東京と東北南部方言話者の言語処理の違いを発見
理化学研究所、徳島大学、名古屋大学、東北大学の共同研究グループが、東京方言話者と東北地方南部方言話者の言語処理の違いを発見したことを10月17日、発表した。研究では、脳は育った地域方言によって音声を処理することがわかった。
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
共同研究グループは、標準語圏の東京近辺で育った14人(19~24歳)と東北地方南部方言(山形南部、宮城南部、福島県)が話されている環境で育った13人(20~27歳)を対象に調査を実施した。
人間の大脳は左右半球に分かれていて、単語や文などの言語処理をする際には左半球優位の反応が現れる。言語の処理では「a」と「i」のような個別の音の違いやその音によって区別される単語などは左半球の反応があるのに対し、抑揚やリズムなどの韻律情報の処理はその優位性が現れないことがわかっている。
実験では、脳血管の増減によって脳反応が把握できる近赤外分光法を用いて、言語音声を聞いたときの聴覚野付近の左右差を調べた。主要な条件は3つ。異なる音による意味の違い「飴(あめ)」対「甕(かめ)」、音の高さによる意味の違い(ピッチアクセント)「飴(あめ)」対「雨(あめ)」、音の高さによる肯定・疑問の違い「飴(あめ)」対「あめ?(飴?)」。
結果、「雨」と「飴」のようにピッチアクセントで区別される言語を聞き分けるときに、東京方言話者は、左半球優位の反応を示したのに対し、東北地方南部方言話者は左右同程度の反応を示した。このことから、同じ日本語でも東京方言話者は、ピッチアクセントの違いを単語の違いと処理しているのに対し、東北地方南部方言話者は抑揚の違いとして処理していると考えられる。
異なる方言環境で育っても、とくに若い世代ではテレビやラジオ放送などで標準語に接する機会も多く、研究に参加した東北地方南部方言話者は標準語とのバイリンガルともいえる。しかし、ピッチアクセント処理においては、東京方言話者とは異なった脳反応を示したことは、言語処理における左半球優位性には自分が育った方言環境が影響している可能性がある。
今回、持っている知識や話したことがある言語でも、幼少期から学んできた言語の一部ではない特性は、脳内で母語の特性とは異なる処理をしていることを示した。研究グループは「バイリンガル教育と脳発達、言語獲得における脳の可塑性など、教育分野や医療発達分野に貢献できる」と期待している。
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