【大学受験の落とし穴 2/5】進学実績のある中高一貫校に入学=“大学受験は勝ち組”ではない

我が子の大学受験を失敗させないために、親はどのようなことに気をつければいいのか。家庭教師メガスタディの田中義貴講師に聞く連載第2回では、「進学実績のある中高一貫校に入学=“大学受験は勝ち組”ではない」を紹介する。

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田中義貴講師
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 我が子の大学受験を失敗させないために、親はどのようなことに気をつければいいのか。家庭教師メガスタディの田中義貴講師に聞く連載第2回では、「進学実績のある中高一貫校に入学=“大学受験は勝ち組”ではない」を紹介する。

(1)親の成功体験が子どもの足かせに
(2)進学実績のある中高一貫校に入学=“大学受験は勝ち組”ではない
(3)予備校選び~有名校の受験生が陥る「泥沼状態」とは
(4)安易に「センター利用入試」に走るのは危険
(5)過去問との相性を考えずに、志望校や併願校を決めるのは危険

◆学校任せで大学受験がうまくいくケースは希

--私立の中高一貫校に通っている受験生が陥りがちな失敗についてお聞かせください。

 まず、保護者の認識を改めていただくことが必要です。「進学実績のある一貫校に入学した時点で、うちの子は“大学受験の勝ち組”になった」という誤解です。

 保護者の方全員がそういう認識だということではないのですが、家庭教師をしていると結構こういう認識の方が多い、というのが肌感覚ですね。

 もちろん、大学受験で進学実績を出している一貫校は、カリキュラムや教材、授業内容など、どこも独自色があり、素晴らしい先生方がいらっしゃるのは事実です。進路指導や補習が手厚い学校も多いですよね。実際、親御さんもその部分を期待して私立を選択する方も多いわけです。ですから、入学した時点である程度安心されてしまうのは、わからなくはありません。

 ですが、気をつけていただきたいのは、学校はあくまで集団クラス、一斉授業が基本ということです。そして、先生方もすべての生徒にきめ細かく目を行き届かせるのは難しい、ということです。これは、私自身が予備校で集団指導をしていたので、その難しさが身に染みています。

 ですから、すべて学校任せにしてしまうと、大学受験がうまくいくケースはむしろ少ない気がします。これは、トップクラスの進学実績を出している進学校であっても言えることです。

--学校任せで大学受験がうまくいかないケースとは、具体的にどんな状況がありますか?

 私立の一貫校の生徒で、まず、学校の定期テストはソコソコの点数が取れるが、総合テスト(実力テスト)になると急に点数が取れなくなってしまうようなお子さんは、かなり危険信号ですね。この場合、数か月前にやった内容はきれいに忘れている可能性が高いからです。

 中学受験のときは、定期的に模試や実力テストがあったので、定着度や学力が客観視できました。ですが、一貫校に進学すると総合的なテストを受験する機会はあまりなくなります。

 中高一貫に入学後、4~5年近く「定期テスト前に勉強→やったことを忘れる」のサイクルを繰り返していると、かなり厳しい学力状況になっていることがほとんどです。高校の内容が、基礎的なことからほとんど身についていないような一貫校の生徒は珍しくありません。

 問題なのは、本人も保護者の方も、高3になってからその状況に気づくことが多いということです。その状態で予備校に通っても、残念ですが成果は期待できません。予備校に通うレベル以前の学習状況だからです。

 そうした状況に陥ってしまった一貫校の生徒が大学受験で成果を出すには、学校の進度やカリキュラムの流れとは別に、自分の学力に合わせた勉強スケジュールが必要な場合もあります。

--高3になった生徒では、どんな状況や対策が考えられるでしょうか。

 新高3生の場合だと、たとえば、4月のはじめに実力テストがある学校は多いですよね。
これが、すでに落とし穴だったりします。

--実力が診断できるよい機会ではないのですか。

 率直に言うと、こうした実力テストの対策に時間を割くこと自体が、すでに大学受験成功へ遠回りになってしまいます。

 学校で下位に低迷している成績状況の生徒だと、実力を診断するまでもなく、以前やったことを基礎レベルからすっかり忘れていることが多いのは明らかです。これは、通っている高校のレベルに関係なく、です。

 学校にもよりますが、4月に実施される学校の実力テストは、高3で受験学年ということもあり、試験内容がかなり難しいこともあります。ですから、「あきらかに基礎をやるべき」という生徒であっても、学校のカリキュラムやペースに合わせようとすると、現時点で最優先の勉強ができなくなってしまいます。

 つけ焼き刃で難易度の高いテストの対策をしても、期待するような成果は出ませんし、時間がもったいないです。大学受験の成功が遠のいてしまう、というのはこういうことです。

 春休みから4月にかけての数週間、集中的にやれば、数学であればIA・IIBの基礎の重要エッセンスは、一通り復習させることが可能です(この効率的な対策方法については次回以降に解説します)。

 学校で下位に低迷している、という生徒の場合は、学校の内容やペースを優先するよりも、本人にとっての優先事項を先に対策することが、大学受験成功には不可欠です。

【家庭教師メガスタディ】
 早慶上智、理科大、GMARCHなど、難関上位の私立大受験に特化し、合格者を毎年多数送り出す。

【田中義貴講師】
 元代ゼミ講師で、指導歴18年の家庭教師メガスタディ・トッププロ講師。東大理I、早稲田大学、慶應義塾大学、医学部など多数の合格実績をもつ。代ゼミ講師時代には東大理系・東大文系・医系クラス等を担当。

《編集部》

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