科学者の芽育成プログラムで快挙、中学生が新発見で米科学誌に掲載
埼玉大学大学院理工学研究科が実施する「科学者の芽育成プログラム」において、越谷市立栄進中学校2年の新谷俊貴くんが同大学工学部応用化学科・廣瀬卓司教授らと研究の結果、米国化学会の有機化学誌(JOC)のオンライン速報版で公開された。
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米化学誌に掲載された新発見は、光学分割における溶媒による新しいキラリティスイッチング現象を見出し、1つの光学分割剤のみを用いてマンデル酸の1組の光学異性体の両方を得る方法を見つけたことだ。この技術の応用により効率的な医薬品中間体などの供給につながるものと期待される。
光学異性体とは互いに鏡映しの形をしており「左手」と「右手」の関係にある1組の分子対のことだ。しかし限りなく似ていても同じではないものなので、生体に及ぼす作用は大きく異なることが多く、一方の光学異性体のみが効果を示す医薬品も多数あるほどだ。そのため、安全な医薬品や食品の開発には、それぞれの光学異性体を効率的に得る技術が必要とされているが、現在の方法で得られるのは通常、目的の化合物の光学異性体のうちのどちらか一方だけであり、必ずしもそれが有用な光学異性体であるとは限らないのが問題点であった。
栄進中学校の新谷くんは、「埼玉大学 科学者の芽育成プログラム ステップ3 テーマ研究」で廣瀬研究室に所属し、この課題に取り組んだ。その結果、一般的な光学分割ではあまり用いられない溶媒である、「1-プロパノール」や「1-ブタノール」を用いると、効率よく光学分割が達成されることを見出したという。その後、設楽技術職員らの研究によって溶媒の果たす役割を明らかにされ、本研究の成果はアメリカ化学会の論文誌に投稿されることとなり、その発見の内容の高さが示された。
これまではあまり注目されてこなかった溶媒の効果をさらに研究することによって、今まで難しいとされてきた光学活性体の入手が容易になり、さらなる医療技術への応用が期待できるだろう。
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