教員人材の確保策…大学院修了者の奨学金を全額免除へ

 文部科学省は2024年3月19日、優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援のあり方について議論のまとめ案を公表した。教職大学院を修了して教師となった正規採用者を中心に、日本学生支援機構の奨学金返済を全額免除する方針を示している。2024年度実施の教員採用選考受験者からの適用を目指す。

教育業界ニュース 文部科学省
安定的な教師志望者の確保に向けて
安定的な教師志望者の確保に向けて 全 3 枚 拡大写真

 文部科学省は2024年3月19日、優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援のあり方について議論のまとめ案を公表した。教職大学院を修了して教師となった正規採用者を中心に、日本学生支援機構の奨学金返済を全額免除する方針を示している。2024年度実施の教員採用選考受験者からの適用を目指す。

 教師の奨学金の返還免除については、中央教育審議会の特別部会が2023年8月、提言「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組む施策」において、教師のなり手確保のため「奨学金の返還支援に係る速やかな検討を進める必要がある」としていた。

 3月19日開催の第141回中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会では、優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援のあり方について議論のまとめ案を公表。教師となった者への奨学金返還支援の意義・目的として、教職の高度化につなげるべきという「質の向上の観点」と、教師志願者の拡大につなげるべきという「量的な観点」の両方をあわせもつべきとした。

 また、教師不足や採用倍率の低下など、現在の教師を取り巻く状況を鑑みて、スピード感をもって実行に移していくため、現行制度を活用できることは速やかに具体化を進めながら、さらなる充実方策を引き続き追究していくことが重要としている。

 具体的には、「教職大学院を修了し教師となった者を中心に返還免除を実施すべき」と提言。教職大学院を中心に返還免除を行うことで、教師の指導の質向上や高度専門職としての社会的地位向上が期待できるとした。採用選考などに合格した正規採用者が対象。2024年度に実施される教員採用選考などの受験者から適用できるよう速やかに具体化を進めていく。

 教職大学院に加え、高度で多様な専門人材確保の観点から、「教職大学院以外の大学院を修了し教師となる者も対象に含めていくべき」とも提言。教職大学院以外では、教職課程を履修し教員免許状を取得しても教職を目指さない学生が含まれていることから、実習を通じて学校現場の課題を把握し、解決のための学修に取り組んでいることなどを条件に設定することが考えられるとした。

 文部科学省によると、2023年度の正規教員の採用者数は、教職大学院が753人(国公私立)、教職大学院以外の大学院が518人(公立のみ)、大学(学部)短大が1万4,794人(公立のみ)。学部段階の奨学金の返還免除を含めた支援充実に向けては、大学院を対象とした返還免除制度の具体化で得られた成果を生かしながら、引き続き検討を進めていくことが必要だとした。

 教育職に対する奨学金返還免除制度は、教員の採用倍率の改善、教員優遇への公平性、奨学金に充てる資金の効率的運用を理由として1998年度に学部段階、2004年度に大学院段階で廃止された経緯がある。会議では「一度廃止した制度を復活させるには相当の根拠を要する」「過去に廃止されたときとの状況の違い、定量的な検証も必要」「実施するのであれば覚悟を決めて、途中でやめない」などの意見が出たという。

《奥山直美》

【注目の記事】

この記事の写真

/

特集