【医学部受験】2025年度は倍率高止まり、新課程2年目は難化か…駿台

 依然として狭き門の医学部受験。新課程に対応した初の入試となった2025年度はどのような変化があったのか。そして来年の入試はどう展開していくのだろうか。駿台予備学校・市谷校舎の校舎責任者を務める重藤賢次氏に、2026年度入試に向けた展望とアドバイスを聞いた。

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【医学部受験】2025年度は倍率高止まり、新課程2年目は難化か…駿台
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 少子化により大学全入時代と言われる中、依然として狭き門の医学部受験。新課程に対応した初の入試となった2025年度はどのような変化があったのか。そして来年の入試はどう展開していくのだろうか。

 医学部合格に圧倒的な実績を誇る駿台予備学校で、医学部受験対策に特化した専門校舎・市谷校舎の校舎責任者を務める重藤賢次氏に、2025年度医学部入試を振り返っての傾向と、2026年度入試に向けた展望、アドバイスを聞いた。

新課程1年目は出願者数や出題傾向など変わらず

--2024年度の医学部入試、国公立前期の志願倍率は4.47倍と高い数字でした。2025年度も高い難易度が維持されたのでしょうか。

 2025年度医学部入試の一般選抜全体の志願状況をみると、国公立前期の志願倍率は4.31倍となり、前年度の4.47倍に比べて微減しました。募集が少ない後期も0.9ポイント下がったものの19.2倍という狭き門です。国公立全学部の平均2.93倍に比べると、医学部はまだまだ高い倍率と言えます。

 志願者数自体は2年連続でやや減少し、前年度から4%減となりました。それでも2025年度は1万5,306人で、2021年度の1万4,773人と比較すると、今も1万5,000人台をキープしており、依然として人気を維持していると言えるでしょう。

取材に応じてくれた駿台予備学校・市谷校舎 校舎責任者の重藤賢次氏

--2025年度は新たに情報Iが加わるなど、新課程移行後初の共通テストとなりました。医学部入試全体へはどのような影響がありましたか。

 医学部入試においては、新課程移行に伴う大きな出題傾向の変化はありませんでした。旧課程から新課程への移行期間であるため、旧課程を学んでいる生徒への配慮があったのかもしれません。これまでの大きな変更があったケースと示し合わせても、新傾向の出題が本格化するのは移行後2年目からというところだと思います。

 出願者数についても、国公立・私立ともに新課程移行にともなう変化は特にみられませんでした。4月18日現在の発表をみると、前年とほぼ同水準です。国公立は若干減ったものの全体としては大きく変わりません。2024年度出願者数が増えた私立も、昨年同様の傾向が続き、昨年出願者数が多かった大学はその人気をキープしている状況です。

 現役生・既卒生別で入試結果をみると、2025年度は既卒生に有利な入試だった印象です。その理由として、新課程の共通テストが始まり、現役生にとっては情報Iも含め入試対策の内容が増えたために、最終的な仕上がりが間に合わなかったことが考えられます。実際に今年の市谷校舎では、既卒生の共通テストの得点が全体的に大きく伸び、医学部合格者数が増えました。出題傾向に大きな変化が見られなかったからこそ、先に準備をして貯金のあった既卒生に有利だったのではと考えています。

試験日重複ゆえ受験者分散した私大、倍率「東低西高」の国公立大

--2025年度の私立医学部入試で特筆すべき変化はありましたか。

 2025年度の私立医学部入試における大きな変化は、共通テストの日程が例年より遅かったため、一次試験の日程が非常にタイトだったことが挙げられます。前年の2024年度の一次試験期間は1月16日から2月12日まで約1か月あったものの、2025年度は1月21日から2月11日までの21日しかありませんでした。こうした影響もあって、2024年度は単独日程だったにも関わらず、2025年度は他大学と重複してしまった大学が、1月23日の杏林大、帝京大、1月25日の東北医科薬科大、2月4日の東邦大、藤田医科大など合計8校ありました。

2025年度の私立大学医学部入試スケジュール(提供:駿台予備学校)

 さらに、2025年度から試験日程を早めた大学もあり、たとえば慶應義塾大は2024年度に比べて10日、東京慈恵会医科大は7日も試験日程を前倒ししています。受験生にとっては体力、気力ともにタフなコンディションが求められる入試日程だったと言えます。

--試験日程が重複すると、医学部に合格するため1校でも多く受けたい受験生にとっては受験機会が減ってしまいますね。

 確かに、一見すると受験機会が減っているように感じられますが、偏差値で見ると同レベルの大学はさほど重複しておらず、学力に応じて受験生が分散したと考えられます。つまり学力層ごとに分かれて受験したことで、限られたパイを大勢で奪い合わずに戦いやすくなった面もあったのではと思います。

--続いて、国公立医学部入試はいかがでしたか。

 国公立前期は共通テスト科目に情報Iが加わったため、各大学で共通テストと個別試験の配点がやや変わりました。ただ、多くの大学で情報Ⅰはそこまで高い配点ではありませんでした。

 地域ごとの動きをみると、東日本で志願者数が減り、西日本は堅調という東低西高の傾向がみられました。昨年度の志願者を100とした場合、北海道が12ポイント減、東北が11ポイント減、関東・甲信越が11ポイント減、東海・北陸が6ポイント減。一方で近畿は3ポイント増、中国・四国が3%減、九州・沖縄は4ポイント増となりました。

国公立大医学部志願者数の地域ごとの動き(提供:駿台予備学校)

 国公立医学部の場合、受験生は共通テスト終了後に、自己採点と、各大学の前年の出願者数や倍率などのデータをみて、実際の出願をどこにするか決めることになります。国公立医学部の入試では、前年の出願者数が増えている大学は翌年に減り、減っている大学は増えるという「隔年現象」が起きやすいのですが、2025年度も各大学の出願状況からそうした傾向が見られました。

 国公立後期は募集人員が346人と前年度に比べ5人減り、年々減少しています。志願者数は6,651人で6%の減少となりましたが、志願倍率は19.2倍と非常に高い倍率になりました。後期日程をとりやめる大学が増えており、2026年度からは旭川医科大、山形大、佐賀大における廃止が決定しています。2026年度からは後期日程が13大学しかないため、このまま高倍率でハイレベルな入試が続くと思われます。

来年度も医学部人気変わらず、共通テストはやや難化か

--すでに新学年がスタートしましたが、2026年度に向けて医学部入試について、受験者数の変化や出願傾向など、どのように予想されますか。

 まず医学部入試全体をみると、今の高3生が2025年2月に受けた第3回高2駿台全国模試のデータを確認したところ、医学部志望者数の比率は増えています。国公立だけでなく、私立も特に増えています。

 大学受験全体では現役志向が高まっていますが、こと医学部受験においては準備に時間がかかるため、早くから対策が可能な既卒生が推薦・一般入試ともに有利であることや、もう1年頑張れば、自分が就きたい職業への道が開けることなどから、浪人を選ぶ受験生が増えています。

 出題傾向については、共通テストが新課程移行後2年目となり、難化することが予想されます。その結果、共通テストで思うような結果が出ず、受験生全体として点数が下がっていても、自身の点数を悲観して志望校を下げたり、医学部への出願そのものをあきらめたりするといった動きが起きる可能性はあるでしょう。

 また2025年度において特徴的だった試験日程の重複についても、引き続き注視したいところです。「今年は他大学と重複したものの、来年は単独日程になる」など試験日程に変更が生じる大学では、倍率の変動が予想されます。

徐々に増える年内入試、共通テストや一般入試対策との両立が鍵

--大学入試全体では学校推薦型選抜や総合型選抜での入学者が増加しています。医学部入試でも同じ傾向が見られるのでしょうか。

 医学部入試でも増えてきていますね。たとえば2025年度は、東北医科薬科大が一般選抜の宮城県枠20名分を総合型選抜の東北地域定着枠に移行しました。また、東京医科大も3名以内と少ない枠ではあるものの、英検利用型の学校推薦型選抜を開始しています。2026年度は自治医大が地域限定で年内入試を始めることを予告しています。各大学とも、早めに学生を確保したい意図の表れだと思います。

 とはいえ、年内入試だからといって入りやすいわけではなく、志望理由書や面接、小論文に加えて、一般個別試験や共通テストなどの学力試験対策も必要になります。学校推薦型選抜や総合型選抜が始まる秋の段階で学力がある程度固まっていて、志望理由書や面接、小論文などの準備も早いうちから行い、対策もできていることが求められるのです。ですから結局のところ、年内入試で受かる子は、一般入試を受けても受かるレベルの高い学力を有していることがほとんどというのが実情です。さらに医学部の年内入試は既卒生も対象としているところもあるので、既卒生は受験機会を増やすという意味で今から視野に入れておくと良いでしょう。

医学部ならではの年内入試の難しさについて語る重藤氏

--学校推薦型選抜や総合型選抜で医学部を受験する場合は、そのための対策だけでなく、学力試験のための勉強と両立させる必要があるのですね。実際に合格した人はどのように準備していたのでしょうか。

 昨年筑波大に合格したケースだと、志望理由書を高3の夏に書き始めて、夏の終わりにはほぼ完成していました。夏休みの間は、駿台の学習コーチと一緒に筑波大についてくわしく調べたり、自分が医師になる理由や、筑波大のどの研究に魅力を感じるかなどを検討したりしながら、医学部受験に向き合う姿勢が整えられていくようすが見られました。このように入念な準備段階を経て、入試前には面接の練習も繰り返し行ったことで、「筑波大の医学部で何を学び、どのような医師になりたいか」を自分の言葉でしっかり話せるようになったことが合格に決め手になったように思います。

 もう1つは、福島県立医科大に合格したケースです。出願に必要な共通テストは得点率79%と決して高くはありませんでしたが、志望理由などしっかりと考え、準備を継続的に進めてきたことがアドバンテージになりました。福島県の医療事情を熱心に調べたり、面接で自分の言葉で伝える練習をしたり、志望校に真摯に向き合っていたのが印象的でしたね。医学部では医師の適性を測るため、面接で学力以外の部分も評価するので、このケースでは志望理由書や面接で十分にその想いが伝わったのではないかと思います。

 学校推薦型選抜や総合型選抜も含めて、医学部入試の場合、面接を軽視して準備を怠ると、本番で緊張して言葉が出なかったり、自らの言葉で自分の思いを紡ぐことができず、上辺だけに聞こえてしまったりと、学力試験の結果が良くても不合格になるケースは少なくありません。

--志望理由書や小論文、面接など、医学部入試の対策は多岐にわたりますが、学力試験の勉強もハードな中、どのようなスケジュールで準備すれば良いのでしょうか。

 志望理由書も面接対策も、まずはしっかり下準備をすることが大切です。とりわけ志望理由書には、医師を目指す理由やその大学を志望する理由など、面接でも聞かれる項目が含まれますので、早めに目を通しておくと良いでしょう。そのためにはどういう情報が必要なのかを先に確認し、それを軸に準備をしていきましょう。

 駿台の高卒クラスでは、高3の夏前にはまず1回、志望理由書を書かせてプロ講師による添削を行っています。文字に起こすことで、医学部への志望理由を明確にできるとメリットがあるためです。そのほか、小論文・面接対策講座を週1で行います。高1・2生に対しても小論文や面接対策の季節講習を用意しています。早いうちから面接で聞かれる質問に答えるための情報を集めたり、医療・時事ニュースを確認したり、1週間に30分でも良いので面接・小論文含めた出願準備を進めておくと、それが積み重なって良いアウトプットができるようになります。

苦手科目を作らない、最後まであきらめない

--他学部に比べてやるべきことが多い医学部受験では、早いうちから入試を意識して準備することが合格につながるということですね。

 そうですね。それに加えて言うならば、医学部受験では苦手科目を作らないことがとても大事です。そのためには基礎をおろそかにせず、弱点をつぶしておくこと。急いで難問を解こうとせず、まずは基礎基本を盤石にする。そうすれば応用問題も解きやすくなり、結果的に医学部合格へとつながっていくのです。

 特に数学の苦手は克服しておきたいところです。市谷校舎の既卒生の模試データを調べてみると、英語・理科は良く解けるものの、数学のスコアだけへこんでいるケースが散見されます。そのまま試験本番まで数学が伸び悩むと、なかなか合格ラインにたどり着くことができません。数学の習得には時間がかかるので、早いうちから時間をかけてコツコツと類題を積み重ねて基礎を固めておくことは、合否を左右する重要な鍵だと言えます

 さらに、合格者の共通点をもう1つ挙げるとするならば、あきらめずに最後まで受験し終えること。秋口の模試や共通テストの結果が悪くても、私立の一次試験不合格が続いても決してあきらめず、3月の後期試験まで受け切って合格を勝ち取るケースは毎年たくさん見ています。3月中旬までの試験期間中も、受験生の学力はまだまだ伸び続けます。今までの頑張りを信じて、最後まであきらめずに目の前のチャンスにしっかりと向き合い続けることで、合格へと近付いていけるのです。

合格すれば、自分の将来の夢に向かって確実に進むことができるのも医学部の魅力

中高生は既卒生のライバルを意識して早めの準備を

--最後に、医学部を目指す中高生・既卒生に向けて、それぞれアドバイスをお願いします。

 まずは医学部受験を検討している中高生へ。医学部受験は学力試験に向けた勉強、面接、小論文などやることがとにかく多いので、できるだけ早めに動くことが大切です。早めに情報収集することで、やるべきことがわかります。オープンキャンパスや検定試験など、勉強以外に必要なことも計画的に進めましょう。

 また、医学部は他学部以上に既卒生のライバルが大勢います。教科書レベルの問題はなるべく早い段階で完璧にこなせるようにしておきましょう。現役合格で合格を目指すには、高3が始まるまでに英語・数学・理科1科目は教科書レベルを終えておき、高3の4月からはそれらの応用問題と、理科のもう1科目の習得に力を入れると良いでしょう。

 既卒生は、前回の不合格の原因をしっかりと振り返り、いかに早く改善できるかが重要です。現役生に比べて先取りしている分、「まだ時間があるから大丈夫」と勉強の量や質を落としがちになりますが、1か月勉強しないと、今まで蓄積した知識もあっという間に抜けていきます。せっかく既卒生としてもっているアドバンテージがあるわけですから、それを活かせるように弱点を早めにつぶして、目標から逆算し、勉強を軸にした生活スタイルをベストな状態に整えましょう。この1年を頑張って乗り越え、合格すれば、自分の将来の夢に向かって確実に進んでいくことができます。夢の第一歩に向けてぜひ頑張ってください。

--ありがとうございました。


プロのサポートで、早めの情報戦を制す

 少子化が進む中でも高いままの医学部人気。医学部入試を突破するには、幅広い準備を同時並行するハードスケジュールと、早め早めの情報戦が求められる。共通テストや各大学の学力試験、面接・小論・志望理由書などやるべき対策は山積みだが、複雑極まる医学部入試を効率的に進めるためには、プロのサポートが何より役に立つだろう。この1年の医学部入試を最後まで頑張りきるためにも、上手にプロの情報を活用したい。

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《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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