【高校受験】「数学が難しすぎる」H24長野高校入試…難易度や傾向を分析

 2012年の長野県公立高校入試の数学の問題が難しすぎると、長野県教職員組合が県教育委員会に抗議声明を発表した問題で、「廊下で泣き出す子がいた」「他の教科にも影響した」などの報告もあり、インターネットでも大きな話題となっている。

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 2012年の長野県公立高校入試の数学の問題が難しすぎると、長野県教職員組合が県教育委員会に抗議声明を発表した問題で、「廊下で泣き出す子がいた」「他の教科にも影響した」などの報告もあり、インターネットでも大きな話題となっている。

 学習指導要領を逸脱した設問であったなどとされているが、実際はどうだったのか。公立高校入試に詳しい、俊英館に、難易度、分量、傾向などを聞いた(「平成24年度 長野県公立高校入学者選抜 後期選抜」問題と正答・正答例)。

--まず、問題となっている難易度について分析をお願いします。

俊英館:数年分の過去問を解いてレベルを確認した生徒であれば、急に難しくなったと感じたはずです。数学を得意にしている生徒に限らず、解き進むことができずに時間が過ぎていき、焦る気持ちがケアレスミスなどを誘発したものと想像されます。

 計算など基本問題からなる大問1は、基礎学力の生徒にとっての得点源ですが、解の公式で解く2次方程式と作図問題を除けば、例年並みのレベル設定といえるでしょう。

 過去問から急に難易度の上がったのが大問2で、特に(1)の2桁の自然数の積を扱った問題は、凝った作りになっており、この問題で時間を費やしてしまった生徒が多かったはずです。

 また、大問3も大問4も設問形式は過去問を踏襲していますが、条件や題意を理解するのに手間取ってしまうような設問が含まれているため、難易度が高まった感があります。

--問題の分量はいかがでしたか。

俊英館:公立入試では、試験時間が50分なら20問程度が標準的な設問数です。今年度の設問数は28問。これについては、長野県は従来から設問数が多い県で、今年度だけが突出しているわけではありません。

 しかし、難易度が上がったため、学力上位で計算が速い生徒でも、50分ですべての問題を解くのは難しかったはずです。ほとんどの生徒が、「もっと時間があったら…」と悔しい思いをしたものと思われます。

--全体の傾向はいかがでしたか。

俊英館:比較的オーソドックスな出題内容であった過去問と比較して、大問2(1)や大問4(2)の1など新指導要領が目指す柔軟な思考力を意識した問題を出題するなど、明らかに傾向が変わったと分析できます。この傾向の「変化」が受験生にとっては、「難化」となったわけです。

--ほかの地域にも同様の傾向は見られますか。

 埼玉県入試でも平均点が大幅に下がると話題になっており、数学の難化は、全国的な傾向になりつつあるのかも知れません。

 各県教委が、今年度から全面実施される新指導要領のテーマである思考力や判断力、表現力を先取りして入試問題に反映し過ぎたものと思われます。しかし、移行措置があったとはいえ、小学校からの指導の中で「思考力」系の学習に取り組む機会の少なかった今年の受験生にとっては、「練習」なしで「本番」を戦ったようなものと言えます。

 また、学力の分布に対応した得点の分布が理想とすれば、偏差値45の生徒と55の生徒の間に得点差が生じなかったり、他の教科と平均点がかなり開いてしまうような教科があるのは、合否を決める入試問題としては不適切だと言わざるを得ないでしょう。

--ありがとうございました。

 問題となっている「平成24年度 長野県公立高校入学者選抜 後期選抜」の問題と正答・正答例は、長野県公式ホームページで公開されている。

 俊英館は、埼玉県・東京都・群馬県・千葉県で中学受験、高校受験、大学受験向けの進学塾「俊英館Flex」を展開している。

《田村麻里子》

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