パテント・リザルトは2025年8月6日、「大学・研究機関」の特許を対象に、2024年の特許審査過程において他社特許への拒絶理由として引用された特許件数を機関別に集計した「大学・研究機関 他社牽制力ランキング2024」を発表した。集計の結果、2024年にもっとも引用された機関は、産業技術総合研究所だった。
日本特許庁に特許出願され、2024年12月までに公開されたすべての特許のうち、2024年1月から12月末までの期間に拒絶理由(拒絶理由通知または拒絶査定)として引用された特許を抽出。業種は総務省の日本標準産業分類を参考に分類している。この集計により、直近の技術開発において競合他社が権利化するうえで、阻害要因となる先行技術を多数保有している先進的な大学・研究機関が明らかになる。
集計の結果、2024年にもっとも引用された機関は、1位「産業技術総合研究所」、2位「東京大学」、3位「東北大学」となった。
1位「産業技術総合研究所」のもっとも引用された特許は、三井化学と共同保有の「高いEUV透過率と耐熱性を有するEUVリソグラフィ用ペリクル膜」に関する技術で、信越化学工業などの計4件(のべ5回)の審査過程で引用されている。このほかには、三菱ガス化学と共同保有の「高プレス圧を必要とせずに大量製造が可能な全固体電池の製造方法」に関する技術が引用された件数の多い特許としてあげられ、トヨタ自動車など計4件(のべ4回)の拒絶理由として引用されている。2024年に、産業技術総合研究所の特許によって影響を受けた件数がもっとも多い企業はトヨタ自動車(13件)、ついでNTT(12件)となっている。
2位「東京大学」のもっとも引用された特許は、「畳み込みニューラルネットワークを用いた情報処理」に関する技術で、エンゼルグループの計7件の審査過程で引用されている。このほか「均一で高機能の肝細胞の効率的な調製方法」に関する技術が引用された件数の多い特許として挙げられ、UNIVERSITY HEALTH NETWORK(加)など計4件の拒絶理由として引用されている。2024年に、東京大学の特許によって影響を受けた件数がもっとも多い機関は大阪大学(8件)、ついでエンゼルグループ(7件)である。
3位「東北大学」のもっとも引用された特許は、JFEスチールと共同保有の「高生産性で低コストの還元鉄を製造する方法」に関する技術で、住友金属鉱山の計6件の審査過程において拒絶理由として引用されている。2024年に、東北大学の特許により影響を受けた件数がもっとも多い企業は住友金属鉱山(9件)、ついでTDK(7件)である。
4位の科学技術振興機構は「ラマン分光法を用いた生体分子の解析方法」、5位の大阪大学は「ヒト幹細胞の安定培養を可能にする細胞培養器具」が、もっとも引用された特許として挙げられる。
◆他社牽制力ランキング2024
1位:産業技術総合研究所
2位:東京大学
3位:東北大学
4位:科学技術振興機構
5位:大阪大学
6位:UNIVERSITY OF CALIFORNIA(米)
7位:京都大学
8位:東京科学大学
9位:東海国立大学機構
10位:CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(仏)