仕事と子育てのバランス、女性は5カ国とも「家庭優先」がトップ回答

 内閣府は5月19日、少子化社会に関する国際意識調査報告書を公表した。ここでは「ワーク・ライフ・バランス」についてみることにする。

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仕事と育児を両立しやすい職場かどうか
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 内閣府は5月19日、少子化社会に関する国際意識調査報告書を公表した。

 本調査は平成17年度(2005年)にも実施しているが、5年経過後に改めて国民意識を調査し、各国・経年比較を行い、今後の子ども・子育て施策に役立てることを目的としている。

 調査事項は「結婚」「出産」「育児」「社会的支援」「生活」にかかる意識・実態に関する全46項目(調査項目は適宜見直し、修正を行っているものがある)。調査対象国は、日本・韓国・アメリカ・フランス・スウェーデンの5か国、調査対象は20歳〜49歳までの男女。調査時期は2010年10月〜12月で、各国とも1,000サンプル回収を原則とし、調査員による個別面接調査を実施。

 ここでは「ワーク・ライフ・バランス」についてみることにする。

 仕事をしている人に、仕事と育児を両立しやすい職場かどうか聞いたところ、日本では「とてもそう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計は男女それぞれ49.6%、68.6%となった。各国比較では「とてもそう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計による「仕事と育児を両立しやすい職場」と肯定的に捉えている人の割合は、男性ではスウェーデン(83.7%)、アメリカ(56.3%)、フランス(55.9%)、日本(49.6%)、韓国(36.3%)の順になっている。また女性ではスウェーデン(82.1%)、日本(68.6%)、アメリカ(68.0%)、フランス(60.9%)、韓国(44.9%)の順になっている。

 家庭における父親の役割として重要なことは何だと思うかを聞いたところ、日本では、男女ともに「働いて生活費を得ること」がもっとも高い(男性:93.5%、女性:93.8%)。男性の回答では「母親の話や悩みを聞くこと」が45.5%と2番目に高いが、女性は、家庭内での重要事項を決定すること」が46.7%と2番目に高い。また各国の結果では、日本で男女ともにもっとも高かった「働いて生活費を得ること」は、韓国の男女、アメリカの男女、フランスの男性においてももっとも多い回答だった。また、フランスの女性およびスウェーデンの男女では「子どもの世話をすること」がもっとも高かった。

 子どもが3歳くらいまでの間は、保育所等を利用せずに母親が家庭で子どもの世話をするべきだという、いわゆる「三歳児神話」に対してどう思うかを聞いたところ、日本では「賛成」「どちらかといえば賛成」の合計は、男性では68.8%、女性では62.2%となっている。各国比較をみると、アメリカ・フランス・スウェーデンの3ヶ国は男女ともに前回より「賛成」が上昇している。韓国は、男女ともに減少傾向にはあるものの「賛成」と回答する割合が他国に比べてもっとも多く、男性で49.6%、女性で50.7%となっている。逆に、スウェーデンでは「反対」が各国中もっとも高い(男性:39.8%、女性:32.0%)。しかし、男女とも前回よりそれぞれ4.0ポイント、10.9ポイント減少している。

 育児と仕事との関係で、自分自身または配偶者・パートナーの理想の生き方について聞いたところ、日本では、男女ともに前回調査と同じく「出産するが、子どもの成長に応じて働き方を変えていく」がもっとも高い(男性:50.6%、女性:60.1%)結果となった。また、「出産するが、子どもの成長に関係なく働き続ける」は男女ともに前回調査から上昇しており、出産後も何らかの形で仕事を継続することを選択する割合は男女ともに6割を超える。一方で「出産を機に一度退職し、子どもの手が離れたら働く」は男女ともに減少している。各国比較でみると、日本、韓国、アメリカ、フランスでは「出産するが、子どもの成長に応じて働き方を変えていく」が男女ともにもっとも高いが、スウェーデンでは、「出産するが、子どもの成長に関係なく働き続ける」が男女ともにもっとも高い。

 子育て経験のある人に、子育てにあたって利用した制度は何か聞いたところ、日本の男性では「幼稚園」が36.7%、女性では「保育所」が43.4%でもっとも多かった。各国の結果をみると、男性では韓国で「幼稚園」が43.1%、アメリカでは「保育ママ・ベビーシッター」が46.5%、フランス・スウェーデンでは「父親休暇制度」がそれぞれ、44.2%、77.1%でもっとも多かった。女性では、韓国で「幼稚園」が44.9%、アメリカ・フランス・スウェーデンでは「産前・産後休暇制度」がそれぞれ、51.2%、50.6%、85.1%でもっとも高かった。

 また、日本と韓国では「保育所」「幼稚園」「放課後児童クラブ」等の保育施設の利用が目立つが、「短時間勤務制度」や「育児休業制度」などの就労に関する制度の利用は少ないことが伺える。一方で、アメリカ・フランス・スウェーデンでは、保育施設の利用も高いが、それに加えて就労に関する制度の利用割合が高いことがわかる。

 「育児休業制度」の利用率については、男性ではスウェーデンが74.0%でもっとも高く、フランス(23.5%)、アメリカ(20.2%)、韓国(5.8%)、日本(4.8%)の順になっており、女性はスウェーデン(75.2%)、フランス(45.2%)、アメリカ(23.0%)、日本(17.0%)、韓国(6.3%)の順になっている。

 現在の日常における「仕事」「家庭生活」「個人の生活等」の優先度について聞いたところ、日本では、男性は「仕事と家庭生活をともに優先」が35.4%でもっとも高く、次いで「仕事と家庭生活と個人の生活等を共に優先」が13.4%となっているが、女性では、「家庭生活を優先」が31.3%、「仕事と家庭生活をともに優先」が21.9%と続いている。

 一方、各国との比較では、フランスとスウェーデンでは男女とも「家庭生活を優先」がもっとも高かった。他の国では、1位項目が男女で異なった。男性は、韓国とアメリカでは日本と同じく「仕事と家庭生活をともに優先」がもっとも高く(それぞれ29.4%、31.2%)、女性ではすべての国で「家庭生活を優先」がもっとも多い回答であった(韓国:47.7%、アメリカ:37.9%、フランス:41.3%、スウェーデン:43.2%)。

《前田 有香》

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