通信制高校、卒業時進路未決定率32%の現実…開志創造高校が挑むキャリア教育とは

 新潟を拠点に教育関連事業、食、アニメなど14事業を展開するNSGグループが、2025年4月に広域通信制 開志創造高等学校(認可申請中)の開校を目指している。進路未決定率0%を目指す学校づくりに奔走する開校準備室の高橋氏、木村氏、遠藤氏に開校への思いやカリキュラム、保護者へのメッセージなどを聞いた。

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左から、開志創造高等学校 開校準備室 企画 木村あみ氏、室長 高橋俊也氏、教務 遠藤優一氏
左から、開志創造高等学校 開校準備室 企画 木村あみ氏、室長 高橋俊也氏、教務 遠藤優一氏 全 9 枚 拡大写真

 通信制高校への注目度が年々高まる中、新潟を拠点に教育関連事業、食、アニメなど14事業を展開するNSGグループが、2025年4月に広域通信制 開志創造高等学校(認可申請中)の開校を目指している。

 通信制高校に進学する生徒が増える一方で、卒業後進路未決定率は32%という現状を社会課題と捉え、進路未決定率0%を目指す学校づくりに奔走する開校準備室 室長 高橋俊也氏、教務 遠藤優一氏、企画 木村あみ氏の3名に開校への思いやカリキュラムの特徴、保護者へのメッセージなどを聞いた。

左から、開志創造高等学校 開校準備室 企画 木村あみ氏、室長 高橋俊也氏、教務 遠藤優一氏

教育事業50年、NSGグループが通信制高校にかける思い

--まず、NSGグループとNSGグループの教育事業について教えてください。

高橋氏:NSGグループは大学・専門学校・高等学校の学校教育事業、学習塾・各種スクール・検定・出版事業などの教育関連事業、医療事業、福祉・介護事業、健康スポーツ事業、建設・不動産事業、ビジネスソリューション事業、 ICT事業、EC事業、環境・エネルギー事業、食・農業事業、生活サービス事業、エンターテイメント事業、アニメ・マンガ事業など14事業108法人、従業員数1万2千人以上という企業グループです。

 NSGグループでは今、新潟県内に4つの大学のほか、専門学校34校、高校2校、福島県に専門学校5校を有しています。学習塾も80教室展開しており、教材出版や検定資格の運営も手掛けています。こうした教育事業50年の実績を生かし、2025年4月に開校予定の「広域通信制 開志創造高等学校」を支えていきます。

開志創造高等学校 開校準備室 室長 高橋俊也氏

--教育事業を多数展開する中で、通信制高校を開校される背景についてお話しください。

高橋氏:少子化の影響もあり全日制高校の生徒数が7年で36万人ほど減少している中で、通信制高校の生徒数は7万人ほど増加しています。背景にはやはり不登校生の増加があります。また柔軟な教育環境を求めるニーズがあり、通信制高校ならば芸術やスポーツ、さらにeスポーツなど自分のやりたいことと学業を両立できるため、中学生の進路選択もかなり多様化しているといえるでしょう。

 多様な子供たちの受け皿をつくるという課題が解決された一方で、私共が大きな課題と感じているのは、通信制高校卒業後の進路未決定率の高さです。全日制高校の進路未決定率は約4%で、進路を決めて卒業することが当たり前。その4%の大半は大学進学に向けた既卒受験生(浪人生)です。通信制高校の進路未決定率は平均で約32%と、およそ3人に1人が進路未決定のまま卒業しています。卒業後2年間経過では約24%、卒業後7年間経過では約18%が何もしていないという調査結果もあり、これは通信制高校が改善すべき社会課題だと捉えています。

全日制高校と通信制高校生徒数推移と通信制課程の卒業後の状況(資料提供:開志創造高等学校 開校準備室/資料内調査結果出典:文部科学省「学校基本調査」)
進路未決定者のその後の状況(資料提供:開志創造高等学校 開校準備室/資料内調査結果出典:新しい学校の会「通信制高校卒業生1600人調査」)

独自のキャリア教育で卒業時の進路未決定率0%を目指す

--生徒の進路が決まらない理由は何でしょうか。

高橋氏:通信制高校を卒業した後、働こうか、学ぼうか…と生徒が考えたとき、調べ方や考え方などの手段がわからず、自分では動けないこと、将来をイメージできないことが、進路が定まらない理由だと考えています。開志創造高校は、NSGグループの教育機関や企業と連携し、ほかの通信制高校に真似できないキャリア教育を行い、卒業時の進路未決定率0%を目指します。

木村氏:私たちの強みは、多様な事業をもつグループと日本最大級の専門学校群による幅広い教育です。豊富なリソースに基づくキャリア教育は、生徒たちが抱える多くの課題を解決できると思います。

遠藤氏:自分の可能性を自分で限定してしまうことで、社会への適応が難しくなる場合があります。この学校ではいろいろな可能性を見つけて先につなげてもらいたい。コミュニケーション力や社会性を育む場として安心してチャレンジしてもらいたいと考えています。

--開志創造高校の特徴について教えてください。

遠藤氏:開志創造高校は高校卒業資格に必要な74単位を、無理なく無駄なく3年間で修得できるカリキュラムを設定しています。重きをおくキャリア教育では、NSGグループの専門学校や大学での「キャリア体験学習」で自分の可能性や進路を見つける土台を作り、「実践行動学」の授業では人生を切り拓く人間力を育みます。さらに働くとはどのようなことかを知る「職業体験」があります。これら3つで構成されるキャリア教育を積み重ねて、生徒は自分の進路を考えながら高校卒業を目指します。

独自のキャリア教育で卒業時の進路未決定率0%を目指す(資料提供:開志創造高等学校 開校準備室)

--学習環境について教えてください。

遠藤氏:生徒は普段はオンラインで学習を進めます。「だれもが、いつでも、どこでも」学べるが開志創造高校のスタイルです。インターネット接続環境があれば、自分のパソコンなどのカメラ付きデバイスでどこからでも学習できます。また自律的な学習やモチベーションの維持を図るために、メタバースキャンパスを設置します。メタバースキャンパスに登校(ログイン)し、自学自習や課題、ライブ授業、アーカイブされた映像コンテンツを活用して学習を進めていきます。

 メタバースキャンパスでは自分でアバターのキャラクターを設定し、先生や他の生徒と会話ができます。自分で作成した時間割にしたがって、自分のペースで仲間と共に学習を進めます。職員も常駐するので相談しやすい環境になるでしょう。メタバースキャンパスの教室では定期的にホームルームも開催し、ライブ授業や文化祭、講演などのイベントも実施する予定です。

 さらに、生徒ひとりひとりに担任がついて個別指導できる体制を整えます。担任は生徒と一緒に相談しながら時間割を作り、振り返りながら進めます。担任はプロのキャリアコンサルタントから指導を受け、キャリアサポーターとして進路サポートも行います。メンタル面ではオンラインで相談できるスクールカウンセラーを設置し、大学進学ではNSGグループの学習塾とも連携して、合格に向けたサポートを整えます。

開志創造高等学校 開校準備室 教務 遠藤優一氏

 オンラインの自主学習に不安な場合はサポート校に通うこともできます。開校初年度は青森県弘前市、埼玉県熊谷市、熊本県熊本市、新潟県上越市にある4つのサポート校と連携します。普段はサポート校に通い、スクーリングは新潟に来る形です。サポート校に在籍する生徒は、サポート校と本校のダブル担任で支えます。

幅広いキャリア教育が魅力の「レインボースクーリング」

--スクーリングについて教えてください。

木村氏:自分のキャリアの幅をカラフルな色でイメージしてほしいという願いから、“レインボースクーリング”と名付けました。レインボースクーリングは、通常の座学と教科に関わる実習+専門学校や大学に行くキャリア体験学習+職業体験のセットです。「キャリア体験学習」は卒業に必要な30時間の特別活動として位置付けられ、新潟に来たタイミングで、私たちのグループがもつ4つの大学と34の専門学校の中から2つの分野・2つの学校に訪問し、プロの先生から学びながら手を動かして体験します。

 前期・後期の年2回のスクーリングで、1年に2分野2校ずつ計4分野、3年間で12分野12校の職業や専門分野の学びを体験できる仕組みです。加えて任意の「職業体験」で実際に企業や事業を展開する団体を訪れて、キャリア体験学習に関連した職場の仕事を1日体験します。

--12分野はすべて同じでも良いのでしょうか。

木村氏:計画段階では、ある分野を極めたい生徒はずっと同じ分野で良いのではないかという考えもありました。しかし、高校生という経験が少ない中で1つに絞ってしまうよりも、知らない分野にも触れてほしいと考え、12分野は必ず経験してもらう方針です。

開志創造高等学校 開校準備室 企画 木村あみ氏

 レインボースクーリングは自分の都合の良いタイミングを選んで参加できます。そのため前期は5月・6月・7月の中から、後期は9月・10月・11月の中から選べるようにしています。また通常のスクーリングでは朝から夕方までの授業を実施しますが、7月と11月は午後から行うナイトスクーリングを設けています。これは医療など夜の仕事を体験する機会にもなり、起立性調節障害などで朝は起きられない、昼夜が逆転しているためにスクーリングに参加できないという問題を抱える生徒にも対応できます。

 なお、どのタイミングでスクーリングに参加しても同じようにキャリア体験学習や職業体験は可能です。スクーリングは基本的に月・火・水・木・金の5日間。座学や実習のほか、水曜日には専門学校や大学に行くキャリア体験学習、金曜日には任意の職業体験を設定しています。

レインボースクーリングは自分の都合の良いタイミングを選んで参加できる(資料提供:開志創造高等学校 開校準備室)

未来を創造する多様な「専攻」

--「9つの専攻」について教えてください。

木村氏:開志創造高校では卒業に必要な74単位とは別に単位外の「専攻」として、職業探求専攻、高校・大学連携専攻、開志創造大学(設置認可申請中)連携専攻、アスリート専攻、eスポーツ専攻、アニメ・マンガ専攻、海外留学専攻、医学科・難関大専攻、アントレプレナー専攻の9つを設置しています。

1.職業探求専攻
 さまざまな仕事や職種への就き方を学び、まだ目標や夢が明確ではない生徒にしっかりと考える時間を作ります。この専攻は年間専攻料が無料で、やりたいことが見つかれば他専攻に移動できます。

2.高校・大学連携専攻
 NSGグループにある開志専門職大学、新潟医療福祉大学、新潟食料農業大学の3大学19学科から興味のある講義を選んで学べる専攻です。一定の規定をクリアすれば高校在学中に大学の単位も取得できます。

3.開志創造大学連携専攻
 2025年4月に開設予定の開志創造大学(仮称:設置認可申請中)の情報デザイン学部で大学の講義を先取りして単位の取得が可能です。そのまま開志創造大学に進学すれば、高校時に取得した単位はそのまま認定されるので、他の講義の受講や時間的なゆとりが生まれます。

4.アスリート専攻
 プロのアスリートやオリンピックを目指す場合にトレーニングや遠征の時間を損なわずに高校卒業資格の取得が目指せます。競技指導はアスリートの所属チームのコーチが行い、専攻ではコンプライアンスや栄養学、引退後のキャリア形成などを学びます。

5.eスポーツ専攻
 プロゲーマーを目指す生徒が、現役のプロからオンラインによる指導が受けられます。国内外で活躍できるeスポーツ英会話や動画編集、実況配信などeスポーツに関連する仕事や必要なスキルも学べる専攻です。

6.アニメ・マンガ専攻
 同じグループに日本アニメ・マンガ専門学校や開志専門職大学のアニメ・マンガ学部、アニメーターやイベントに関連した会社もありますので、プロからの作品講評からキャリアの先につながる学びの環境が整っています。

7.海外留学専攻
 海外留学のための語学習得がメインではなく、海外で生活する現地の高校生や海外で働く日本人の方との交流を自分のキャリアに活かそうとする専攻です。英語力向上には週1回、ネイティブの先生とのオンライン授業も用意しています。

8.医学科・難関大専攻
 東進衛星予備校とコラボレーションし、私たちの通信制高校で高校卒業資格を取りながら、医学科・難関大学合格のための勉強をしていきます。開志創造高校と東進衛星予備校のダブル担任制となっています。

9.アントレプレナー専攻
 アントレプレナー教育に力を入れた開志専門職大学やNSGグループのリソースを活用しながらアントレプレナー教育を提供していきます。ビジネスコンテストへの参加や事業計画の作成から起業に結び付けます。


 入学時でも、学年の途中からでも興味をもったものを選択でき、複数専攻も受講可能です。卒業単位外の講座ですので、やりたいことを見つけた生徒がとことん極めることはもちろん、まだ自分の夢や目標を見つけていない生徒も、ゆっくり自分のペースを優先しながら、自分の未来を探ってほしいです。

本当に自分に合うと思える学校を選択してほしい

--高校選びに迷う中学生や保護者に向けてメッセージをお願いします。

高橋氏:高校進学を控えた中学生と保護者の方には、将来を見据えた学校選択をしてほしいと思います。個別相談では悩むことも大切ですと伝えることがあります。悩まずに何となく入学してしまうと、高校生活の中でギャップを感じて、他の学校のほうが良かったかもしれないと後悔することになります。多くの高校の情報を得て、お子さん自身がどのようなイメージで高校生活を送りたいのかをしっかりと考えて、自分にあうと思える学校を選んでほしいです。

 開校1年目から、編入・転入も受け入れますので、現在の高校にギャップを感じている生徒もお気軽にご相談いただければと思います。たとえば現在高校1年生で、30単位取得済みであれば、その30単位を本校にもってきて、オリジナルの時間割や履修科目を組み、31単位目から2年生でスタートし、残り2年で卒業することができます。

 開志創造高校は本気で進路未決定率0%を目指しています。生徒ひとりひとりがこれからどんな生き方や働き方をしたいのかを共に考えながら、生徒自身が最適な進路を見つけるためのサポートをしていきます。ぜひ学校説明会などにご参加ください。

--ありがとうございました。


 進路が多様化する中、進路未定率0%を目標に掲げる開志創造高校に期待が高まる。得意分野のプロを目指す生徒、キャリア選択に悩む生徒、やりたいことが見つかっていない生徒、多様な生徒を迎え入れる準備を着々と進めている開志創造高等学校。この夏、オンライン説明会に親子で参加し、学校選択の幅、キャリア選択の幅を広げてみてはいかがだろうか。

2025年4月開校予定 広域通信制 開志創造高等学校(認可申請中)
オンライン学校説明会 申込み受付中

ひらけキャリア職業体験 7/20(土)・8/11(日)
新潟市マンガ・アニメ情報館 編 申込み受付中

医療ロボット研究者の村上遼さんによる公開授業 7/13(土)
リアルタイム配信 申込み受付中

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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