【高校受験2026】好きを積み上げ、未来に繋げる…星野高校が育てる探究力と人間力

 2026年4月、埼玉県川越市の星野高校が新たに「医専コース」「Global Frontier Course」を開設する。約130年にわたり「自主自立」を掲げてきた伝統校が、なぜこのタイミングで医学部進学およびグローバル教育に特化したコースを立ち上げるのか。松田友宏校長と青木潤士進路指導部長に話を聞いた。

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星野高等学校校長の松田友宏氏(左)と進路指導部長を務める英語科教諭の青木潤士氏(右)
星野高等学校校長の松田友宏氏(左)と進路指導部長を務める英語科教諭の青木潤士氏(右) 全 6 枚 拡大写真

 埼玉県西部の文化都市・川越にある星野高等学校。創立当初は女子教育の学舎としてスタートした星野学園だが、2003年の共学化以降は、男女ともに幅広い進路をサポートする総合私立高校として注目を集めている。

 学力と人間性を両立させる「文武両道」の姿勢を貫き、多くの受験生を惹きつけてきた同校。そんな星野高等学校が今、AI時代という大きな社会変革を見据え、新たなコースを開設する旨を発表した。星野高等学校が掲げる教育理念「自主・自立」の歴史と現代的な意義をふまえながら、新たに誕生する2コースの詳細について、星野高等学校校長の松田友宏氏と、同校で進路指導部長を務める青木潤士氏に話を聞いた。

【プロフィール】
松田友宏氏:星野高等学校 校長
青木潤士氏:星野高等学校 進路指導部長、英語科教諭


星野高等学校の成り立ちと「自主・自立」へのこだわり

--2027年に創立130周年を迎えられる星野高等学校。まずはルーツや教育理念について教えてください。

松田先生:創立者である星野りちは、お茶の水女子大学(当時の東京女子師範学校)で英語やリベラルな考え方を学び、その学びを地元川越で役立てたいと考えました。非常に高い志をもっていた女性です。

 その星野りちが、建学の精神として掲げたのが「自主・自立」。自分の頭で考えて判断する自主性、それから自分の価値観を育み、新しい自分を発見する自立性、この2つを大事にしています。

 封建的な男尊女卑が残る明治期に女性教育を広めようとした創立者の「進取の気性」は、現在も星野学園の校風に息づいています。

星野高等学校校長 松田友宏氏

AI時代にこそ求められる、人間としての「幅」と「教養」

--御校は勉強だけでなく、部活動や行事も盛んだと聞きました。そうした全人的な教育は、AI時代とどう結びつくのでしょうか。

松田先生:机上の勉強ももちろん大切ですが、部活動や学校行事を通して人間としての感性や共感力を育むことも同じくらい大事にしています。

 部活動は全入制です。文化部が28種類、運動部は16種類あり、そのうち18の部が2024年度の全国大会に出場しています。力を入れている行事としては、芸術鑑賞会が挙げられます。一流アーティストを毎年お呼びして、本物に触れる機会を設けています。

石原キャンパスの施設。左上から時計回りに、星野記念講堂、第一総合グラウンド、雨天時にも運動可能な星野ドーム、第一総合グランドにある陸上用100mコース。恵まれた環境で思い切り部活に打ち込むことができる

 AI時代になっても、人間ならではの本質的な価値、とりわけ共感力や社会性、倫理観を見失わないようにすることが重要だと考えています。

--「知性と品性に裏付けられた教養」を育むわけですね。具体的にはどういう姿をめざすのでしょう。

松田先生:最終的には「社会で尊敬され、社会に貢献できる人間」を育てたいと考えています。人生でもっとも幸せな瞬間というのは、自分の生きがいと社会貢献が重なったときではないでしょうか。

 社会で生きていくためには非認知的な力も重要です。そうした力を伸ばすためにも、協働作業や行事を通じて他者と触れ合う機会を積極的につくっています。

2026年春に始動「医専コース」「Global Frontier Course

--2026年4月、星野高等学校では「医専コース」と「Global Frontier Course」を開設されますね。開設の背景をお聞かせください。

松田先生:本校は伝統のある学校ですが、時代に合わせて常に新しいものを取り入れることも重視しています。

 いま社会では、地域医療における課題が叫ばれ、グローバル人材のニーズが高まっています。そういった時代の要請に応じ、星野の教育をアップデートしようという考えが背景にあります。

--まず「医専コース」について、詳しい内容を教えてください。

青木先生:医専コースでは、医学部受験に必要な学力を培うだけでなく、医療人としての視野を広げる探究活動にも力を入れていきます。

 具体的には、埼玉医科大学との連携協定を生かした取組みや、医学部に進学したOB・OG、現役ドクターとの交流を通じた「医療・医学探究プログラム」を準備中です。在学中から「どのような医師になりたいか、医師としてどのように社会に貢献できるか」を考えてほしいという思いから立ち上げたプログラムです。

 近年、埼玉県内は深刻な医師不足で、特に地方部では顕著です。本校は川越という地域で130年近く歴史を刻んできたこともあり、地元に少しでも恩返ししたいという思いがあります。医専コースでの学びを通して「医療で地域貢献をしたい」「埼玉県で医師として働きたい」と思う生徒が増えるよう、環境を整えるのが私たちの役目です。もちろん、埼玉県でなければならないという制限はありません。卒業生の中にも全国各地で医師として活躍する先輩たちがいます。

進路指導部長を務める英語科教諭の青木潤士氏

--「Global Frontier Course」についても教えてください。関東圏では「国際」と付く学校やコースが増えている実感がありますが、御校のコースならではの特徴はありますか。

青木先生:最近は留学や海外大学への進学も珍しくなくなってきましたが、まだまだ世間一般としては「裕福な一部の家庭の子でないと難しい」「帰国子女でないと厳しい」という先入観が根強い印象です。本校のGlobal Frontier Courseは、中学生になってから本格的に英語に触れ、「英語が好き」「海外に興味がある」と気付いた生徒でも、高校3年間の学びで一気に羽ばたけるように設計しました。

 大事なのは「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」こと。生徒ひとりひとりが自分の好きなことを積みあげて、可能性を広げられる。そういう場を用意することが、星野の教育なのです。

--星野学園には中高一貫のコースなどもありますが、今回新設される2つのコースは、学園内ではどのように位置付けられるのでしょうか。

松田先生:これら2つのコースは、いずれも高校入学生を想定した共学のコースです。本校には従来から「女子部」と「共学部」があるのですが、そのどちらにも属さない単独のコースです。本校には中高一貫のコースもありますが、多くのコースは高校入学生に対応したカリキュラムになっています。埼玉県内で数少なくなってきた高校入学が可能な私立校の1つとして、高校生のサポートに強みがあると自負しています。

 中学入学後に「医師になりたい」とか「海外に挑戦したい」と気付く生徒もいれば、高校に入ってから意欲が大いに高まるケースもあるでしょう。私たちはそういった生徒たちの意欲に寄り添い、全力で支援したいと考えています。医専コースは理科・数学を、Global Frontier Courseは英語4技能を、それぞれ重点的に学ぶカリキュラムを用意し、高校から入学した生徒たちがしっかり学べる仕組みを整えています。

青木先生:校長もお伝えしました通り、本校の多くは高校からの入学生です。かけがえのない高校3年間で、学業、行事、部活動などに全力で打ち込める教育環境をしっかり整えることで、星野高等学校全体の学びにもさらなる厚みが生まれると考えています。

2026年春開設「医専コース」「Global Frontier Course」とは

地域と自分を繋ぎ、社会、そして世界へ目を向ける

--2コースの開設に先駆けて、2025年度には探究活動を大きくリニューアルしたと聞きました。どのような活動をされているのでしょうか。

青木先生:本校の探究活動は、高校1年生の「川越探究」から始まります。「川越探究」では、学年全員で川越の街を歩き、課題を発見します。街を歩き、地元の方からお話を聞くことで、日帰りの観光客ばかりで経済効果が限られる」といった問題に気づいたり、人口動態や産業構造のデータベースを参照して具体的に分析したり。さらに「どうすればより良くなるか」を考えて提案する過程で、探究における基礎スキルを習得していくわけです。

 2年生になると、高大連携でゼミを組織し、中間発表、フィードバック、研究室見学、実験など、大学の先生や卒業生の力も借りながら、よりアカデミックな探究を深めていきます。その成果として3年生では卒業論文を執筆します。こういった経験は、大学入試のみならず将来にも生きてくるはずです。

 自分で問いを立て、仮説を考え、検証・発表し、評価を受けて、さらにブラッシュアップする。このサイクルを徹底することで、生徒は“自分の興味・関心”を社会へと結びつける力を育めると考えています。

松田先生:フィールドワークに参加した1年生からは「もっと探究したい課題が見つかった」「データ分析をすると、ただ街を歩くだけではわからないことが見えてきて面白い」といった声が挙がっています。地元について深く掘り下げる経験は、アイデンティティを見直すうえで重要なものだと思います。将来海外で活躍する際にも、自分のふるさとやルーツについて詳しく説明できる方が良いですよね。本校の探究活動は、自分と社会、世界を繋ぐための仕組みなのです。

「本校は高校生のサポートに強みがある」と力強く語る松田氏
自分と社会、世界を繋ぐ…星野高校の「探究活動」

社会に貢献できる人間を育成する

--ここまでも、星野高等学校の教育に対する価値観を伺ってきました。御校を巣立つ卒業生にはどのように成長してほしいと考えていますか。

松田先生:これからの時代、AIがさまざまな作業を代替していく中で、人間にしかできない価値を見出し、それを大切にできる人を育てたいと思っています。

 具体的には、自分の価値も他者の価値も認められる人。困っている人に手を差し伸べられる人。そして何より、自分の志と社会貢献が重なる場所で、心から楽しみながら人生を送れる人ですね。SNSで他人と比較して落ち込んだり、AIに仕事を奪われることを危惧したりするのではなく、こうした新しく生まれてくる技術の特性を理解して賢く付き合いながら、「人間だからこそできること」に誇りをもって取り組める、そういう卒業生を送り出したいと考えています。

青木先生:生徒には無限の可能性があることを、まず本人に気づいてもらいたいと思っています。18歳で大学に進学する時点で、将来どのような職業に就くかは正直わからない部分も多いでしょうし、新しい職業も次々と生まれてきます。でも、自分というものをしっかりもっていれば、どんな時代になっても力強く歩んでいけるはずです。

 医専コースでもGlobal Frontier Courseでも、目標に向かって逆算的に学ぶ面はもちろんありますが、根底にあるのは「今、自分が大切にしていることを積みあげていく」という考え方。その積み重ねが、将来あらゆる可能性につながっていくと信じています。

--2027年の創立130周年、そしてその先に向けて、星野高校が果たしたい役割について教えてください。

松田先生:社会に役立ったり、周りの人たちからも尊敬されたりするような人間であることこそ、将来世界で活躍するうえで、いちばん大切な要素だと思っています。だからこそ、社会に貢献できる人間を育てたい。このような教育観は本校の伝統です。これからも変わらないと思いますし、来たるAI時代にはますます必要になってくるものでしょう。

 その前提として、生徒たちには自分の志をしっかりもって、楽しみながら人生を送ってもらいたいです。自分の志をしっかり実現していくことを楽しいと思える感覚を会得してほしいですね。その感覚が、社会貢献につながっていくと思います。

青木先生:社会で活躍できる人材を育てるという基本を忘れず、我々がこれまで培ってきたものを生かして、時代に合わせて教育をアップデートする。この考え方が130周年を迎えるにあたって、本校内での共通認識になっています。

 進路指導部の立場として大事にしたいのは、やはり生徒自身が自分の可能性をしっかり認識して歩めるように支えることです。何者にもなれるからこそ、18歳になって大学に進学するときでも、自分というものをしっかりもって、その後の長い人生を歩んでいけるような教育環境を提供していきたいと考えています。

 自分というものは何歳になっても変わらず存在するわけですから、どんな時代になっても力強く、未来を切り拓いていけるような人材を育てていきたいと思っています。

--ありがとうございました。


 130年の歴史をもつ星野高等学校が2026年春に開設する「医専コース」「Global Frontier Course」。今回のインタビューを通じて見えてきたのは、伝統を大切にしながらも変化する時代に先駆けて、アップデートし続ける学校の姿勢だった。

 何者にもなれるからこそ、自分というものをしっかりもって歩んでいく。青木氏のこの言葉が、学校の教育理念を端的に表していると感じられた。高校3年間で自分らしい道を見つけたいと考える受験生にとって、星野高等学校はますます魅力的な選択肢となりそうだ。

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《田中歌耶子》

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