて保護者の見守りが大切だと痛感した。多くの子供たちが、このコンテストの参加を通じて、好きなことに没頭できる夏を送れるよう期待している。

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《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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