【無料試し読み】「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと(2)

 SBクリエイティブの協力により、星友啓著『「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと』の第一章を紹介する。

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「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと
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 さまざまな情報が飛び交い、先の見えない今の時代。だからこそ「子育てこそ科学的エビデンスが必要」というのは、スタンフォード・オンラインハイスクールの校長の星友啓氏だ。氏は現在、世界40か国以上からの中高生とその保護者をサポートしつつ、スタンフォード・オンラインハイスクール入学を希望する小学生の支援プログラム運営も行っているという。

 SBクリエイティブの協力により、星氏の著書『「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと』の第一章を紹介する。

第1章 子供の脳と心について知っておくべきこと(2)

子供の脳の9割は5歳までに完成する!?

 このように、ごく自然に思える子育ての習慣の中にも、先端科学から考えると、見直すべきものがいくつもあります。そこで、ハーバード大学の「子供の発達センター*2」がまとめた最新の脳科学と心理学の成果から、子育てに役立つ情報をいくつか紹介していきましょう。*2 https://developingchild.harvard.edu/guide/what-is-earlychildhood-development-a-guide-to-the-science/

 最初に取り上げるのは、「子供の脳の9割は5歳までに完成する」というお話。

 まったく同じといかないまでも、「3歳までに」とか「8割がた」とか、似たような主張を耳にしたこともあるかもしれません。そのようなことを聞けば、ものすごく若いうちに脳の成長がおおかたストップしてしまうと思ってしまいます。

 いったいどういうことなのでしょうか。非常に誤解されがちな内容なので、しっかりと理解していきましょう。

 まず、図2をご覧ください。

*3 C.A. Nelson (2000), The Neurobiological Bases of Early Intervention. In J.P. Shonkoff & S.J. Meisels (Eds.), Handbook of Early Childhood Intervention (2nd ed., pp.204-228). Cambridge University Press: Cambridge.

 それぞれの曲線は子供の認知能力の発達の度合いを示しています。視覚、聴覚などの知覚能力は、生まれてから数か月をピークに発達しますが、5歳を迎える頃には発達が収まっていきます。つまり、子供が物を見たり、音を聞いたりするといった知覚能力は、かなり早い段階で完成しているということです。

 同様に、言語能力も、1歳を待たずして急速に発達し、5歳を迎える頃には、グラフが急降下して、成長の度合いが小さくなっています。つまり、言葉を発したり、言葉を認識するための基礎的な能力も5歳までにおおかた出来上がってくるということになります。

 その一方で、高度な認知機能の発達は、1歳から3歳ぐらいのピークを過ぎても、発達の度合いが急激に落ちることはなく、10代半ばまで続きます。つまり、難しい話や文章を理解したり、計算したり論理的に考えたりといった、高度な認知能力をサポートする脳の働きは、5歳以降も発達し続けるのです。

 このように、「子供の脳の9割は5歳までに完成する」という主張は、ごく基礎的な認知能力に限定した話です。より高度な能力をサポートする脳の発達は、5歳以降も続くのです。そのため、「5歳までにやらなかったからダメだ」などと諦めたり、卑下したりする必要はまったくありません。

脳は学ぶたびにいつまでも変わり続ける

 実際に、脳は私たち人間が何かを体験するたびに変わり続けていきます。子供であろうが、大人であろうが、私たちの脳はどんな小さなことでも、学ぶたびに変化し続けていくのです。

 このイメージが非常に大切なので、少し詳しく説明していきましょう。

 私たちの脳には860億個*4ほどの「ニューロン」と呼ばれる神経細胞があり、それぞれが数多くの他のニューロンと結びついて、複雑なネットワークをつくっています。これが「シナプス結合」です。 *4 H.H. Suzana (2012), The remarkable, yet not extraordinary,human brain as a scaled-up primate brain and its associated cost PNAS, 109(1); pp.10661-10668.

 その中で、ニューロンがシナプスを介して、電気信号をやりとりしています。まさにニューロン同士が作る電気回路のイメージです。

 たとえば、私たちが何かを体験し、その体験から学ぶとき、脳に電気パルスが走り多数のニューロンが「発火」します。そのとき、同時に発火したニューロンをつなぐ新しいシナプスが形成されたり、既にあるシナプスが大きくなったりするのです。何かを学ぶと、その学びに対応するニューロンの回路が強化され、次に似たような状況に遭遇したときにそれらのニューロンが活性化しやすくなります。

 つまり、私たちが学ぶたびに、脳は変化するのです。何かを学ぶたびに、数百万というニューロンがなんらかの形で変化するところをイメージしてみましょう。変化のプロセスは、数時間から数日かかることもあり、多くの栄養とエネルギーが必要で、小さな子供であれば、全身で消費されるエネルギーの50%が脳で費やされることもあります*5。 *5 C.W. Kuzawa, et al (2014), Metabolic costs and evolutionary Implications of Human Brain Development. PNAS, 111(36); pp.13010-13015.

 基礎的な認知能力が早い段階で完成に近づく一方で、その後も脳は変化し続けます。5歳を過ぎてからも脳の大切な成長はずっと続いていくのです

子供の脳の発達を妨げる最悪な習慣

 とはいえ、生まれてから5歳までの時期が子供の脳の成長に最も大事な時期の一つであることは間違いありません。この時期に子供の脳の発達をサポートするために最も重要なのが、ストレスをかけ過ぎないこと

 小さな子供の脳は、人間のDNAの設計図に従って、基礎的な脳の機能をどんどん発達させていきます。

 しかし、長期的に恐怖や不安などの、極度のストレスをかけると、脳の自然な発達が妨げられてしまいます*6。 *6 National Scientific Council on the Developing Child (2010), Persistent Fear and Anxiety Can Affect Young Children’s Learning and Development: Working Paper No.9. Retrieved from https://developingchild.harvard.edu/

 極度のストレスは、大人の脳にとっても悪影響を及ぼし、集中力や記憶力の低下につながることが知られています*7。 *7 F. Persistent and C. Anxiety Affect Young Children’s Learning and Development (2010), Working Paper No.9. National Scientific Council on the Developing Child. Retrieved from https://developingchild.harvard.edu/

 そのため、特に小さな子供の脳の発達には、極度のストレスを避けることが非常に重要です。 それでは子供に極度なストレスを与える環境とはどんなものでしょうか?

 もちろん、身体的な虐待はもっての外で、怒鳴りつけたり、罰を与えたりすることで、子供の心に過度のストレスをかけてしまうこともあります。また、長期的な家族の不仲や子供のニーズに応えずに無視し続ける「育児放棄」は、体罰と同レベルの悪影響を及ぼします*8。 *8 https://developingchild.harvard.edu/science/deep-dives/neglect/

 さらに、子供の将来を心配し過ぎて、無理にあれこれとやらせ過ぎてしまい、徐々にストレスをかけてしまうこともあるため気を付けなくてはいけません。

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