2025年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の志願者数は7年ぶりに増加し49万5,171人、受験者数は前年に比べ4,458人増加、46万2,066人が受験したテストとなった。文系・理系ともに予想平均点は前年度より上がり、データネット実行委員会(駿台/ベネッセコーポレーション主催)の推定によると、6教科1,000点満点の最終予想平均点は文系620点、理系633点。予想平均得点率は文系が前年度比2.4ポイント増、理系が同1.2ポイント増となった。

新課程移行後2回目となる共通テストを万全の態勢で挑み、現役合格つかむために、受験生は大学入試の天王山といわれる夏休みをどのように過ごせば良いのだろうか。
難関大学に抜群の合格実績を誇る駿台予備学校(以下、駿台) 立川校 校舎責任者・杉田翔氏に、共通テストの振り返り、志願動向、模試を活用した事前準備、この夏の過ごし方について話を聞いた。
2025年度共通テストは文系を中心に平均点アップ
--新課程移行後初となった2025年度共通テストを振り返って、解説をお願いします。
前年度より平均点が上がった要因は、おもに国語や英語リーディングでの平均点アップです。受験者が1万人を超える主要科目でみると、新課程入試初年度の国語は易化して10.2点のアップとなり、2年連続でアップとなりました。英語は、リーディングが700語ほど英単語数が減り、解きやすかったこともあって6.2点アップとなりましたが、リスニングは、音声情報とイラストや図表などの視覚情報を組み合わせて答える問題で、場面に応じた聞き取りを要する実践的な英語に対応しきれなかったのか、5.9点ダウンとなりました。
数学では、数学I・数学Aが2.1点アップになった一方で、数学II・数学B・数学Cが6.2点ダウン。理科でも化学が9.4点ダウンなど、その他の科目も軒並み下がりました。文理3教科平均点で比べると、文系国・英・歴公が14.2点アップになったのに対し、理系の数・英・理は0.8点ダウンとなり、文系の平均点が上昇しました。

--各科目の点数が上下した要因について教えてください。
国語や英語リーディングが上昇した要因は、受験者数母数がやや減少したことや、先ほど述べたように文章の英単語数が減って読みやすかったことなどがあるでしょう。対して、数学や化学、その他理科で平均点がダウンした背景には、文章量が非常に多く、読解力が必要とされたことが考えられます。問題文から何が求められていて、何を答えるのかをしっかり読み切らないと点数につながらない、さらに時間が少ない中で正確な計算処理をしていく必要もある。共通テスト特有の文章量の多さに適応し、時間内に正確に読み解く読解力が求められますので、日ごろから慣れと経験を積むことが大事だと言えます。
また、今年から新たに導入された情報Iは、平均点が予想以上に高い結果となりました。導入初年度になるので、比較的得点が取りやすい問題が多かったように思います。ただし、新課程2年目となる2026年度は少し難しくなることが予想されるので、今年度の平均点に惑わされないよう注意が必要です。

点数が取れなかった生徒は準難関国公立大・私大にシフト
--国公立大の志願動向いかがでしたか。
駿台では共通テストの終了直後に、自己採点集計サービスを実施していますが、集計結果が出る前の段階では強気な受験生が多かったです。難関国立10大学(北海道大、東北大、東京大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大、東京科学大、一橋大、神戸大)では、前年度の志願者数を100とした場合、共通テスト終了直後は110と大きく増加した大学が複数みられました。しかし、平均点が予想以上に高いことが明らかになるにつれ、難関国立大志願者が減り、2月19日に文部科学省が発表した確定志願者状況によると、難関国立10大学の志願者合計指数は99まで下がりました。特に首都圏はそうした影響が大きく、近隣の千葉大、東京都立大、横浜国立大など準難関国公立大に志願者が集中。共通テストで点数が取れた生徒は第一志望を貫き、あまり取れなかった生徒は安全志向にシフトし、準難関国公立大などに流れた動きがあったと言えます。

--その一部が私大にも流れたのですね。共通テスト利用の私大志願者は増えていますか。
早稲田大学と中央大学は共通テスト利用の志願者が増えました。共通テストを利用した私大入試には、多くのメリットがあります。受験生にとっては合格のチャンスが増え、試験会場まで足を運ぶ必要がなくなることで、経済的負担を軽減できます。共通テストの平均点が上がったこともあり、私大の共通テスト利用入試の志願者は今後も一定数は見込まれます。現状では事前出願が多いですが、共通テスト後にも出願できたり、出願料が減額されたりといった動きがあれば、さらに多くの受験生が利用すると思います。国公立志願者の中には、共通テストの平均点が下がれば私大に切り替える動きも出てくるでしょう。
立川校の生徒でみると、現役生は概ね国公立大・私立大を含め5~7校を受験して、現役進学を前提に受かったところに進学する傾向が強いように見受けられます。
苦手克服・基礎固めの夏
--まもなく夏休みです。2026年度共通テストまでにやるべきこととして、まず夏休みまでに何をすればよいでしょうか。
この時期は高3になって模試を初めて受けて、想定以上に良くない結果に驚く生徒が多いのですが、母集団に既卒生がライバルとして入るので、判定は下がりがちです。この判定で大丈夫なのかと心配になると思いますが、焦り過ぎないことが大切です。現役生は最後まで学力が伸びる可能性があるので、伸ばせると信じて日々学習に取り組んでください。
そのうえで、夏までにはまず基礎をしっかり固めて、苦手科目・苦手分野の克服を意識して取り組んでほしいと思います。秋の模試で結果を出したい人も多いと思いますが、そのためには、高校1~2年や今の学習内容をしっかり復習して定着させておくことが重要です。
--受験生の夏休みの1日の過ごし方、1か月の過ごし方についてアドバイスをお願いします。
重要なのが生活リズムの維持です。自分の時間が増える中で、いかに自分を律して学習に取り組めるかが大事です。たとえば、起床・就寝時間を固定して朝型の生活を維持し、朝9時から勉強するなど、マイルールを決めて1日のスタートを切ることが理想です。
特に夏休み前半の過ごし方が生活を整えるために重要になります。朝型を維持したまま、長く勉強する習慣をつけ、学習習慣を確立していく。志望大学に現役合格をした駿台高校生に聞いたアンケートでは、高校3年夏における1日の平均学習時間が約7.5時間でした。まずはこの7.5時間を1日の学習時間の基準に据えましょう。駿台の授業と同様に、50分勉強して10分休憩するなど、適宜休憩をとりつつ、隙間時間も使いながら学習時間を積み上げてください。

その上で、1か月をどう組み立てるかですが、具体的に学習計画を立てることが大切です。夏にどの程度時間を確保でき、何をすべきかという目的を明確にする。過去問に取り組みたい気持ちもわかりますが、駿台では「夏は基礎力を完成させる時期」と位置付けています。冬に演習・過去問を行うことを照準に、夏の間は苦手科目・分野に目を向けて取り組みましょう。自分1人ではうまく集中できないときは自習室を使い、苦手分野は夏期講習で補うのも良いと思います。
--駿台模試はどのようにスケジュールに組み込むと良いででしょうか。
現役生は初めての大学入試になるので、実力を本番で発揮できるように、場数を踏む・場慣れをする・経験を積むためにも模試を複数回受けることが重要です。共通テスト本番までに、駿台では7~12月に共通テスト型模試を4回実施します。2か月に1度のペースで受験でき、国公立大、私立大、複数の判定が可能ですので、本番の目標点から逆算して、いつ、どのくらいの点数を取りたいかをイメージし、優先順位をつけて学習に取り組むと良いでしょう。また、模試を通して、「短い時間で大量の文章を読み問題を解く」共通テスト特有の形式に慣れること、時間配分を知ることも重要です。
模試結果から課題を抽出し次の学習に生かす
--模試の結果はどのように見ていくと良いでしょうか。
「駿台 atama+共通テスト模試」の模試成績表をもとに説明します。まず目を通すべき順番は、「教科・科目別成績」→「科目別得点率」→「設問別の成績」→「解答番号別マーク正答状況」→「志望大学の判定」です。
最初に見る「教科・科目別成績」では、各科目の点数、平均点、偏差値を確認し、受験した模試自体の全体像をつかみ、偏差値50を基準に据えて、自身の立ち位置を把握します。

次に、「科目別得点率」をレーダーチャートグラフで表したものを見ることで、視覚的に自身の得意・不得意科目を把握します。苦手を克服して得意をさらに伸ばすことで、バランスの良い学力を目指すことができます。

次に見る「設問別成績」では、各科目の状況をより細かく確認します。一見点数の良い科目であっても、設問別に見ると、点数が取れていない分野がわかります。設問ごとの全国平均から自身の状況を知り、優先的に取り組むべきことを把握します。次に何に取り組むかを定め、効率良く学習を進めるためにも、この設問別成績を活用してください。

合わせて、「解答番号別マーク正答状況」で正答率が高い問題をどれだけ落としているかを確認します。皆が取れている問題を自分が落としていないか把握し、次の学習に生かしてください。マークミスも要チェックです。

最後に「志望大学判定」を見ます。判定のアルファベットだけを見て一喜一憂せず、現状で同じ大学・学部を目指すライバルがどの程度いて、その中で自身はどの位置にいるのか、合格までにどの程度成績を上げる必要があるのかを考えながら見てください。現在の判定から1つ上の判定に上げるにはあと何点必要かを見て、そのためにどの科目・どの分野で取れば良いのか、「教科・科目別成績」「設問別成績」を振り返りつつ確認していきます。

--模試の結果を見た後は何から手をつけると良いでしょうか。
模試の結果から導き出された、自身の課題に1つずつ向き合っていくことです。模試は受けるだけでは効果がなく、結果からヒントを見つけて、その後の学習にどう活用していくかという次の取り組みが重要です。成績を伸ばしている生徒は、皆模試の結果を隅々まで確認し、そこからヒントを得て次にやるべきことを実行しています。時間配分の失敗なのか、苦手な分野だからなのか、失点の理由を読み取り、その理由に応じた十分な手当てが必要となります。このように、模試の結果をきっかけに勉強のやり方と優先順位を見直し、次の学習に落とし込んでください。
また、共通テスト型の模試では、自己採点の練習もしてください。本番の共通テスト終了後、出願を行う際には自己採点で判断するので、誤差がないか振り返りを行うことも大事です。
受験の主役は生徒本人、子供の決定を尊重し応援を
--模試の結果の判定が悪いと、親はつい「志望校を変えた方が良いのでは…」と思いがちです。保護者にはどのようなアドバイスをしていますか。
模試の結果が出た後は、保護者から「合格できるかどうか」という相談が多く寄せられますが、現役生は発展途上で、これまで学習してきた内容をここから半年かけて完成させていくプロセスです。どのタイミングで成績が上がるか、仕上がるのかというのは個人によって違います。

「志望校を変えた方が良いか」という相談もありますが、本人が志望校を変えたくないのに、周りが無理に変えさせたらモチベーションが下がるだけです。面談では、模試が思わしくない結果であっても、厳しさは伝えたうえで、今の条件の中で第一志望を自己決定してもらい、それに向けて頑張るよう伝えています。夏明けから成績が伸びる生徒もいれば、2月、3月に挽回して合格する生徒も毎年たくさん見ていますので、今勉強を頑張っているのであれば、最後までお子さんを信じてあげてください。
併願校については、今の時期はさまざまな大学を探して比較したり、オープンキャンパスで情報収集したりなど、ご家族で話し合いながら、概ね11月ごろに決めれば良いのではないでしょうか。
--共通テストまであと約半年間、受験生が良いメンタルをキープできるよう保護者にアドバイスをお願いします。
駿台に通っている現役生に4月・10月に2回アンケートを実施し、「保護者にやめてほしいこと」を聞きました。4月は「特になし(43.4%)」、「勉強面での意見・説教(13.1%)」、「やる気の失せる言葉・行動(4.8%)」の順なのが、10月では「やる気の失せる言葉・行動(17.7%)」がもっとも多く、「勉強面での意見・説教(16.3%)」、「特になし(15.3%)」と順位が入れ替わります。コメントを見ても保護者の干渉に対する意見が目立ち、保護者の関与がつい強くなってしまう傾向が読み取れます。


保護者の関わり方としては、日ごろは気軽なコミュニケーションを取りつつ適度な距離感を保ち、おもに食事などの健康面でサポートしていただきながら、目標まで一緒に歩いていく「最強の応援団」であってほしいと思います。
また、さまざまな受験手続きがありますが、2026年度は共通テストが電子出願に切り替わる年です。これまで学校が一括で出願していたものが個人に任され、準備も早まります。7月からマイページ作成が始まりますので、そうした手続きは保護者も一緒に進めていただけたらと思います。
--ありがとうございました。
2025年共通テストは、新課程移行後初ということもあって、やや易化し、平均点も高い傾向だったが、2026年度共通テストは「2年目は要注意」の言葉どおり、やや難化することも考えられる。そのために重要になるのが、夏の基礎固めと模試データを生かした、学力を伸ばすための学習である。来たる共通テストに向けて、長い夏休みを充実したものにできるよう、しっかりと準備してほしい。
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