交際相手がいないことが出生願望を下方修正する傾向にあることが、スペインのポンペウ・ファブラ大学の茂木良平研究員、学習院大学の麦山亮太准教授らの研究グループの研究により明らかになった。研究成果は2025年8月5日(米国東部時間)、国際学術誌「Social Forces」のオンライン版に掲載された。
この研究は、スペイン、ポンペウ・ファブラ大学の茂木良平研究員、学習院大学の麦山亮太准教授、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのAlyce Raybould研究員らの研究グループが実施。20~49歳の子供をもったことのない男女を対象に、2009年から2023年にかけて実施された東大社研若年・壮年パネル調査を用い、固定効果モデルによって分析した。
調査の結果、交際相手がいない人は、交際相手がいる、同棲している、または結婚している人に比べて、出生願望に対する回答が「欲しい」から「わからない」「欲しくない」へと変化しやすいことがわかった。特に「欲しい」から「わからない」への変化が顕著で、この変化は、非交際期間が長くなるほど変化が強まるわけではなく、非交際になった年にもっとも顕著に現れた。以上の結果は、交際相手がいないことが出生願望の実現を妨げている可能性を示唆している。
また、調査期間中ずっと非交際だった人のうち、出生願望で「欲しい」と答え続けた割合は女性の28%、男性の21%であった一方、「欲しくない」と答え続けた割合は女性の10%、男性の7%にとどまった。この結果は、交際自体が出生願望の形成に重要であることを示すと同時に、意図せずに子供がいない状態にいる人が多くいることをあらためて示した。
少子化が進行する中で、交際相手の有無が出生願望の変化に与える影響を理解することは重要である。今後は、未婚者への支援を交際相手の有無で区別し、希望していても子供を持てない人への支援が求められる。また、他国との比較研究を通じて、文化や制度が出生願望の変化にどのように影響するのかを探ることも期待される。研究成果は2025年8月5日に国際学術誌「Social Forces」のオンライン版に掲載された。
◆論文情報
論文名:Exposure to non-partnership and fertility desires among childless population in Japan
雑誌:Social Forces
著者名:Ryohei Mogi, Ryota Mugiyama, Alyce Raybould