【NEE2014】海外のタブレット導入事例…1人1台がすべてではないとMS担当者
教育関係者向けセミナー・展示会「New Education EXPO 2014」では、さまざまだ講演が実施された。日本マイクロソフトの担当者のセミナーでは、国内外の端末導入事例を紹介し、複数人に1台という環境が協働的学びを実現していると解説。
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登壇した日本マイクロソフトのWindows Tablet文教市場担当である今野拓哉氏は、1人1台タブレット配布について各地域で検討が進んでいるとしたうえで、導入に関する検討の進め方や方法はさまざまだと話す。1人1台のタブレットを全普通教室に導入する学校や、実勢実験を行う学校、PC教室の端末をタブレットに代える学校など、予算や導入メリットの捉え方によって方法や規模が異なるという。
そのような状況の中で、マイクロソフトが考えるの日本の課題は、タブレットの台数ではなく、無線LANに関するインフラだという。特にデジタル教材の配布などは、無線LANでは負荷が大きすぎるため、USBなどで物理的にインストールする必要があるようだ。そのほか、設定環境のバックアップ体制、デバイスドライバの最適化など、無線LAN環境に関連した問題が現状の課題という。
国内外のタブレット活用事例については、日本マイクロソフト パブリックセクター 文教本部産官学連携部の植村理氏が紹介。国内の例として、荒川区諏訪台中学校の篠宮健教諭の授業をピックアップし、理科の実験においてグループが1台のノートパソコンを活用した事例を紹介した。授業は、中学校2年生の理科の実験「電流の性質」で、電熱線、豆電球、発光ダイオードを使い、オームの法則が成り立っているかを調べるというもの。
各実験グループには生徒一人ひとりの役割があり、お互いに協力して実験を行う。電圧データを測る担当、エクセルにデータを記録する担当などと役割分担をすることで、グループでの協働的学びを促進することができるという。また、パソコンを活用することで、エクセルにデータを入力するだけでグラフを作成できるため、実験に必要な時間が大きく短縮できるという。
端末の台数をグループ1台などにすることで、協働的な学習を実現しているのは、シンガポールの学校も同じだと植村氏は話す。シンガポールには、国の教育ICT政策として「マスタープラン」があり、1人1台の実施校増加を図っている。その中で、植村氏が紹介したのは6.5人に1台で、電子黒板も導入していないという小学校。グループで1台の端末をグループディスカッションに活用することで、児童同士のコミュニケーションが活性化されていたという。
オーストラリアの事例として植村氏が紹介したのは、全生徒が約2,500人にのぼる中高一貫校。国からの支援に加え、保護者の負担によって1人1台のタブレット環境を実現、教室での活用だけでなく、自宅での学習にも活用されているようだ。タブレットの導入により、オーストラリアの学力テストにおいて成績が大きく伸び、特にライティングとスピーキングの成績の伸び率が高かったという。
日本では、2020年までに1人1台のタブレット環境を目指しているが、恊働的な学習を実現するうえでは必ずしも1人1台ではなくてもよいようだ。タブレットはパソコンと違い、複数人で同じ画面を見て行う作業にも適している。グループでの作業や実験、ディスカッションなどでは、各児童生徒が自分のタブレット画面に向かって学習するより、恊働的な学習環境になるのだろう。
《湯浅大資》
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