不眠症に幼少期のいじめや家庭内暴力が関連…筑波大

 筑波大学は2023年7月19日、つくば市を中心とした筑波研究学園都市交流協議会に属する研究機関の労働者を対象とした調査により、幼少期のいじめや家庭内暴力の被害経験は労働者の不眠症に関連するとの研究結果を公表した。

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 筑波大学は2023年7月19日、つくば市を中心とした筑波研究学園都市交流協議会に属する研究機関の労働者を対象とした調査により、幼少期のいじめや家庭内暴力の被害経験は労働者の不眠症に関連するとの研究結果を公表した。

 不眠症は、肥満、糖尿病、心血管疾患、精神疾患など慢性的な健康状態のリスクを高めるとされており、日本では成人の不眠症が人口の10%程度に認められ、もっとも重要な健康問題の1つとなっている。一方、不眠症には社会経済的な要因や喫煙、運動不足などの生活習慣要因と関連していることが報告されている。また、労働者においては仕事のストレスが不眠症の職業的危険因子と考えられており、さまざまな要因が関わっているが、近年、成人の健康影響において注目されているのは幼少期の体験だという。

 18歳までの身体的、心理的、性的虐待やいじめ被害、家族機能不全の経験は、逆境的小児期体験(ACE)と呼ばれ、ACEをもつ人は、健康的に脆弱であることが明らかになっている。家庭内暴力(DV)被害もACEに含まれる。しかしながら、ACEが労働者の不眠症に及ぼす影響については、世界的にみてもほとんど報告がなかったという。

 そこで、研究チームは茨城県つくば市を中心とした研究機関の労働者を対象として、筑波研究学園都市交流協議会労働衛生専門委員会が2017年に実施した「第7回生活環境・職場ストレス調査」のデータを2次利用し、20~65歳の男性4,509人、女性2,666人、平均年齢44歳の計7,175人について解析を行った。

 その結果、アテネ不眠尺度(AIS)で不眠症と判定された者は2,997名(41.8%)であった。また、いじめやDVの被害経験は不眠症と関連しており、特にDV被害経験は、経験した時期が多いほど不眠症の起こしやすさが高くなった。この傾向は、年齢、最終学歴、世帯年収、婚姻状況、居住地、通院歴といった個人特性や、労働ストレスや所属、職歴という職業要因、運動や喫煙といったほかの生活習慣の影響を考慮しても同様であったという。

 研究により、幼少期のいじめ被害やDV経験が、労働者の不眠症と関連することが示された。いじめやDV被害などのACEをもつ労働者は、そうでない労働者よりもヘルスケアサービスを求める傾向があることが報告されている。筑波大学は、産業医や保健師などの産業保健職は、日頃の活動でACEをもつ労働者を認識したときに、不眠症について注目することが重要であると考えられるとコメントしている。

《いろは》

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