「わが子の学力も、進路も、もっと伸ばせる」—そんな保護者の思いに応える改革が、明徳学園 相洋高等学校(神奈川県小田原市・以下、相洋高校)で進んでいる。
文武両道の校風で知られる相洋高校は、放課後の自習室を大幅にリニューアル。国公立・難関私立大学を目指す特進コースを中心に、学習意欲を高める仕組みとして導入されたのが、個別学習支援サービス「まなびコーチング」だ。
学校と民間企業が手を取りあい、生徒ひとりひとりの可能性をどのように引き出しているのか。小林悟校長、特進コース主事 大学受験講座運用室長 小髙二郎先生、まなびコーチングの教室長でもある安藤健治氏、工藤康平氏に、自習室運営の新たな形について話を聞いた。

「Let's begin!」夢をもち、行動する力を育む相洋高校の教育理念
--相洋高校の歴史・教育理念についてお聞かせください。
小林先生:相洋高校は昭和13年、1938年に創立され今年で87年目を迎えます。当初は旧制小田原中学校(現在の県立小田原高校)の校舎を間借りしてのスタートでしたが、後に小田原市の援助を受けて本校舎を設立。教職員と生徒が一丸となって梅林を開墾し、木を切り出し、木材を担いで運び、木造校舎を1年がかりで建設したと聞いています。物資が乏しい戦時中にも関わらず、「自分たちの学びの場は自分たちで作る」という強い気持ちと行動力によって築かれました。
こうした困難な状況の中でも道を切り拓いていこうとする「チャレンジ精神」や「フロンティア精神」は、今も相洋高校の校風として息づいています。

ですから、私も、常日頃から生徒たちに「夢と目標をしっかりもとう」と伝えています。夢がなければ、それを実現するための原動力も生まれません。そして、夢を実現するためには、逆算して“今”何をするべきかを考えることが重要になってきます。その第一歩を踏み出すための合言葉が「Let’s begin!」です。高校生活の3年間は人生の中で特に輝く時間です。その時間の中で、自ら何かを始め、夢に向かって進んでいってほしい。そんな願いを込めて相洋高校では生徒ひとりひとりの未来を切り拓く力を育んでいます。
生徒ひとりひとりの夢を叶える多彩なコースと取組み
--教育の特徴、各コースの概要についてご説明をお願いします。
小林先生:はい。中高一貫コースとは別に、高校入学からのコースには特進コース・文理コース・進学コースの3つのコースを設けています。
特進コースは、さらに選抜クラスと特進クラスに分かれています。選抜クラスは国公立大学合格を目指す生徒を対象に、少人数制での高度な学習を行っています。2025年度には目標としていた国公立大学合格者数学校全体で2桁を達成しました。一方、特進クラスは難関私立大学を目指す生徒のためのクラスで、学習に集中できる環境を整えつつ、クラブ活動や学校行事、生徒会活動との両立をしながら自分らしい高校生活を実現できるコースです。
文理コースは、入学時に理科クラスと文科クラスに分かれて募集を行いますが、1年次は共通カリキュラムで学びます。2年次より理系、文系にしっかりと分かれ、それぞれ大学受験に備えています。大きな特色は英語教育にあり、3年間で英検2級の取得を目指すとともに、ネイティブ講師による授業を通して実践的な英語力を養成しています。運動部に所属する生徒が多く、学力向上とクラブ活動との両立が高校生活の大きな軸になっています。
進学コースは、中学校時代に勉強が得意ではなかった生徒も含め、まずは基礎からの学び直しを大切にするコースです。学習を通して自己肯定感を高め、生徒ひとりひとりを励ましながら学力向上を図る点が大きな特徴です。近年は進路指導の充実により大学進学率が大きく向上し、昨年度は約8割の生徒が大学へ進学しました。特に年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)への対応を重視し、面接指導や小論文指導にも力を入れています。

--相洋高校では、生徒ひとりひとりが大学進学に向けて、自分の将来像をより具体的に思い描けるよう、多彩な進路イベントを展開していると伺っています。
小林先生:代表的な取組みが「相洋ナビ」です。これは大学の先生を招き、実際に大学の授業を体験できるプログラムで、慶應義塾大学「映画・映像で見る中国現代史」、国際医療福祉大学「作業療法士の視点から」など25講座の中から興味のある講座を選択し受講します。対象は高校1年生で、早い段階からさまざまな学問分野に触れることで、自分の興味や関心を発見する機会となっています。さらに、年間を通して「キャンパスツアー」を実施し、相洋生全体では40大学以上を訪問しています。1学期のうちに5校訪問する生徒もいます。体験を通じて「大学って面白い。高校での勉強を頑張ろう」と、生徒たちが学習に前向きに取り組むきっかけを生み出しています。
「学校で勉強を完結」まなびコーチングとの連携で放課後指導力アップ
--今回導入された「まなびコーチング」の放課後自習室を特進コースではどのように活用されているのでしょうか。また、特進コースはどのようなコースですか。
小髙先生:特進コースは通常3クラス編成で、各学年80名程度の生徒が在籍しています。特進コースの生徒たちは、「勉強は徹底的に頑張る」という姿勢をもちながら、部活動や学校行事にも全力で取り組みます。普段は放課後講座や課題学習にしっかり励みつつ、文化祭や体育祭といった学校行事では一転、思いきり楽しんで盛り上がります。特進コースの生徒が生徒会や委員会、部活動で活躍することも多く、学校を引っ張る存在です。

学校としては学習面でのサポートを強化していこうと、放課後や土曜日には基礎から応用まで30以上の講座を開講し、塾や予備校に通わずとも大学受験に備えられる学習環境を整えてきました。その成果として、2025年度は特進コース80名でMARCH以上の大学の合格数が40に達しました。割合にして3~4人に1人が難関大に進学しており、着実に実績を伸ばしています。
こうした教職員による徹底した伴走指導に加え、この4月からは学習支援サービス「まなびコーチング」と連携した放課後自習室「相洋ラーニングセンター」を活用しています。自習室長としてまなびコーチングの方が常駐し、さらに大学生のコーチが毎日来てくれる。生徒たちは気軽に個別指導や課題のサポートを受けられるようになりました。
--すでに先生方による非常に手厚いサポート体制がある中で、なぜ「まなびコーチング」が必要だと思われたのですか。
小林先生:私は高校の勉強は「学校の中で完結させるべき」という考えをもっています。これまでも本校では朝学習や放課後講習を徹底してきました。とはいえ、家に帰ると誘惑も多く、勉強に集中できない生徒も少なくありません。であれば、学校に“自分の勉強部屋”のような環境を整え、授業の復習や課題をすべて学校で終えられるようにしたいと考えたのです。
そんな中でフィットしたのが「まなびコーチング」でした。まなびコーチングの方々は本校の理念から要望までを丁寧に聞き取り、先生方の思いや指導スタイルを尊重しながら柔軟に寄り添ってくれました。放課後の学習活動を他者に頼むという事で、先生方の中には少々反発がありました。中でも、特進コースの先生方は「自分たちが生徒を育ててきた」という強い自負心があります。何度も打ち合わせを重ねる中で「先生たちがこれまでどおり生徒を引っ張り、育てる」「できない部分や手伝ってほしい部分を学びコーチングが支える」という共通理解が生まれ、一緒に手を取りあい生徒の力を伸ばす体制を構築することができたのです。
先生と教室長・コーチが一体で支える“伸びる環境”
--「まなびコーチング」は放課後自習室「相洋ラーニングセンター」を、どのように運営しているのでしょうか。サービス内容や生徒との実際の関わり方など具体的に教えてください。
安藤氏:月~金曜の放課後16時から19時半まで、私たち専属の教室長が大学生コーチとともに生徒を迎え入れ、勉強に集中できる環境を整えているのが相洋ラーニングセンターです。私と大学生コーチ3名が、相洋高校2号館の講義室フロアである3階と4階に常駐し、最大9教室と質問用のラウンジを自習スペースとして開放しています。ただし、相洋ラーニングセンターは単なる自習室ではありません。私と大学生コーチがここで生徒ひとりひとりと面談を行い、テスト前の学習スケジュール作成、教科ごとの優先順位づけ、苦手分野の克服方法など、戦略的な学習支援を行っているのが特徴です。コーチに関してはMARCH以上の難関大学に所属している学生であり、生徒のロールモデル的な存在でもあるため自身の経験も含めた説得力のある支援を行うことができます。

相洋高校には進学に専念する生徒もいれば、部活も勉強も全力で取り組む生徒、全国レベルのクラブ活動と両立している生徒もいて、その学習スタイルもひとりひとり異なります。限られた時間をどう使えば成果につながるかを一緒に考え、個々の特性や生活スタイルに寄り添ったコーチングを大切にしています。たとえば部活動で忙しい生徒には「毎日30分でも良いから自習室に来よう」と目標を設定し、短時間でも集中して取り組める仕組みづくりをサポートしています。その結果、生徒からは「勉強の仕方がわかってきた」「成績が伸びた」といった声が寄せられており、学習面での確かな成長を後押しできていると実感しています。「また、こうした取組みの中で、自習室の利用数も大幅に増加しています。

--生徒たちが学習を進める際には、どんな教材やテキストを使っているのですか。
安藤氏:教材はすべて学校の先生方が提供し、普段の学習で用いているものです。プラスして私はほぼ毎日、特進コースの職員室に伺って、その日に取り組んでほしい教材や対象生徒のリストを受け取り、それをラーニングセンターに来た生徒に渡して学習してもらっています。外部の塾だと、学校と別に塾用の教材があって“二本立て”になってしまうことがあるのですが、それだと生徒にとっては混乱の原因になりかねません。相洋ラーニングセンターでは学校の先生としっかり連携して、授業と放課後学習を一本化しているので、生徒にとっては無駄のない効率的な学習が実現できていると思います。

小髙先生:実際、生徒からすると「授業があって、その予習や復習、課題に取り組むために、そしてそのサポートを受けるために、放課後に相洋ラーニングセンターで学ぶ」という感覚になっていて、学校の学習と完全に一体化している。この学びやすさは他にはない大きな強みだと思いますね。
--つまずいたところの質問対応や学習相談などはどうしているのでしょうか。
工藤氏:生徒をサポートする大学生コーチは、MARCH以上の難関大学に通う現役大学生や大学院生です。まなびコーチングの社内研修や検定に合格したコーチのみが現場に立ち、「生徒に伴走しながら寄り添えるか」を重視して採用しています。相洋高校の卒業生もコーチとして在籍しており、生徒の忙しさや学習状況をよく理解したうえで親身に寄り添ってくれる存在です。

生徒にとっては「身近な先輩」でありながら、学習面では高い専門性をもつ相談相手でもあり、「先輩のように自分も頑張りたい」とモチベーションを高めるきっかけにもなっていて、将来への意識にも良い刺激になっているようです。

--相洋ラーニングセンターを運営するうえで、どんなことを心がけていますか。
安藤氏:運営の中で大切にしているのは、勉強のサポートだけでなく「ここに来た生徒を笑顔にして帰すこと」です。学校や家庭でさまざまな思いを抱えて来る子たちに対して、ちょっとした変化を見逃さず「今日どうした?」と声をかける。そうした小さな気付きを大切にしながら、安心してまた「明日も頑張ろう」と思える場所にしたいと思っています。
また、相洋高校の先生方と一緒に働かせていただく中で、先生方の多くが、日々の授業に加え部活動の指導や行事の準備など本当に多忙な日々を送られていることを強く実感しています。そうしたご負担を少しでも軽減し、生徒の学習環境を支えることも私たちの役割だと考えています。

--クラブ・部活動との両立にあたって、サポート面で工夫していることはありますか。
工藤氏:相洋高校には全国レベルで活躍している強化指定クラブもたくさんあり、所属する生徒たちは、月曜から金曜まで練習、土日は試合と非常に多忙です。そのため、勉強したくてもなかなか時間が取れないという声も少なくありませんでした。そこで私たちは、そのような強豪クラブだけではなく、文化部も含めた多くのクラブ顧問の先生方とも連携し、特に定期試験前には「この日は必ずラーニングセンターに行くように」と声をかけてもらいながら、クラブ別の学習会を行う仕組みを整えました。

生徒や保護者の方々からは「試験前に集中して勉強できる機会ができた」「学習の習慣が身に付いた」など喜びの声をいただいており、クラブで全力を尽くす生徒たちに、学習面でも頑張れる環境を整えることが、私たちの大きな使命だと感じています。
主体的に学習する意識の高まり、広がる「まなびコーチング」の可能性
--まなびコーチングとの連携による効果を、どのように感じていらっしゃいますか。
小林先生:校長として、学校全体の「勉強する雰囲気」が確実に高まったと実感しています。昨年と比べても明らかに空気感が変わりましたね。「学校で勉強するのが当たり前」という雰囲気が少しずつ芽生えてきているのは、大きなプラスだと感じています。
勉強というものは、ただ先生や親から「やりなさい」と言われてやってもなかなか身に付かない。自分の目で勉強する仲間の姿を見て、自分もやらなきゃと思える環境があり、意志や意欲をもって取り組むことが大切です。ラーニングセンターには誘惑のない学習空間があって、教室長やコーチが伴走してくれる。「やってみてよかった」「結果が出た」という実感を積み重ねることで、自ら学ぶ意欲につながっていきます。最終的には生徒が自分で学び、自走できる力を伸ばしていってほしいですね。

--「まなびコーチング」とコースとの連携は、どのように広げていく予定ですか。
小林先生:今後は文理コース、進学コースにも強固な連携を広げていく予定です。特に文理、進学の両コースには、年内入試を目指す生徒が多くいますので、その対策にもしっかりと携わっていただこうと考えています。3つのコースそれぞれの特色や雰囲気に合わせてコーチがより一層柔軟に関わってくれること、「まなびコーチング」が学校全体の学習意欲をよりいっそう押し上げてくれることを期待しています。
--最後に高校選びに悩む中学生・保護者にメッセージをお願いします。
小林先生:私たち相洋高校は、「まなびコーチング」を導入したことによって、登校から下校までの間に一日の学習を、学校の中で完結できる体制を整備し、塾に通わなくても安心して学習でき、学校生活に全力で挑戦できる環境を提供しています。保護者の方からも「ここなら塾は必要ない」という声をいただいており、実際に相洋ラーニングセンターを活用して着実に学力を伸ばしている生徒も増えています。ぜひ説明会や入試説明会に足を運んでいただき、実際の雰囲気を感じ、生徒の声を聞いていただければ幸いです。
--ありがとうございました。
「仲間が勉強している姿を見て、“やばい、自分もやらなきゃ”と刺激を受ける。そんな“やばい”という気持ちがいちばんの原動力になったりするんです」と生徒目線で語ってくれた小林校長。まなびコーチングと共に作る放課後の学び場「相洋ラーニングセンター」は、単なる学習スペースにとどまらず、生徒ひとりひとりに伴走する拠点として機能しているようすが伺えた。学校の情熱と民間のノウハウが交差する放課後の学習環境づくりの取組みは、今後ますます注目を集めそうだ。
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