リュウグウに45億年前の塩水痕跡、生命材料を生む環境か

 京都大学などの研究グループは、リュウグウの砂から、塩結晶の周辺にアンモニアなどの窒素化合物が集まっていることを発見した。約45億年前の母天体内部に濃厚な塩水が生じ、生命の材料となる有機物の合成を促した可能性を示す成果。

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リュウグウの砂の塩鉱物(青色)と粘土鉱物(茶色)の電子顕微鏡擬似カラー画像とアンモニウム分子(NH 4+のイラスト)。(c)京都大学
リュウグウの砂の塩鉱物(青色)と粘土鉱物(茶色)の電子顕微鏡擬似カラー画像とアンモニウム分子(NH 4+のイラスト)。(c)京都大学 全 3 枚 拡大写真

 京都大学などの研究グループは2026年9月3日、小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰ったリュウグウの砂から、塩結晶の周辺にアンモニアなどの窒素化合物が集まっていることを発見したと発表した。約45億年前の母天体内部に濃厚な塩水が存在し、生命の材料となる有機物の合成を促した可能性を示した。

 リュウグウは、約45億年前に生まれた大きな天体の破片から形成されたと考えられている。母天体の内部では、氷が融けてできた水が岩石と反応し、粘土鉱物などが形成された。その後、天体内部が冷えるにつれて水が凍結や蒸発によって減少し、残った水にさまざまな成分が濃縮されたと考えられている。

 同研究では、こうした過程で生じたとみられる塩結晶に着目。リュウグウの砂をX線や赤外線などで分析したところ、炭酸ナトリウムや岩塩などの塩結晶の周辺に、窒素化合物が集まっていることがわかった。さらに、塩結晶の一種である炭酸ナトリウムの内部からは、窒素を含む塩である硝酸ナトリウムの結晶も見つかった。
 
 まず、塩結晶を含む粒子を赤外線で分析したところ、アンモニアの吸収を確認した。さらに、X線吸収分光を用いて調べた結果、塩結晶の一種である炭酸ナトリウムの近くの粘土から、アンモニウム(NH4+)を示す特徴が確認された。一方、塩を含まない別の試料では、窒素の明瞭な特徴は確認されなかった。このことから、アンモニアなどの窒素化合物が塩結晶の周辺に集中していたと考えられる。

 さらに、塩結晶の周囲には、炭素と窒素が強く結びついたニトリルやシアン(C≡N)の化合物も多く確認された。

 研究グループによると、リュウグウの母天体は、太陽から遠く、氷が豊富に存在する場所で形成されたと考えられる。その後、内部が温められて氷が融けると水が生じ、岩石との反応が進んだ。やがて内部が冷えると水が凍結・蒸発して減少し、残った水に塩などの成分が濃縮された。

 これは海水を蒸発させると塩が残るのと同じような仕組みで、水が減少するにつれてアンモニアなどの窒素化合物や有機物も濃縮されたと考えられる。研究グループは、こうした「濃厚な塩水」の中では水中の成分が出会いやすくなり、化学反応が進みやすくなった可能性を指摘する。

 リュウグウの砂からは、これまでにアミノ酸や核酸塩基など、生命を構成する物質も発見されている。アンモニアなどの窒素化合物は、こうした生命の材料となる有機物を合成する際の原料となる。

 今回の研究は、リュウグウの母天体に単に「水」が存在していたことだけでなく、水が減少することで成分が濃縮される環境が生じ、生命の材料につながる化学反応を促進した可能性を示したものとなる。

 研究グループは、こうした濃厚な塩水環境はリュウグウだけでなく、地下に塩水が存在すると予想される準惑星セレスなど、太陽系のほかの天体にも存在する可能性があるとしている。今後は、NASAの探査機が持ち帰った小惑星ベヌーの試料との比較などを通じ、生命の材料となる物質が宇宙でどのように、どこまで作られたのかについて研究が進められる。

 同研究成果は、国際科学誌「Nature Astronomy」に8月27日付で掲載された。

◆論文の概要
タイトル: リュウグウ母天体の末期塩水に関連するアンモニウム含有粘土と多様な窒素化学種(Ammonium-bearing clays and multiple nitrogen species linked to late-stage brines of Ryugu's parent body)
研究グループ:京都大学、分子科学研究所、広島大学、東京科学大学、宇宙航空研究開発機構、高輝度光科学研究センター、物質・材料研究機構、愛媛大学、日本分光株式会社
掲載誌:Nature Astronomy

《川端珠紀》

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