【EDIX2013】タブレットは学びの武器、授業スタイルを変える…広尾学園 金子氏
EDIXで5月15日、広尾学園中学校・高等学校の金子暁氏が、同校でのPCやタブレットを活用した授業の内容やその成果、そしてICT教育の取組みのポイントなどを語るセミナーが開催された。
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◆「どん底」から変革を遂げた広尾学園
広尾学園は、PCやiPadを授業に積極的に取り入れているという特徴がある。特に、医学部進学やグローバルで通用する科学者・研究者を育てることを目的とした医進・サイエンスクラス、国際的な場で活躍する人材とキャリアを育成するインターナショナルクラスなど、受験や大学合格だけをゴールとした進学校とは違うポリシーを持ち、独自のICT・キャリア教育を実践している。
このような特徴を持つ同校だが、新設校というわけではない。その前身は、創立大正7年まで遡ることができる歴史ある高校だ。創立以来女学校、女子高校として運営されてきたが、2007年に特進コースを共学化し、名称を広尾学園に改称した。金子氏によれば、同校の規模では生徒数1,500人が適正範囲であり、私学としての経営および教育の質が保てるのだが、2005年の在校生数は513名で、氏の言葉を借りれば「どん底」の状態だったという。
学校を変えるため、男女共学制にし、進学校化のテコ入れを行ったわけだが、このとき、単に経営が厳しいから共学にする、進学校としただけでは失敗していたかもしれない。冒頭で述べたような生徒たちの将来を見据えたコース戦略やカリキュラムを導入したため、現在では、都内でも受験者数で上位に入る人気校となり、生徒数も2010年からは1,500人規模をキープしている。学校改革は成功したわけだが、それでも当時は、学校内に「共学化は時期尚早ではないか」という意見もあったそうだ。
◆タブレットは「学びの武器」、授業スタイルを変える
そして生徒数が1,500名を超えた2010年に、授業に数台のiPadを試験的に導入した。このときも「ICTはまだ早い」と懐疑的な意見があったそうだ。しかし金子氏は、その疑問にはおそらく根拠はなく、単に変化を拒む心理がそうさせていたのではなかったか、と述べる。試験導入のとき、金子氏も実際にタブレット端末を使ってみて「これは学校で使うために作られたのではないか」と思ったという。さらに、「タブレットはいわば『学びの武器』です。そして、これは140年間続く教師と生徒という関係の中で、始めて生徒側が手にする武器でもあります。教師が豊富な知識を生徒に教えるという関係を変化させ、学校や教育のスタイルに変化をもたらす可能性があると思っています。」と語る。
試験導入の結果から手ごたえをつかんだ同校は、2011年度に150台のiPadの導入、医進・サイエンスクラスの38名へのiPad貸与を決める。2012年には本科の中学新入生全員(204名)がiPadを購入。2013年度にはiPad520名、MacBook160名という導入状況になっている。
広尾学園では、保護者に説明し、入学時にiPadを購入してもらい授業や学校での活動に利用している。利用方法はさまざまで、指定のデジタル教科書や教材で授業を進めるといった使い方よりも、生徒の自由な発想で使いこなしているという。たとえば、キャリア教育の一環としてロボット講座を授業とは別に実施しているが、特に指導などしていなくても生徒たちはロボットのプレゼン資料作成にタブレットを使っているそうだ。
「けやき祭」という文化祭では、中学生も全員が研究発表を行う。ここでも、iPadを使う生徒が多いという。大学の研究者を招いて行う特別授業のレポート作成では、英文の論文を調べるために活用している。
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